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日産フェアレディZの歴代モデルについて進化の軌跡を辿る!

日産フェアレディZの歴代モデルについて進化の軌跡を辿る!

半世紀以上にわたり愛され続ける「日産フェアレディZ」。

日産を象徴するスポーツカーシリーズですが、その始まりは1969年まで遡ります。純国産の手で「世界に通用するスポーツカーを作る」という明確な志から誕生しました。

「フェアレディ」の名は、もともと1960年代初頭に登場した小型オープンカー「ダットサン・フェアレディ」シリーズに由来します。

この名称はブロードウェイミュージカル『マイ・フェア・レディ』から着想を得ており、当時の日産社長・川又克二が「上品さと華やかさを持った女性的な響き」として採用したものです。

そして「Z」の文字は、未知の可能性を意味する記号。“未知数=Z”という名に込められたのは、「新しい時代を切り開くスポーツカーでありたい」というメーカーの強い決意でした。

1969年に登場した初代S30型以降、フェアレディZは7世代にわたり進化を重ねてきました。

高性能化が進む中でも、ロングノーズ・ショートデッキの美しいプロポーションとFR(後輪駆動)の走りという本質は一貫して守られています。

今回は、フェアレディZのこれまでの系譜を、デザイン・性能・時代背景とともに振り返ります。

目次

1 国産スポーツカーの夜明けを告げた一台、初代フェアレディZ S30型

1969年、初代フェアレディZ(S30型)は、日産が誇る新しいフラッグシップ・スポーツカーとして誕生しました。

日本では「フェアレディZ」、北米では「DATSUN 240Z」の名称で販売され、瞬く間に世界的ヒットを記録。北米市場ではわずか数年で20万台以上を売り上げ、“Affordable Sports Car(手の届くスポーツカー)”という新ジャンルを切り開きました。

当時の日本では、高度経済成長期の勢いが社会全体を包み、国民が「マイカー」を持ち始めた時代でした。その中でフェアレディZは、“ただの移動手段”ではなく“自己表現の象徴”として若者の憧れとなりました。

「国産スポーツカーが世界で戦える」という自信を日本にもたらしたこの一台は、まさに国産スポーツの夜明けを告げた車だったのです。

1-1 主な仕様・スペック

搭載されたエンジンは、L20型およびL24型の直列6気筒SOHCで、排気量は2.0〜2.4リッター。最高出力は130〜150馬力前後を発揮し、駆動方式はフロントエンジン・後輪駆動という伝統のFRレイアウトを採用していました。

トランスミッションは4速または5速のマニュアル、さらに3速オートマチックも用意され、幅広いユーザー層に対応しました。

軽量なボディと直6エンジンの組み合わせによるパワーウエイトレシオは当時としては抜群で、0-400メートル加速を16秒台で駆け抜ける俊足を誇ります。さらに価格はポルシェやジャガーといった欧州高級スポーツカーの半分以下でありながら、同等の走行性能を発揮。

コストパフォーマンスの高さは海外でも注目され、欧米メディアからは「世界が認めた日本製スポーツカー」として絶賛を浴びたモデルです。

1-2 デザインと思想

S30型のデザインは、イタリアのスポーツカーを意識した流麗なロングノーズ・ショートデッキ。

エンジンルームを長く取ることで、6気筒エンジンの存在感を強調しながらも、後方へ流れるようなシルエットが「ZのDNA」を確立しました。

インテリアはシンプルながらも機能美を重視し、メーター配置や操作系はドライバー中心にレイアウト。スポーツドライビングと快適性を両立した設計思想は、後のZシリーズの基本哲学となります。

