2025年12月17日
車が水没したときの保険対応ガイド|補償範囲・手続き・修理と廃車の判断基準
近年、台風やゲリラ豪雨による冠水被害が全国で相次ぎ、車の水没も珍しくなくなりました。
「もし自分の車が水没したら、保険でカバーされるのだろうか?」「修理と廃車、どちらを選ぶべき?」。こうした疑問や不安を抱くドライバーは少なくありません。
水没被害は車に深刻なダメージを与えるだけでなく、保険の適用条件や補償金額、修理の可否といった判断も難しいのが実情です。
今回は、車両保険がカバーする範囲や補償金額の仕組み、事故後の初動対応や必要な手続き、修理か廃車かの判断基準まで詳しく解説します。
目次
1 車の水没被害はなぜ起こる?

車の水没は、台風やゲリラ豪雨による道路冠水、河川の氾濫、地下駐車場での浸水などで発生します。都市部では短時間の豪雨で排水が追いつかず、わずか数十分で駐車中の車が水没することもあります。
車は電気系統やシート、エンジンなど多くの部品が精密に組み合わさっています。水に浸かると、配線の腐食やショート、シートのカビ、エンジン内部の浸水など、見えない部分に深刻なダメージが蓄積します。
一度水没した車は、たとえ乾かしてもトラブルが後から現れるリスクが高く、「修理しても安心して乗れるか」という点が最大の問題になります。
とくにエンジンや電子制御ユニットが水に浸かった場合、修理費用は高額化しやすく、全損扱いとなるケースが大半です。水没車は市場価値も下がり、売却や下取りの際に大幅な減額、あるいは買い取り不可となることも少なくありません。
2 保険でカバーされる範囲

2-1 車両保険への加入が前提
車の水没被害は、自賠責保険や「対人・対物賠償」などの基本的な保険では補償されません。対象となるのは任意保険の「車両保険」です。
加入していなければ、修理費も買い替え費用もすべて自己負担になってしまいます。
「保険に入っているから大丈夫」と思っていても、実際には補償内容の範囲によって結果が大きく変わる点に注意が必要です。
2-2 「一般型」と「エコノミー型」の違い
車両保険には大きく分けて2種類あります。
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一般型(フルカバー型)
台風・豪雨・洪水・高潮などによる水没被害をすべて補償。自然災害に広く対応できるため安心度が高い。 -
エコノミー型(限定補償型)
盗難・火災など一部のみが対象。水害・自然災害による水没は補償外。保険料は安いが、いざという時に役に立たないリスクがある。
実際に「節約のつもりでエコノミー型にしていたら水没被害が補償されなかった」というケースは少なくありません。契約中のプランを一度確認しておくことが非常に重要です。
2-3 補償金額の仕組み
車両保険では、支払われる金額の上限は「契約時に設定した車両保険金額」ですが、実際に支払われるのはその時点での車の時価額です。
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新車時に300万円で契約しても、5年経過すると100万円前後しか出ないこともある
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修理費用が時価額を超えた場合は「全損扱い」になり、時価額を基準に支払われる
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修理費用が時価額未満であれば「分損」として修理費用分が補償される
つまり、同じ車でも「年式・走行距離・市場価値」によって補償額は大きく変わります。
2-4 その他の特約でカバーできる部分
水没被害では、車両保険以外の特約が役立つこともあります。
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ロードサービス特約:冠水道路で動けなくなった車のレッカー費用をカバー
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代車特約:修理や廃車に時間がかかる場合、代車を借りる費用を補償
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人身傷害・搭乗者傷害保険:水没による事故や避難時のケガをカバー
このように「どこまでカバーできるか」は契約内容次第です。普段から証券やマイページで補償範囲をチェックしておくことで、いざという時に慌てずに済みます。
3 水没時に取るべき初動対応
3-1 まずは安全確保が最優先
車の損傷よりも、最優先すべきは乗員の安全です。水位がドア下部に達したら、無理に走行や再始動を試みず、速やかに車外へ避難してください。
特に地下駐車場やアンダーパスでは水が一気に流れ込み、ドアが開かなくなる危険があります。また、電装系や排気系に水が入ると、再始動の試みがエンジンの致命的な破損につながります。
3-2 エンジンは絶対にかけない
「水が引いたから試しに動かしてみよう」という行為は厳禁です。
吸気口や排気系に水が入っていると、再始動の瞬間にウォーターハンマー(水撃現象)が発生し、ピストンやコンロッドが破損する恐れがあります。これは修理不能の「全損」に直結します。動かす必要がある場合は、必ずレッカーを手配しましょう。
3-3 写真で証拠を残す
保険請求をスムーズに進めるには、被害状況の記録が重要です。スマホで以下のポイントを撮影しておくと安心です。
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車の外観(ナンバーが写る角度)
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泥汚れや水跡で分かる水位ライン
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フロアやシートなど車内の浸水状況
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周囲の冠水状況(道路や駐車場全体)
これらをスマホで撮影しておくと、後日の保険交渉がスムーズになります。
3-4 保険会社・ロードサービスへ連絡
安全を確保し、状況を整理したら加入中の保険会社やロードサービスへ連絡を入れましょう。
伝えるべき内容は次の3点です。
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現在地と状況(冠水・水没)
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車の状態(エンジンはかけていないか)
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必要なサポート(レッカー、代車手配など)
初動で情報を整理して伝えることで、その後の対応がスムーズになります。
3-5 修理か廃車かの判断はプロに任せる
見た目が軽症でも、シート下の配線やECU(電子制御ユニット)、エンジン内部まで水が達している可能性があります。自己判断で「乾かせば大丈夫」と考えるのは危険で、後から深刻な不具合が出やすいのが水没車の特徴です。必ずディーラーや整備工場に診断を依頼しましょう。
4 補償を受けるための手続きと流れ

