2021.01.30[Vabeneブログ] こだわりか快適快速か?
以前に弊社でフルレストアを施したコスモスポーツの作業内容を紹介した。
時間と手間さえかければ、どのような状態の旧車であっても新車のように甦らせることは可能だ。美しくなったボディと当時の性能を取り戻した旧車なら、現代のクルマにない魅力を存分に味わうことができる。それはそれで楽しいものだが、旧車の楽しみ方は人それぞれ。
当時のままを味わうだけじゃなく、もっと高性能に、そして快適に乗りたいという人だっているはずだ。

そこで今回はコスモスポーツのエンジンを載せ換える依頼が弊社にあり、オリジナルの10A型から13B型へと換装を果たしたので紹介してみたい。
なぜエンジンを載せ換えるのかには様々な理由がある。
オリジナルの10Aはすでにローターもハウジングも製造廃止になっており、元のエンジンが調子悪ければ分解して修正するしかない。当然のように大変な作業になるが、どうせ手間を加えるのであればもっと新しいロータリーエンジンにしてしまうこともオススメだ。
例えば13Bにすれば排気量が引き上げられるため低速トルクが増強され乗りやすくなる。
オリジナルの10Aは低速トルクが細く、発進時に3000rpm前後まで回転数を上げなければならない。でも13Bであればアイドリング+アルファから実用的に使えるため、シーンを問わず運転がラクになるのだ。燃料供給がキャブではなくインジェクションだから、季節や標高を問わず調子を一定に保ってくれる。さらにエアコンまで使えるようになるし、アフターパーツもまだ手に入るからチューニングだって可能になる。まさに良いこと尽くめなのだ。
とはいえカンタンに13Bへ載せ換えられるわけではない。
エンジンマウントの位置も形状も異なるから、加工して作り直さなければならない。エンジンに繋がるトランスミッションも純正を組み合わせるには加工が必要になるから、これは13Bに合うミッションへ変更してしまうのがオススメ。今回はSA22CサバンナRX-7ターボ用の5速を組み合わせている。当然、こちらもミッションマウントを加工して作り直さなければ載せることは不可能だ。
肝心のエンジンはFC3SサバンナRX-7用の13Bを使いつつ、ローターをRX-8に変更している。というのもターボのFC3Sより自然吸気であるため圧縮比が高くなるRX-8用を使うことでパワーを引き出せるからだ。
また13Bをコスモスポーツの狭いエンジンルームに載せると純正のエキゾーストマニホールドが使えなくなる。そこでエキマニからマフラーまでワンオフ製作により刷新している。
対する吸気系はFC3S純正を使わずスポーツインジェクションを組み合わせた。
高圧縮ローターと刷新された吸排気系によるパワーは、まさに絶品のはずだ。

コスモスポーツにパワフルな13Bエンジンを載せると、当然のように純正の足回りでは心許なくなる。パワーが上がることで速度域が高くなるから、純正のままでは制動距離が長くなってしまうのだ。これでは危険だし走りを楽しむこともできないため、ブレーキを改良する必要が出てくる。
そこで今回はフロントのブレーキキャリパーを純正の2ポットから対向4ポットの強力なものとして、ディスクローターを純正のソリッドからベンチレーテッドタイプへ変更している。
この組み合わせであれば車重の軽いコスモスポーツを強力に止めてくれるが、純正だとドラムブレーキのリヤをそのままにしては前後バランスが狂ってしまう。そこで純正ドラムを取り外し、2ポットキャリパーによるディスクブレーキへと変更している。
書くだけならカンタンだが、実際の作業は大変なもの。またいかにも変えましたという仕上がりではなく、今回は純正風に仕上げている。
外装がノーマルのコスモスポーツだから、全体のバランスを考えた改造というわけだ。

いかがだろう。確かに古いロータリーエンジンには味わい深いものがあるけれど、しっかり走りたいならこんな改造も視野に入れていただきたい。
どのような車種、どのような要望であっても旧車を長年扱ってきた弊社なら対応可能だ。