1-3 特別仕様とレースでの躍進

1970年には、スカイラインGT-Rと同じS20型エンジン(直6 DOHC)を搭載した「Z432」や、軽量化・高回転チューンを施した「Z432R」が登場。

これらはモータースポーツで数々の実績を残し、サファリラリーでの優勝や国内レースのタイトル獲得など、日産のスポーツブランドを世界に知らしめました。

2.快適性と高級感を備えた2代目フェアレディZ S130型の誕生

1978年に登場した2代目S130型は、初代が築いた“ピュアスポーツ”のイメージを受け継ぎながら、より上質で快適な方向へと舵を切ったモデルです。

その背景には、1970年代後半のオイルショックとライフスタイルの多様化があります。

燃費や快適性を重視する流れが強まる中で、日産は「走りだけではなく、長距離を優雅に楽しむスポーツカー」へとフェアレディZを再定義しました。

S130型が登場した1978年は、日本社会が「成熟」と「余裕」を意識し始めた時代でした。車は単なる移動手段ではなく、“ライフスタイルを表現する道具”としての価値を持ち始めました。

そのため、フェアレディZも走行性能に加えて、所有する喜びやスタイルの洗練が求められるようになります。2by2モデル(後部座席付き)の設定や、Tバールーフの採用など、レジャー志向の高まりにも対応しました。

特に北米市場では、S130は「280ZX」として販売され、初代以上の成功を収めました。その高い商品力と豪華装備は、欧米ユーザーから「日本が作る信頼できるスポーツGT」として高く評価されています。

2-1 主な仕様・改良点

搭載されたエンジンはL型直列6気筒で、L20EからL28Eまで幅広いバリエーションが用意されました。

排気量は2.0〜2.8リッター、最高出力はおおむね130〜145馬力前後を発揮し、駆動方式は伝統のFR。トランスミッションは5速マニュアルと3速オートマチックが設定され、ユーザーの用途に応じて選択が可能でした。

S130型では、当時としてはまだ先進的だった電子制御燃料噴射(EGI)が採用されており、排出ガス規制の強化に対応しながらも、滑らかな加速と安定した出力を実現。また、1980年には国産車として初めてターボチャージャーを搭載したZ-Tが登場。

排気量わずか2リッターながら145馬力を発揮し、GTカーとしての余裕ある走りを見せつけました。このターボZの誕生は、技術革新の時代に突入したことを象徴する出来事であり、フェアレディZの進化が性能面でも確実に新たな段階へ入ったことを印象づけた一台です。

2-2 デザインとインテリアの進化

外観デザインは、初代の流線型から一転し、より直線的でシャープなフォルムへ。これは1970年代後半の「直線基調デザイン」の流行を反映したもので、より現代的で知的な印象を与えました。

フロントマスクにはワイドなバンパーと角型ヘッドライトを採用し、全体的に“精悍なグランドツアラー”の雰囲気を漂わせています。

インテリア面でも大幅な質感向上が図られ、ウッド調パネルや本革シートなど、上級志向の素材を積極的に採用。快適装備の充実により、スポーツカーでありながら長距離ドライブでも疲れにくい快適性を実現しました。

3 ハイテクZの誕生V6エンジンの時代へ、3代目フェアレディZ Z31型

1983年に登場した3代目フェアレディZ(Z31型)は、日産が新時代に掲げた「技術の革新」を体現したモデルでした。

先代で確立された「Zらしさ」を維持しながら、パワーユニットからデザイン、電子制御まであらゆる領域で進化。

キャッチコピーは「ハイパフォーマンス・ハイテクノロジー」。まさに“テクノロジーが形になったZ”として、1980年代を象徴する存在となった一台です。

1980年代は、日本の自動車産業が世界市場で勢いを増していた時代でした。

経済成長に支えられ、ユーザーの関心は「走りの性能」だけでなく、「ハイテク装備」や「洗練されたデザイン」にも向かいました。その中でZ31は、スポーツカーでありながら快適装備や電子制御を積極的に採用し、“走りとテクノロジーの融合”を体現。

欧米では「DATSUN 300ZX」として販売され、Zシリーズの国際的な地位をさらに高めました。

3-1 主な仕様・進化のポイント

搭載されたエンジンは、VG20E・VG30E・VG30ETといったV型6気筒ユニットで、排気量は2.0〜3.0リッター。最高出力はターボ仕様のVG30ETで230馬力、最大トルクは34kgmに達し、駆動方式は伝統のFRを継承していました。

トランスミッションには5速マニュアルと4速オートマチックが設定され、電子制御サスペンションやデジタルメーター、ABSなど、当時の先端装備が惜しみなく採用されています。

