
2025年9月12日
時代を映すセダン、ホンダ・アコードの軌跡
ホンダ・アコードは、1976年に初代モデルが登場して以来、40年以上にわたって世界中で愛されてきたロングセラーモデルです。その人気は単なる販売実績にとどまらず、世界の自動車市場における「セダンのスタンダード」を築いた存在といえるでしょう。
「アコード(Accord)」という車名には、「人とクルマの調和」という意味が込められています。その名のとおり、アコードは常に時代のニーズに合わせて進化し、使いやすさ、快適さ、そして走りの楽しさを大切にしてきました。燃費や安全性、環境性能といった社会的な要請にも応えながら改良を重ね、ユーザーに寄り添う存在であり続けています。
また、アコードはホンダのグローバル戦略における中心的なモデルでもあります。日本だけでなく北米、ヨーロッパ、アジアなど幅広い地域で販売され、それぞれの市場に合わせて設計や仕様が調整されてきました。その結果、「日本発のグローバルセダン」として、トヨタ・カムリや日産・マキシマといったライバルとともに世界のセダン市場を牽引してきたモデルでもあります。
今回は、初代から最新の11代目までの歩みを振り返りながら、各世代ごとの特徴などについてお伝えします。
目次
1 経済性と実用性を両立した初代アコード
1970年代は、世界的なオイルショックの影響でガソリン価格が急騰し、それまでの「大きくて豪華な車ほど価値がある」という考え方に大きな変化が訪れました。
ユーザーは燃費や維持費を気にするようになり、経済性と実用性を両立した小型車が強く求められる時代でした。
ホンダはこの流れをいち早く読み取り、ユーザーのニーズに合致した新しい車を開発しました。それが、1976年に誕生した 初代アコードです。
当モデルは、まず3ドアハッチバックとしてデビューしました。
全長は4メートルに満たないコンパクトサイズですが、前輪駆動方式(FF)を採用したことで、車内は広々とした空間を実現。特に後部座席の快適さや荷室の使いやすさは、同クラスの国産車を凌駕していました。
外観デザインはシンプルで端正。派手さはありませんが、質実剛健で洗練された印象を与え、「毎日使える上質な実用車」として高く評価されました。
初代アコードの最大の特徴は、環境性能と燃費性能の高さです。搭載されたホンダ独自のCVCCエンジンは、当時世界で最も厳しいとされたアメリカの排ガス規制を初めてクリアしたエンジンであり、世界中から大きな注目を集めました。
さらに、パワーステアリングやエアコンといった快適装備も用意されており、「小型車であっても快適で贅沢に乗れる」という新しい価値観をユーザーに提示しました。
初代アコードは、日本市場だけでなく北米市場でも大成功を収めたモデルでもあります。特にアメリカでは、「コンパクトで燃費が良いのに、室内が広く快適」という点が評価され、多くのユーザーに受け入れられました。結果的にアコードは大きな販売台数を記録し、ホンダが世界的ブランドとして飛躍するための土台を築きました。
2 ファミリーカーとして存在感を示した2代目アコード
1980年代に入ると、日本は高度経済成長を経て自動車需要が一気に拡大。ユーザーは単なる移動手段ではなく、家族みんなで快適に使えるファミリーカー を求めるようになります。
一方で、初代アコードが北米市場で成功を収めたことから、ホンダにとっては「世界でも通用する次世代モデル」を生み出すことが急務でした。こうした国内外の期待に応えるかたちで誕生したのが2代目アコードです。
2代目はボディサイズを拡大し、外観はより堂々とした雰囲気を備えるようになりました。セダンとハッチバックの2タイプが用意され、ユーザーのライフスタイルに合わせて選べるのも大きな魅力でした。
デザインは直線的で端正。シンプルながらも洗練されており、当時のファミリー層からは「落ち着いていて安心感のある車」として評価されました。
また、広くなった室内は後部座席の快適性を大幅に向上させ、荷室の容量も拡大。実用性と快適性を兼ね備えた家族のための車というポジションを強めました。
