
2025年6月9日
トヨタ「アリスト」歴代|レクサスGSの系譜を振り返る
1991年、バブル経済の終焉とともに登場し、2005年までの約14年間販売されたトヨタの高級セダン「アリスト」。
当時のトヨタのマルチチャネル販売戦略において、アリストはトヨタオート店とトヨタビスタ店で販売される高級セダンの位置付けでリリースされたモデルです。
トヨタ店のセルシオ、トヨペット店のクラウンマジェスタなど、各販売チャネルで高級セダンを展開する戦略の一つとして市場に投入されました。
その名称は英語で「最上の・優秀な」を意味し、ギリシャ語で「最高の目的」の意味を持つ哲学者アリストテレスからも由来していると言われています。
直列6気筒エンジンを搭載し、スポーティな走りと高級感を両立させたアリストは、14年という比較的短い期間で2世代のモデルチェンジを実施。その後、レクサスGSへとその役割を引き継ぎました。
今回は、アリストの歴代モデルを振り返ります。
目次
1 イタリアの巨匠ジウジアーロが手掛け、走行性を追求した「初代JZS14型」
1-1 初代アリストの概要
1991年10月に誕生した初代アリストは、時期を同じくして発売されたクラウンマジェスタと、シャシーなどの基本部分を共有する姉妹車として登場しました。
4ドアピラードハードトップのクラウンマジェスタに対し、アリストはプレスドアを持つ4ドアセダンとして「創世・アリスト」のキャッチコピーと共にデビュー。
その後1993年1月からは、日常に追われ、ビジネスカーとしての機能性だけを求めるようになってしまった大人たちに、もう一度運転する楽しさを思い出してほしいという想いが込められた「走りを忘れた大人たちへ。」にキャッチコピーが変更されました。
1993年には北米市場でレクサスブランドから日本仕様の「3.0Q」が「レクサスGS300」として販売開始。日本仕様のアリストをベースにしつつも、サスペンションのセッティングをより快適性重視に調整したり、内装素材や標準装備を北米市場向けに変更するなど、各市場のニーズに合わせた調整が施されました。
同年8月には塗装技術にも改良が加えられ、塗膜内部の結合力が強化されて化学安定性が向上しています。
1994年8月には初めてのマイナーチェンジが実施され、フロントグリル、リアバンパー、リアコンビネーションランプなどが刷新。3.0Vには装備をシンプルにしたSパッケージ、3.0Qには高級装備をセットにしたLパッケージが追加されています。
安全性能の強化も図られ、1995年8月には、ABS、運転席・助手席デュアルエアバッグ、プリテンショナー付きシートベルトが全車標準装備化。同時に、スポーティな装備を施した特別仕様車3.0Qリミテッドも発売されています。
1996年7月にも大きな改良が行われ、エンジンにVVT-i技術が導入されたほか、ヘッドランプ、ウインカー、フロントグリルのデザインが変更されました。内装においても木目調パネル部分が拡大され、より高級感が増しています。また、3.0V、3.0Qの両モデルに特別仕様車リミテッドモデルが設定されました。
そして1997年7月に初代アリストは生産を終了。1997年8月に販売終了するまでに累計6万9,010台が新車登録されました。
1-2 ドライバー志向のコックピットレイアウトを採用したスポーティスタイル
そのデザインを手がけたのは、イタリアの著名デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン。ジャガーXJ40とプロトタイプのジャガー・ケンジントンをベースにしつつ、トヨタのテイストに合わせて量産向けに設計されたデザインが採用されています。
全高を抑えたロングノーズ・ショートデッキ・ロングキャビンによりスポーティなスタイルを実現。室内は明確にドライバー志向のコックピットレイアウト。運転席側に傾けられたセンターコンソールや見やすいオプティトロンメーター、手元操作が容易なダイヤル式コントロールなど、機能美を備えた設計となっています。
高級車に相応しく、3.0Qグレードには本革シート、オートエアコン、4ABSなどを標準装備。3.0Vグレードにはスポーツサスペンション、トルセンLSD、ドライビングポジションメモリー機能なども加わり、後に追加された4.0Z i-Fourには電動リヤサンシェード、リヤオートエアコン、パワーリヤシート調整機能など、より多くの装備が標準化されていました。
1-3 走行性を追求したパワートレイン
パワートレインは、3つのエンジンを用意。
当初は280PSツインターボの2JZ-GTE型エンジンを搭載した3.0Vと、230PS自然吸気の2JZ-GE型エンジンを搭載した3.0Qの2つの直列6気筒3.0リットルDOHCエンジンでスタート。
1992年10月には、セルシオに搭載されていた1UZ-FE型V8 4.0L DOHCエンジンを搭載する4WDモデル「4.0Z i-Four」とラグジュアリー志向の「3.0Q-L」が追加され、ラインナップが充実しました。
駆動方式は、3.0Lエンジン搭載モデルがFR駆動、4.0Lエンジン搭載モデルがフルタイム4WD駆動となっています。
2 先代のスタイルを継承しつつ、居住性や走行性能を高めた「2代目 JZS16型」
2-1 初代モデルから大きく進化を遂げた「2代目アリスト」