Z31最大の革新は、フェアレディZ史上初となるV型6気筒エンジンを採用したことです。従来のL型直列6気筒からV6へ移行したことで、エンジンルームのコンパクト化と車体剛性の最適化が実現。スペース効率が高まり、より低重心で安定した走りを可能にしました。

さらに電子制御燃料噴射や可変吸気制御など、当時としては画期的なテクノロジーを導入し、走行性能と環境性能の両立を果たしています。

中でもVG30ET型3.0リッターターボエンジンは、国産初のV6ターボとして登場し、国際的にも高い注目を集めました。従来のZが持つスポーティな速さに加え、静粛性や上質なフィールを兼ね備えたその特性は、フェアレディZを「高性能と快適性を両立するグランドツアラー」へと進化させたといえます。

3-2 デザインと空力性能

Z31のデザインは、1980年代らしいウェッジシェイプ(前傾したクサビ型)スタイルを採用。直線的でシャープなラインと角型ヘッドライトは、当時のデジタル志向や機能美を象徴していました。

ボンネットを低く抑えたことでCd値(空気抵抗係数)は0.31という優れた数値を実現し、空力性能も大幅に向上。

インテリアでは、当時の未来志向を反映したデジタルメーターやボタン式スイッチを採用。ドライバーを包み込むようなコクピットデザインが採用され、まるで航空機の操縦席のような感覚を味わえる仕上がりでした。

3-3 モータースポーツでの活躍

Z31はその高い基本性能を活かし、国内外のレースシーンでも活躍しました。IMSA(アメリカの耐久レースシリーズ)では「300ZX Turbo」として参戦し、1984年にクラスチャンピオンを獲得。

グループCカー「ニッサンR85V」などにも搭載されたVG30系ターボエンジンは、日産のエンジニアリング技術を世界に知らしめました。

この時期の日産は「技術の日産」をスローガンとして掲げており、Z31はまさにその象徴です。電子制御技術の導入やターボ化、空力最適化といった要素をまとめ上げた“総合技術の結晶”でした。

4 “近未来スポーツ”の象徴となった革新の4代目フェアレディZ Z32型

1989年に登場した4代目フェアレディZ(Z32型)。それまでの“ハイテクZ”をさらに洗練させ、技術・デザイン・走行性能すべてを刷新したモデルでした。

国産スポーツカーの成熟期に生まれたZ32は、バブル期の豊かさと技術革新の勢いを背景に、「世界基準のハイパフォーマンスカー」として圧倒的な存在感を放ちました。

1980年代後半から1990年代前半は、日本経済が絶頂を迎えた時期。自動車産業も潤沢な開発費を背景に、技術とデザインの両面で頂点を極めていました。

Z32はそんな時代を象徴する存在であり、「技術力で欧州スポーツを超える」という目標を現実のものとしました。

しかし、バブル崩壊後の経済低迷とともに、Z32の販売は次第に減少。高コストな設計と排ガス規制の影響で、2000年をもって一旦生産を終了します。

とはいえ、その完成度と存在感は今なお色あせず、“最後のアナログZ”として絶大な人気を誇っています。

4-1 主な仕様と技術的特徴

搭載されるエンジンは、V6・3.0リッターのDOHCツインターボ「VG30DETT」です。最高出力は自主規制値いっぱいの280馬力、最大トルクは39.6kgmを発揮し、駆動方式は伝統のFR。

トランスミッションは5速マニュアルと4速オートマチックが用意され、装備面では4輪操舵システム「スーパーHICAS」やABS、トラクションコントロール(TCS)、ツインエアバッグなど、当時としては最先端の安全・走行支援技術が採用されていました。

Z32では、国産車としては珍しかったDOHCツインターボエンジンを採用したことで、力強く伸びのある加速性能を実現しています。

0→100km/h加速はわずか5秒台という俊足を誇り、そのパフォーマンスは欧州の高級スポーツカーにも引けを取りません。また、「スーパーHICAS」による4輪操舵システムは、コーナリング中の姿勢変化を抑え、安定性と俊敏性を両立。結果として、Z32は単なるパワー志向のスポーツカーではなく、“知能を持ったスポーツカー”として新たな時代を切り開いた一台です。