2代目アコードは、ホンダらしい先進技術を数多く導入しています。代表的なのが電子制御燃料噴射システム(PGM-FI)を採用したエンジンで、燃費と環境性能を高めつつ、力強い走りを実現しました。
さらに改良されたオートマチックトランスミッションによって、都市部での扱いやすさが大きく向上したこともポイント。
装備面でも、エアコンやパワーウィンドウといった快適装備が普及し始め、「小型車であっても高級感を楽しめる」という新しい価値をユーザーに提供しました。
当モデルから、ホンダはアメリカ・オハイオ州でアコードの現地生産を開始。これは日本メーカーとして画期的な取り組みであり、北米市場での信頼性を高めただけでなく、コスト削減にも貢献しました。結果としてアコードは「単なる輸入車」ではなく、アメリカで作られる日本車として親しまれるようになり、北米での地位を確固たるものにしました。
2代目アコードは、日本市場では「頼れるファミリーカー」としての存在感を強め、海外ではグローバルモデルとしての基盤を築きました。特に北米での成功は、ホンダを単なる国内メーカーから「世界的な自動車メーカー」へと押し上げる大きな一歩となりました。
3 高級セダンとして地位を固めた3代目アコード
1980年代半ば、日本はバブル景気に突入し、社会全体が「豊かさ」や「高級感」を追い求めるようになりました。
自動車も単なる移動手段ではなく、所有することでステータスを示す存在へと変化していきます。各メーカーが高級志向のセダンを投入する中で、アコードも「実用性に加えて高級感や先進性を打ち出す」モデルへと進化しました。
1985年に登場した3代目アコードは、従来の直線的なスタイルから大きく転換し、空力性能を意識したエアロダイナミクスデザインを採用。流れるようなシルエットは都会的で洗練され、フロントまわりはスリムでスポーティな雰囲気を演出。ファミリーカーでありながら「格好いい車」として若年層からも注目を集めた一台です。
内装も大幅に上質化され、ソフトパッドや木目調パネルを採用。居住空間は「くつろげるリビング」のように快適性を追求し、従来のファミリーカーを超えた「上質な移動空間」へと進化しました。
エンジンは1.8Lから2.0Lクラスをラインアップし、燃費性能と力強さを両立。さらに4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用し、走行安定性と快適な乗り心地を実現しました。
安全性能の面でも進化し、衝突安全性を意識したボディ設計や先進的なブレーキシステムを導入。単に「走る」だけでなく、ドライバーと同乗者の安心感を重視する姿勢が強まったのが特徴です。
3代目アコードは、日本市場で「高級セダン」としての地位を固め、ファミリー層からビジネスユーザーまで幅広く支持されました。
一方、北米市場では洗練されたデザインと高性能が大きな話題となり、高い評価を獲得。販売台数を大きく伸ばし、アコードはトヨタ・カムリと並んで「信頼できる中型セダン」としての地位を確立しました。
3代目アコードは、「実用的なファミリーカー」から「高級感を備えたグローバルセダン」へと飛躍したモデルです。デザイン・性能・安全性のすべてを進化させ、アコードが世界市場で本格的に存在感を高める転換点となったモデルといえます。
4 走行性能と快適性が引き上げられた4代目アコード
1989年に登場した4代目アコードは、日本がバブル景気の絶頂を迎えていた時代の産物です。
経済が急成長する中で、人々の消費意識も大きく変化し、「より高級でスタイリッシュな車」に対するニーズが一気に高まりました。車はもはや移動手段にとどまらず、持つこと自体がステータスや豊かさの象徴とされる時代。ホンダはこうした社会の潮流を敏感に捉え、アコードをワンランク上の存在へと進化させました。
4代目アコードは、ボディサイズを拡大し、「コンパクトセダン」から「堂々とした中型セダン」へと変化を遂げます。外観は流れるようなフォルムとスポーティなスタイルを採用し、重厚感の中に俊敏さを感じさせるデザインに仕上げられています。
内装においても広々とした室内空間に加え、シートやインパネには上質な素材を採用。快適装備の充実によって「ファミリーカー以上、プレミアムセダン未満」という絶妙なポジションを確立しました。北米市場を強く意識して設計されたこともあり、全体的にグローバル基準の車格が感じられる一台でした。