保険会社へ連絡したら、必要書類の準備を進めましょう。
保険金請求にあたっては、以下の書類が求められるのが一般的です。
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保険証券番号や契約内容のわかるもの
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車検証
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運転免許証
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被害状況を示す写真(車外・車内・水位跡)
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修理見積書(整備工場が発行)
準備が整っていると、支払いまでの流れがスムーズになります。
書類が揃ったら保険会社から「損害調査員(アジャスター)」が派遣され、車両の状態を確認します。ここで 「全損」か「分損」かの判断がなされ、補償金額が決定します。
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全損扱い:修理費用 > 車の時価額 → 時価額を基準に保険金が支払われる
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分損扱い:修理費用 < 車の時価額 → 修理費用相当が補償される
水没車は後から不具合が出やすいため、実際には全損と判断されることが多いです。
保険会社の調査・審査が完了すると、補償金が振り込まれます。時期は契約内容や被害状況によりますが、申請から2〜4週間程度が一般的です。
補償金額が決まった後、修理を選ぶか廃車にするかを決定します。
修理を選ぶ場合は、見積と補償金を照らし合わせ、不足分は自己負担です。一方、廃車を選ぶ場合は補償金を受け取ります。
修理しても再発リスクが高いと判断される場合は、廃車を選ぶ方が合理的なケースが多いです。
5 修理と廃車の判断基準
ここでは修理する場合と廃車にするケースの判断基準を説明します。
5-1 修理対応の場合
水没の程度が比較的軽く、フロア下や一部電装品の浸水にとどまる場合は、洗浄・部品交換で修理可能なことがあります。
その際に下記のポイントをクリアしておく必要があります。
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シート下まで浸水していない
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エンジンや電子制御ユニット(ECU)が水に浸かっていない
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浸水時間が短く、泥や汚れが軽度
このような条件であれば、修理後も比較的安心して乗り続けられる可能性があります。
5-2 廃車対応を選ぶべきケース
一方で、次のようなケースは「廃車扱い」となることがほとんどです。
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エンジン内部まで浸水:ウォーターハンマーや内部腐食のリスク
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ECUや配線が浸水:電装系のトラブル再発が避けられない
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長時間の浸水や泥水被害:臭いやカビ、サビが残る
修理して一時的に動いても、時間が経つと電装トラブルや不具合が繰り返し発生し、結果的に高額な出費につながりやすいです。
5-3 経済的な判断基準
保険会社や整備工場では、修理費用が時価額を超えるかどうかを基準にします。例えば、時価額80万円の車で修理に100万円かかる場合は「全損」扱いとなり、廃車+保険金支払いが現実的です。
また、たとえ修理費が時価額を下回っていても、再発リスクや将来の下取り・売却を考えると「廃車を選んだほうが合理的」という判断がされることも少なくありません。
6 水没車の査定・リセールへの影響
中古車市場において、水没歴のある車は「修復歴車」よりも厳しく評価される傾向があります。その理由は、外見からは分からない内部ダメージや電装系トラブルの再発リスクが高いためです。
たとえ一度修理して問題なく動いていても、将来的に故障が発生する可能性を買い手が懸念するため、買取価格は大きく下がるのが一般的です。
ディーラー下取りの場合、水没歴があると、ほぼ「査定ゼロ」または引き取り費用がかかるケースもあります。
中古車買取店であれば、部品取りや海外輸出用として買い取るケースはあるものの、通常より大幅に査定額が下がる傾向にあります。
水没車などを専門とした買取業者の場合、解体・リサイクルを前提に引き取るため、リサイクル部品の価値次第で価格は上下します。
つまり、通常の下取りや買取査定に期待するのは難しく、専門業者に依頼する方が金銭的メリットは大きい場合が多いです。
また手放す際は必ず水没した旨を伝えましょう。
水没歴を隠して売却することは「告知義務違反」となり、後からトラブルに発展します。買い手から返金や損害賠償を求められるリスクがあるため、必ず正直に申告する必要があります。
いつ起こるかわからないからこそ、万全の対策を
車の水没は、突発的に起きる自然災害の一つであり、ドライバー自身の力では防ぎきれない場合もあります。だからこそ、事前の備えと保険の確認、そして起きてしまった後の冷静な対応が何より大切です。
水没による被害は、エンジンや電装系の故障、カビやサビといった表面的には見えにくいトラブルに直結します。結果的に「修理よりも廃車が合理的」という判断になることが多く、保険での補償が有無を分けるポイントになります。
日頃から駐車場所や気象情報に注意し、梅雨や台風シーズン前には保険証券の補償内容を見直しておきましょう。また、万が一水没してしまったときには、まずは安全確保を最優先にしつつ、速やかに保険会社へ連絡し、補償手続きを進めることが被害を最小化するカギとなります。
数千円の保険料や日々の小さな習慣が、数十万円の修理費用や大切な命を守ることにつながります。予防策と日常のリスク管理を意識することで、万が一の豪雨や水害のときも落ち着いて対応できるはずです。
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