4-2 デザイン:美しさと空力の融合

Z32のデザインは、それまでの直線的なフォルムを一新。低くワイドなプロポーションと滑らかなラインが特徴で、Cd値(空気抵抗係数)は0.32と高水準です。

ボディ幅を拡大し、タイヤをワイド化することで、よりグラマラスで安定感のあるスタイルを実現しました。

フロントにはリトラクタブルヘッドライトを採用し、当時としては斬新な近未来的フェイスを形成。このデザインは海外でも高く評価され、後に「アメリカで最も美しい日本車のひとつ」と称されました。

内装はドライバー中心のコクピットデザインを採用し、メーターフードやスイッチ類を包み込むように配置。視認性・操作性に優れた設計は、長距離でも疲れにくく、スポーツドライブの没入感を高めています。

4-3 モータースポーツと海外での成功

Z32は「300ZX」の名で北米市場に投入され、IMSAレースやル・マン24時間耐久レースなどで大活躍。特にIMSAでは1989〜1995年にかけて多数の勝利を収め、1994年にはクラスチャンピオンを獲得しました。

その高い信頼性と性能は「日本車=高品質スポーツ」という評価を確立させました。

国内でもSUPER GTの前身である全日本GT選手権に参戦し、GT300/GT500クラスの両方で存在感を発揮。レースでもストリートでも輝く万能スポーツとして、“フェアレディZ”のブランド価値を世界的に押し上げたモデルです。

5 2年の空白を経て再び走り出した5代目フェアレディZ Z33型

2000年にZ32の生産が終了したことで、「フェアレディZ」という名は一時的に市場から姿を消すことに。しかし、Zを愛するファンの声は途絶えることなく、日産社内でも“Zを復活させたい”という情熱が燃え続けていました。

その想いに応えるかたちで、2002年、4代目が販売を終了してから約2年の空白期間を経て登場したのが5代目Z33型です。

Z33は「Zの原点に立ち返る」ことをテーマに開発されました。高級路線を歩んだZ32とは異なり、シンプルでダイレクトな走りを重視。初代S30型のスピリットを現代的に再解釈し、「誰もが楽しめるスポーツカー」として再び世界へ挑みました。

2000年代初頭、日本のスポーツカー市場は冷え込んでいました。

環境規制の強化や景気の低迷により、トヨタ・スープラやマツダRX-7などが次々と生産終了。そんな中で登場したZ33は、“再びスポーツカーを世の中に取り戻す”存在として注目されました。

そのコンセプトと価格設定(新車時300万円台〜)は世界でも高く評価され、北米市場では「350Z」の名で販売。
走行性能・デザイン・コストパフォーマンスのバランスに優れ、欧米メディアからも「最もリアルなスポーツカーの一つ」と称されました。

5-1 主な仕様・スペック

搭載されるエンジンは、V6・3.5リッターのDOHCユニット「VQ35DE」で、後期型では改良版の「VQ35HR」が採用されています。最高出力は280〜313馬力、最大トルクは37.0〜37.8kgmを発揮し、駆動方式は伝統のFR。

トランスミッションは6速マニュアルと5速オートマチックが設定されていました。ボディサイズは全長4,310mm、全幅1,815mm、全高1,315mmとコンパクトで、理想的なスポーツカーのプロポーションを備えていたのが特徴です。

VQ35DEエンジンは、日産が誇る世界的評価の高い「VQシリーズ」のひとつであり、可変バルブタイミング機構や高剛性のアルミブロックを採用することで、滑らかで力強い加速フィーリングを実現しました。

さらに、ボディにはアルミ合金を積極的に使用し、剛性の向上と軽量化を両立。走行性能だけでなく、操縦安定性や燃費性能の面でも高い完成度を誇っています。

Z33は、過度な高級志向から一歩引き、「走る歓び」を純粋に追求するスポーツカーとして開発されました。初代S30型から受け継がれる“人とクルマの一体感”を現代技術で再構築し、まさに「走りの愉しさ」を再定義するモデルです。