先代に比べ、走行性能と快適性がさらに引き上げられた点も4代目アコードの特徴です。
エンジンは2.0L〜2.2Lクラスを中心に展開し、VTEC(可変バルブタイミング機構)を搭載したモデルも登場。高回転での力強さと低速域での燃費性能を両立させ、日常走行から高速道路まで幅広く対応できる性能を備えていました。
また、サスペンションには先代から続く4輪ダブルウィッシュボーンを改良して採用。スポーティで安定感のある走りと快適な乗り心地を両立させ、長距離移動でも疲れにくい設計となっていました。これにより「運転する楽しさ」と「同乗者の快適さ」を両立させることに成功しました。
4代目アコードの最大の成果は、北米市場での成功です。アメリカ市場では「信頼できるミッドサイズセダン」として高い人気を集め、販売台数は大きく伸びました。そしてついには「北米で最も売れた乗用車」の地位を獲得。
これは日本メーカーとして初めての快挙であり、ホンダのブランドを一気に世界的な存在へと押し上げました。
日本市場においても、スポーティさと快適性を兼ね備えたバランスの良さが評価され、役員用の社用車からファミリー層まで幅広く支持を集めました。
ホンダが世界市場で大きな存在感を示すきっかけとなった、歴史的なモデルといえるでしょう。
5 グローバル戦略モデルとして開発された5代目アコード
1990年代初頭、日本はバブル崩壊の影響で景気が冷え込みつつありました。しかし一方で、北米市場における日本車の人気は依然として拡大を続けていました。
信頼性が高く経済的で、かつ高品質な日本車は、アメリカのファミリー層にとって理想的な選択肢だったのです。
ホンダはこうした状況を踏まえ、5代目アコードを「グローバル戦略モデル」として開発しました。特に北米市場での競争力強化を意識し従来よりも大きく、より力強い存在感を持つセダンとして誕生させました。
1993年に登場した5代目は、ボディサイズを先代からさらに拡大し堂々とした中型セダンのスタイルを確立。外観は流麗なラインを持ちながら、落ち着きと重厚感を兼ね備えたデザインとなり、ファミリーカーでありながらも「高級感ある車」として存在感を示しました。
内装面も、本革シートや木目調パネルなど高級感のある素材を多用。インテリア全体はまるで上級モデルを思わせる仕上がりで、ファミリー層だけでなく上質さを求めるユーザーにもアピール。
ただし、日本市場では「サイズが大きすぎる」との声もありましたが、広大な道路環境を持つ北米ではむしろ歓迎され、ファミリーカーとしての評価を一層高めました。
5代目アコードの最大のトピックは、ホンダの代名詞ともいえる「VTECエンジン」の本格採用です。可変バルブ機構により、低回転域では燃費に優れ、高回転域では力強い加速を発揮。この技術は「燃費が良いのに走りが楽しい」という新しい価値をアコードにもたらしました。
さらに、シャシー剛性の強化や足回りの改良により、高速走行や長距離移動でも安定感のある走りを実現。オートマチックトランスミッションの制御も進化し、滑らかで快適な加速フィールを提供しました。結果として「家族が安心して乗れる快適性」と「ドライバーが楽しめる走行性能」を両立したモデルへと成長しました。
特に北米市場において、5代目アコードは大成功を収めました。広い室内空間、信頼性の高さ、そしてVTECによる力強い走りが高く評価され、「家族のためのベストセダン」として定着しました。アコードはこの世代で、世界中で「定番のファミリーカー」として認知されるようになり、ベストセラーカーとしてのブランドを不動のものにしました。
一方、日本市場では大型化に賛否があったものの、実直で安心感のある車として一定の支持を獲得し続けました。
5代目アコードは「信頼できるベストセラーカー」として世界的に定着し、ホンダのグローバルブランドを強固なものにしたのです。
6 安全性能と信頼性を重視した6代目アコード
1990年代後半の自動車市場は、大きな変革期を迎えていました。世界的にSUVやミニバンが人気を集め、従来のセダン市場は縮小傾向にあったのです。