1997年8月に登場した2代目アリストは、初代モデルから大きく進化を遂げました。
クラウンマジェスタとの姉妹車関係を解消し、新規のプラットフォームを採用。このプラットフォームは、その後のトヨタFRセダンの基本仕様となっています。
デザインに関しても初代から一転して社内デザインとなりましたが、楕円をモチーフとした特徴的なフォルムに関しては、初代から引き継がれています。初代のスタイルを継承しつつ、さらに居住性や走行性能を高めるための改良が随所に施されました。
テレビCMには鈴木友彦氏が手がけた楽曲を採用。楽曲そのものが高い評価を受け、アリストのイメージ形成に貢献しました。
初代から2代目への進化は数値にも表れています。全長は115mm短縮されたものの、ホイールベースは20mm延長され、室内空間は拡大。0-100km/h加速は先代の3.0Vが約6.2秒だったのに対し、2代目V300では約5.9秒へと向上し、車両重量も軽減されました。
発売翌年の1998年8月にはボディカラーの拡充、1999年8月には最新のDVD-ROMナビゲーションシステムの採用と塗装の質感向上が図られました。
2000年7月のマイナーチェンジでは、フロント・リア両バンパーのデザイン変更に加え、セキュリティ強化のためのエンジンイモビライザー標準化。S300モデルでは5速ATが採用されました。
2001年8月にはアリスト誕生10周年を記念した特別仕様車「10th Anniversary Edition」を両モデルに設定。専用の17インチアルミホイールや本革シート、高級木目内装などが採用されました。
2004年12月、日本でもレクサスGSとしての販売が開始したことから生産終了。在庫車両の販売が終了した2005年8月、アリストとしての歴史に幕を下ろします。2代目は、初代を上回る7万5,499台が新車登録されました。
2-2 機能性と快適性の両立を目指したインテリア
インテリアでは、初代の「ドライバーを中心としたコックピット」という思想を継承しつつ、質感を向上。
視認性に優れたホワイト文字盤のオプティトロンメーターや、操作性を重視したスイッチ類の配置、左右独立温度調節が可能なオートエアコンなど、機能と快適性の両立を図りました。
シート設計も一新され、前席の運転席には8wayパワーアジャスト、助手席には4wayパワーアジャストを装備。後席はホイールベース延長の恩恵により、膝元のスペースが拡大され、長距離移動でも疲れにくい快適な着座姿勢を実現しました。
2-3 操縦安定性と乗り心地の両立を目指したパワートレイン
パワートレインにも大きな変更が加えられ、初代の4.0L V8エンジン搭載モデルが廃止された一方、3.0L直列6気筒エンジンの2種類に集約。
ラインナップは、280PS/43.0kgmを発生するツインターボ付き2JZ-GTE型搭載のV300と、230PS/30.0kgmを発揮する自然吸気2JZ-GE型を積むS300の2モデルとなりました。
両エンジンともVVT-i(連続可変バルブタイミング機構)とETCS-i(電子制御スロットル)を採用し、特に自然吸気ユニットは、初代と比べて約10%の出力向上と低回転域からのレスポンス改善を達成。
トランスミッションは、V300には電子制御4速AT、S300には後のマイナーチェンジで5速ATが組み合わされました。
足回りでは、サスペンションに新技術が投入され、アルミ鍛造アッパーアームの採用とピエゾTEMS(トヨタ電子制御サスペンション)により、操縦安定性と乗り心地の両立を実現。
さらに安全技術として、高速走行時の横風に対する安定性を高めるARS(アクティブリアステア)や、横滑り防止のVSC(ビークルスタビリティコントロール)が導入されました。
2世代で幕を下ろし、3代目レクサスGSにバトンを繋いだアリスト
2005年8月に販売終了した2代目をもって、アリストは14年という歴史に幕を下ろすことになりました。
この販売終了は、2005年にトヨタがレクサスブランドの日本展開を開始したことが大きな要因です。1993年から北米市場でレクサスGSとして販売されていたアリストを、日本でも同じモデル名で統一してレクサス店で販売するという判断でした。
アリストは1991年の登場から2005年までの間に2世代のモデルチェンジを行いました。初代はイタルデザイン社によるデザイン、2代目はトヨタ社内によるデザインと、異なるアプローチで製品化されたのも注目すべきポイントと言えるでしょう。
日本市場では2005年以降、3代目となるレクサスGS(S190型)がリリースされ、グローバルブランド戦略の一環として展開されました。
アリストが担っていたトヨタビスタ店とトヨタオート店(後のネッツトヨタ)の最上級セダンという役割は、その後アルファードVを経て、最終的にヴェルファイアへと受け継がれます。
現在でも、2JZ-GTE型ツインターボエンジンを搭載したモデルは、そのパフォーマンスと信頼性から中古市場でも根強い人気を誇ります。2代目後期型や10周年記念特別仕様車などの希少モデルは、プレミアム価格で取引されるケースも見られます。
アリストの販売終了後も、その基本設計思想はレクサスGSシリーズに継承され、高い走行性能と上質な乗り心地のバランスは、現在のレクサスブランドにも息づいています。
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