5-2 デザイン:原点回帰とモダンの融合

Z33のデザインは、初代S30型へのオマージュが随所に盛り込まれています。ロングノーズ・ショートデッキのシルエット、張り出したリアフェンダー、丸型テールランプ――どれもZの血統を受け継ぐ要素です。

一方で、ボディラインは筋肉質で力強く、ヘッドライトは涙滴形の個性的な造形を採用。「クラシカルなZ」と「未来的スポーツカー」という二つの要素を高次元で融合させたデザインでした。

インテリアは、余分な装飾を排除した機能美重視のコクピット。三連メーター(油温・電圧・時計)は初代S30型を彷彿とさせ、ドライバーの視界と操作性を最優先に設計されています。

5-3 走行性能:軽快でリニアな“ピュアスポーツフィール”

Z33の最大の魅力は、ステアリング操作に対してリニアに反応する“素直なハンドリング”です。

フロント・リアともにマルチリンクサスペンションを採用し、旋回性能と乗り心地を高次元で両立。また、低重心設計と前後53:47の重量配分により、コーナリング時の安定性は歴代でもトップクラスでした。

「Zらしい走り」とは何かを追求し、理想を現代技術で具現化したモデルといえます。

5-4 バリエーションと限定モデル

登場から数年後には、よりハードな走りを追求したNISMOバージョンがラインナップに追加。

専用エアロパーツ、強化サスペンション、軽量ホイールなどを装備し、サーキット志向のドライバーから高い支持を得ました。

さらにオープンモデル「フェアレディZ ロードスター」も発売され、走る喜びを開放感とともに味わえる仕様として人気を集めました。

6 コンパクト&ハイパフォーマンス、熟成の6代目フェアレディZ Z34型

2008年に登場したZ34型は、「もっと俊敏に、もっと力強く」という明確なテーマのもとで開発されました。

5代目Z33のコンセプトを継承しながらも、全長を短く・全幅を広くすることで、より低重心で安定したフォルムを実現。結果、Z34は「より速く・より正確に応えるZ」として、走りの完成度を大きく高めました。

販売を開始した2008年といえば、世界的な景気後退の影響でスポーツカー市場が縮小していた時代。

そんな中でも、Z34は「走りの愉しさ」を体現する数少ないFRスポーツとして生き残りました。特に北米では「370Z」として販売され、アメリカの自動車文化の中でZブランドを再び確立。

“合理的な価格で手に入る本格スポーツカー”として、ポルシェ・ケイマンなど欧州勢と肩を並べる評価を得た一台です。

6-1 主な仕様・スペック

搭載されるエンジンは、V6・3.7リッターDOHCの「VQ37VHR」です。最高出力は336〜355馬力、最大トルクは37.0〜38.0kgmを発揮し、駆動方式は伝統のFRを継承しています。

トランスミッションは6速マニュアルと7速オートマチックの2種類が設定され、ボディサイズは全長4,265mm、全幅1,845mm、全高1,315mmと、力強く安定感のあるプロポーションを備えていました。

VQ37VHRエンジンには、可変バルブリフト機構「VVEL」が搭載されており、エンジン回転の上昇が非常に滑らかで、アクセル操作に対するレスポンスも一段と鋭くなっています。中速域からの加速は特に力強く、サーキット走行でもストリートでも軽快な走りを楽しむことができました。

さらに、6速マニュアル車には「シンクロレブコントロール」という革新的な機能が搭載されています。これはシフトダウン時に自動でエンジン回転を合わせ、プロドライバーのようにスムーズな変速を実現するシステムです。

一方、オートマチックモデルも7速化され、変速スピードの向上と燃費効率の改善を両立。Z34型は、スポーツカーとしての俊敏さと日常での扱いやすさを兼ね備えた完成度の高いモデルとなりました。

6-2 デザイン:筋肉質で力強いシルエット

Z34のデザインは、「スピード感」と「たくましさ」を両立した筋肉質なフォルムが特徴です。

フロントからリアへと流れるキャラクターラインは、まるで獲物を狙う動物のような緊張感を放ちます。初代S30から続くロングノーズ・ショートデッキの伝統を守りながらも、ヘッドライトとテールランプには“ブーメランシェイプ”のLEDデザインを採用し、モダンでアグレッシブな印象に仕上げられました。