その一方で、ユーザーからは「安心して家族で乗れる高品質なセダン」への需要が根強く存在していました。ホンダはそうしたニーズに応えるべく、アコードを「信頼性」と「安全性」を強く打ち出したモデルへと進化させました。
その象徴が1997年に登場した6代目アコードであり、この世代はホンダが独自に開発した衝突安全技術を初めて前面に掲げたモデルでした。
6代目は直線と曲線をバランス良く取り入れたシンプルかつ洗練されたスタイルを採用。派手さを抑え、落ち着きのある雰囲気を持つデザインは、幅広い年齢層から支持されました。
ボディサイズはさらに拡大し、車内空間には大きな余裕が生まれました。特に後部座席の居住性が向上し、ファミリーカーとしての快適性が飛躍的に高まりました。内装では静粛性やシートの設計が改善され、長時間ドライブでも疲れにくい「安心して乗れる空間」が実現されています。
6代目アコード最大の進化は、ホンダ独自の「Gコントロール(衝突安全設計ボディ)」の採用です。これは衝突時にボディが効率的に衝撃を吸収・分散し、キャビンへのダメージを最小限に抑える構造で、当時としては先進的な安全技術でした。
さらに、ABSやデュアルエアバッグの標準装備化が進み、安全性能は大きく引き上げられました。パワートレインは引き続きVTECエンジンを採用し、2.0L〜2.3Lクラスを中心に展開。パワーと燃費性能のバランスが取れ、日常使いから長距離走行まで安心してこなせる性能を実現しました。
6代目アコードは「安心」「快適」というコンセプトを前面に押し出したことで、特にファミリー層から高い評価を獲得。安全技術の進化は社会的にも注目され、アコードのブランド価値を押し上げる大きな要因となりました。
ただし、市場全体ではSUVやミニバンの人気が高まり、販売面では苦戦を強いられる側面もありました。それでも「信頼できる安全なセダン」という評価は揺るぎなく、この世代も多くの家庭で愛用されました。
7 世界戦略車として飛躍を遂げた7代目アコード
2000年代初頭、自動車市場はグローバル化が進み、セダン市場の競争はかつてないほど激化していきます。
トヨタ・カムリ、日産ティアナ、マツダ・アテンザなどライバルが続々と新型を投入し、ユーザーの選択肢が広がる中、ホンダはアコードを「世界戦略車」として進化させることを決断しました。
その戦略の特徴は、販売地域ごとにニーズに合わせたモデル展開です。欧州仕様はハンドリング性能を重視、北米仕様は大柄なボディで余裕を強調、日本仕様は都市部での使いやすさを配慮するなど、同じ「アコード」でありながら市場ごとに異なるキャラクターを持たせる柔軟な手法を取りました。
2002年に登場した7代目アコードは、先代の落ち着いた雰囲気から一転し、スポーティで力強い印象を前面に押し出しました。鋭いヘッドライトや張りのあるボディラインは若々しさと高級感を両立し、従来の「実用的なセダン」から「ドライバーが誇れるセダン」へと進化しました。
内装も質感が大きく向上し、特に運転席まわりはドライバーを包み込むようなコックピットデザインを採用。従来のファミリーカー的な雰囲気を脱し、運転そのものを楽しめる「ドライバーズセダン」としての個性を際立たせました。
パワートレインには、2.0L〜2.4Lクラスのi-VTECエンジンを搭載し、環境性能と高出力を高い次元で両立。北米仕様には3.0LのV6エンジンを搭載したグレードも用意され、余裕ある走りが魅力となりました。
また、シャシー剛性を高めたことで、高速域での安定性が飛躍的に向上。欧州仕様ではスポーティなサスペンションセッティングが施され、ドライバーから「日本車でありながら欧州車に匹敵するハンドリング性能を持つ」と高く評価されました。
安全性能も進化し、ABSやエアバッグに加えて横滑り防止装置(VSA)を導入。走りの楽しさと安心感を両立するセダンとして位置づけられました。
7代目アコードは、世界各地で異なる個性を発揮しながらも、共通して「高品質で信頼できるセダン」として評価されました。特に欧州ではBMW 3シリーズやアウディA4と比較されるほどハンドリング性能が称賛され、一方で北米では「家族が安心して乗れるファミリーカー」でありながら「運転が楽しいセダン」として人気を獲得しました。
日本市場ではセダン需要がやや縮小する中でも、スポーティで上質なスタイルが評価され、カーマニア層から根強い支持を集めた一台です。
8 北米を主戦場とした8代目アコード
2000年代後半、自動車業界は大きな転換点を迎えていました。世界的に環境規制が強化され、燃費性能や排ガス対策がメーカーに強く求められるようになった一方で、北米市場では「大きくて快適なセダン」への需要が根強く残っていました。
こうした背景のもと、ホンダはアコードを北米市場に寄せていきます。従来以上にボディを拡大し、「堂々たる存在感」と「環境技術の進化」を両立させたのが2008年に登場した8代目モデルです。
8代目アコードは、全長・全幅ともに大きくなり、ほぼフルサイズセダンに近いスケールを獲得しました。外観は直線を基調にした力強いプロポーションで、重厚感と高級感を兼ね備えたデザイン。
インテリアは「広さ」を強調した設計が特徴で、とくに後部座席の居住性はクラストップクラス。ゆとりあるシートや快適なレイアウトによって、長距離移動でもリラックスできる空間が魅力です。
ただし、日本市場では「大きすぎる」「都市部で扱いづらい」という声も多く、従来からのアコードファンの中には戸惑いを覚えるユーザーも少なくありませんでした。
パワートレインは、2.4L i-VTECに加え、上位グレードには3.5L V6エンジンを搭載。V6モデルには気筒休止システム(VCM)が導入され、巡航時に一部シリンダーを休止させることで燃費を改善するなど、環境性能と動力性能のバランスを追求しました。
さらに、電子制御式ATやサスペンションの改良により、大型化したにもかかわらずスムーズで快適な走行フィーリングを実現。重量増を感じさせない操縦性が評価され、「大きいけれど快適に走れるセダン」としての立ち位置を確立しました。
北米では「広くて快適なファミリーセダン」として人気を維持し、信頼できる定番車種としての地位を確固たるものにしました。一方、日本市場では「サイズが合わない」との理由から販売が低迷。ミドルサイズセダンに求められる「扱いやすさ」との乖離が明確に表れた世代でもありました。
一方で欧州では、アキュラブランド向け展開も含め「スポーティで上質なセダン」として一定の評価を獲得。グローバル戦略車としての多面的な役割を担ったモデルといえます。
9 環境性能で次世代へ踏み出した9代目アコード
2010年代前半、自動車業界はハイブリッドやダウンサイジングターボといった「環境対応車」が主役へと移り変わる時代を迎えていました。燃費性能や低排出ガスが重視され、ユーザーは単なる快適性や走行性能だけでなく「エコであること」を強く求めるようになりました。
ホンダはこうした潮流を捉え、9代目アコードを「環境性能の強化」をテーマに2013年に発表。従来の「安心して走れる高品質セダン」というイメージに加え、「先進的でエコなセダン」という新しい価値を打ち出しました。
外観は先代の大柄なボディをベースにしながらも、直線と曲線を巧みに組み合わせた精悍なデザインに刷新。シャープなフロントマスクや洗練されたサイドラインが、上質で都会的な印象を与えます。
特にLEDヘッドライトを採用したグレードは「未来感」を強く演出し、当時のトレンドを牽引。内装ではデュアルスクリーンを採用するなどデジタル化が進み、操作性と高級感を両立しました。インテリア全体が「ドライバーに寄り添う先進的な空間」として進化しています。
9代目最大の革新は、ホンダ独自のハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」の採用でした。電動走行とエンジン走行を状況に応じて自動で切り替えることで、クラストップレベルの燃費性能を実現。走り出しや街乗りではEVとして静かに走行し、高速域ではエンジンの力を効率的に活用するなど、次世代のセダン像を実現しました。
ガソリンモデルも健在で、2.4L直噴エンジン+CVTを組み合わせた仕様は扱いやすさと快適な走りを提供。ユーザーの用途や嗜好に応じた幅広い選択肢が用意されました。