内装はZ33よりもさらに質感を高め、本革×アルカンターラのシート、ドライバー包み込み型コクピットを採用。

メーターパネルの視認性を高めつつ、ドライビングポジションも最適化され、スポーツドライバーだけでなく、長距離ドライブにも適した快適性を実現しています。

6-3 走行性能:バランスの極み

Z34では、ボディ剛性を向上させながら軽量化にも成功。

アルミ製ドアやボンネットを採用し、Z33比で約40kgの軽量化を達成しました。さらに、前後重量配分54:46という理想的なバランスにより、コーナリング中の姿勢変化が極めて安定。ステアリング操作への反応も鋭く、「Zの走りはここに極まった」と評される仕上がりです。

サスペンションには新設計のダブルウィッシュボーン式(フロント)とマルチリンク式(リア)を採用し、
荒れた路面でも優れた接地感と安定感を確保。

「硬派なスポーツカー」でありながら、乗り心地にも配慮された“日常で楽しめるZ”として進化を遂げました。

7 過去と未来をつなぐ、原点回帰の7代目フェアレディZ RZ34型

2022年に登場した7代目フェアレディZ(RZ34型)は、長い歴史を持つZシリーズの中でも特別な存在です。

開発陣が掲げたテーマは「Z is back」。これは単なる復活ではなく、「フェアレディZとは何か」という問いを、改めて世界に投げかけるメッセージでもありました。

RZ34が登場した2020年代は、世界的に電気自動車(EV)シフトが急速に進む時代です。そんな中で、ガソリンエンジンとFRレイアウト、さらに6速マニュアルを守り続けたZの姿勢は、ある意味で時代の流れに逆らう選択にも見えます。

しかし、その“逆行”こそがZの本質でした。RZ34には、「Zは感情を動かすクルマであり続ける」という強い信念が込められています。効率性や自動化が進む時代だからこそ、Zは「運転する喜び」という人間的な価値を再び提示しようとしたのです。

この姿勢は、単なる懐古ではなく、次世代スポーツカーのあり方を問う象徴的なメッセージでもあります。RZ34は、進化と伝統の両立を成し遂げた“令和のZ”として、新しい時代のドライバーたちに「走る歓びとは何か」を改めて問いかけているのです。

7-1 主な仕様・パフォーマンス

搭載されるエンジンは、V6・3.0リッターのツインターボ「VR30DDTT」です。最高出力は405馬力、最大トルクは48.4kgmを発揮し、駆動方式はFRを継承しています。

トランスミッションは6速マニュアルと9速オートマチックの2種類が設定され、車両重量はおよそ1,570kg。高出力でありながら、軽量かつバランスの取れたパッケージングが特徴です。

このVR30DDTTエンジンは、スカイライン400Rにも搭載されている高性能ユニットをベースとしています。小排気量化とツインターボ化によって、従来の自然吸気エンジンを超える出力とトルクを実現しながら、低回転域からターボラグを感じさせない滑らかなレスポンスを実現しています。

どの回転域からでも力強く加速するその特性は、まさに現代のスポーツカーにふさわしい完成度です。

6速マニュアルにはクラッチ操作を軽くするアシスト機構が採用されており、ストップ&ゴーの多い市街地でも扱いやすく、スポーツドライビング時には繊細な操作をサポートします。

さらに、9速オートマチックモデルでは、高速域での変速応答性が飛躍的に向上し、加速時も減速時もドライバーの意思に瞬時に反応。ストリートからサーキットまで、状況に応じて自在な走りを楽しめる“意のままに操れるZ”として仕上げられています。

7-2 デザイン:伝統と革新の融合

RZ34のデザインは、初代S30と4代目Z32の遺伝子を現代的に再構築したものです。フロントマスクには、初代S30を思わせる長方形のグリルが採用され、クラシックな雰囲気を漂わせています。

一方で、テールランプはZ32をオマージュした水平基調のLEDデザインとなっており、リアビューには90年代Zの面影が感じられます。また、ロングノーズとショートデッキのプロポーションはZの象徴ともいえるスタイルで、どの角度から見ても「これぞフェアレディZ」と呼ぶにふさわしい存在感を放っています。

外観は全体としてレトロな要素を受け継ぎながらも、細部のディテールはシャープでモダンに仕上げられています。懐かしさと新しさを融合させたこの造形は、まさに過去と未来をつなぐ“時代を超えたデザイン”として、国内外で高い評価を受けました。

インテリアは「デジタルとアナログの融合」をテーマに設計されています。メーターパネルには12.3インチのデジタルディスプレイを採用しつつ、中央には伝統の三連補助メーター(油圧・ブースト・電圧)が配置されています。最新技術を備えながらも、歴代Zオーナーが思わず懐かしさを感じるインターフェース構成となっており、まさに“Zらしいドライバー空間”を体現しているといえるでしょう。

7-3 走行性能:伝統のFRが進化する

RZ34は、Z34のプラットフォームを改良した「進化型FRシャシー」を採用。

剛性を10%以上高めながら、サスペンションジオメトリーを最適化し、ステアリングフィールがより自然に仕上がりました。前後重量配分は理想的な53:47に設定され、旋回時の挙動が極めて安定しています。

また、電子制御技術も大きく進化したことも特徴です。トラクションコントロールや制動制御を細かく設定できるドライブモードセレクトを搭載し、街乗りからスポーツ走行まで、ドライバーの意図に応じた走りを楽しめます。

7-4 北米市場での反響とZ文化の再燃

RZ34は北米を中心に熱狂的な歓迎を受けました。「Zが帰ってきた」というキャッチコピーとともに、アメリカのZオーナーズクラブでは発表会イベントが各地で開催。

“Zは文化だ”という合言葉のもと、Zが再び人々の情熱を呼び起こしました。デザインへの評価も非常に高く、海外メディア『CAR and DRIVER』は『Zはもはやノスタルジーではない。現代スポーツとして堂々たる進化を遂げた』と評しています。

一方で、日本国内でもMTの存在を高く評価する声が多く、「最後のピュアFR・MTスポーツ」として、走りを愛する世代の支持を集めています。

フェアレディZがつないできた情熱と美学

半世紀以上にわたり、フェアレディZは日本のスポーツカー史とともに歩み続けてきました。

その歩みは、単なるモデルチェンジの積み重ねではなく、「時代が変わっても、クルマを操る楽しさを忘れない」という強い信念の連続です。

1969年の初代S30型が示したのは、“世界に通用する国産スポーツカー”という夢の実現でした。
そこから始まったZの歴史は、時代の流行や社会の変化に寄り添いながらも、一貫してロングノーズ・ショートデッキのフォルムとFR駆動によるピュアな走りを守り続けてきました。

1970〜80年代には、快適性とハイテク化を追求することでGTカーとしての新たな価値を確立し、Z32では技術力の粋を集めた“知能を持つスポーツカー”へと進化。

そして2000年代、Z33・Z34では「Zとは何か」という原点に立ち返り、人とクルマが一体になる楽しさを再定義しました。

2022年に登場したRZ34は、その集大成といえる存在です。初代の情熱とZ32の革新を受け継ぎながら、現代の技術で「運転する喜び」という人間的価値を再び世に問いました。

電動化が進む今だからこそ、ガソリンエンジンとマニュアル操作を残したZの姿勢は、まさに時代への挑戦そのものです。

フェアレディZの系譜は、“スピードを誇る車”の歴史ではなく、“感情を動かす車”の歴史です。それぞれの世代が、その時代の空気を映しながら「走るとは何か」を問い続けてきました。

Zは、単なるプロダクトではなく、文化であり、哲学であり、ひとつの美学。初代から現行モデルに至るまで、その魂は変わることなく受け継がれています。

これからもフェアレディZは、時代の変化を恐れず、新しい形で「走りの歓び」を体現していくでしょう。その姿はきっと、未来の世代にも“Zらしさ”として受け継がれていくはずです。

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