また、安全技術においても進化を遂げ、後のHonda SENSINGへとつながる機能が一部導入。自動ブレーキや車線維持支援システムなど、先進安全装備を取り入れたことは「ただのエコカー」ではなく「安心して選べる未来型セダン」としての存在感を強めました。
日本市場では、ハイブリッド専用車として展開されたことが大きな話題となりました。「環境にやさしい高級セダン」という新しいポジションを確立し、法人需要から個人ユーザーまで幅広い層に支持されました。
北米市場では従来どおりガソリンモデルも併売され、広い室内と信頼性を兼ね備えたファミリーカーとして高い評価を維持。世界的に見ても「環境性能」「快適性」「実用性」を高次元で両立した完成度の高いセダンと評価された一台です。
まさに「未来のセダン像」を具体的に提示したモデルであり、アコードの歴史の中でも大きな転換点となった世代といえるでしょう。
10 スポーティと先進性を融合した10代目アコード
2010年代後半、自動車業界は「自動運転技術」「コネクテッド機能」「電動化」といった新潮流に突入していました。単に移動の道具ではなく、安心・安全・快適をトータルで提供するモビリティが求められるようになったのです。
ホンダはこの変化を捉え、10代目アコードを「次世代グローバルセダン」として2017年に発表。従来の信頼性や実用性に加え、スポーティな走りと先進装備を融合させた、まったく新しいアコード像を提示しました。
10代目は歴代アコードの中でも最も大きなイメージチェンジを遂げました。全体をワイド&ローに仕立てた低重心フォルムは、セダンでありながらクーペ的な流麗さを感じさせ、スポーティさを強調しています。
フロントは存在感のある大型グリルとシャープなLEDヘッドライトを組み合わせ、力強さと高級感を両立。サイドビューは長いホイールベースと滑らかなルーフラインが特徴で、走りのダイナミズムを予感させるデザインとなっています。
インテリアは水平基調のデザインで見通しが良く、シンプルながら質感の高い空間を実現。タッチパネル式ディスプレイや最新のインフォテインメントシステムを採用し、Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応するなど、コネクテッド時代のニーズに応えました。
10代目アコードの大きな革新は、先進安全運転支援システム「Honda SENSING」の全車標準化です。衝突軽減ブレーキ、アダプティブクルーズコントロール、車線維持支援システムなどを搭載し、安心して長距離を走れるセダンへと進化しました。
パワートレインは1.5L直噴ターボエンジンと2.0Lハイブリッドの2本柱。ターボエンジンは小排気量ながらもトルクフルで、軽快かつ力強い走りを実現。ハイブリッドモデルは、モーター主体のスムーズな加速と高い静粛性が特徴で、都市部でも高速道路でも快適に走れる性能を備えています。
さらにプラットフォームも刷新され、軽量化と剛性強化を両立。ハンドリング性能と乗り心地のバランスが向上し、従来の「信頼できるセダン」から「走りを楽しめるセダン」へと進化しました。
北米市場では「スポーティで先進的なセダン」として高評価を獲得。従来のミドルエイジ層に加え、若い世代からの支持も広がり、数々の自動車専門誌で「ベスト・セダン」に選出されました。
日本市場では販売規模は限定的でしたが、ハイブリッドモデルを中心に展開。環境性能と快適性を重視した「知的で洗練された大人のセダン」としてビジネスパーソンを中心に一定の人気を得ました。
11 電動化時代を切り拓いた11代目アコード
2020年代、自動車業界は「電動化」「デジタル化」「カーボンニュートラル」という3つのキーワードを軸に大きな変革期を迎えました。
各国で厳格化される排ガス規制、EV普及に向けた政策、そしてコネクテッド技術の進展により、自動車は単なる移動の道具から「持続可能でスマートな移動手段」へと変貌を迫られています。
ホンダは、2003年に11代目アコードを「次世代ハイブリッドセダン」として刷新しました。従来の快適性や信頼性を保ちつつ、環境性能とデジタル技術を融合させた点が、この世代の最大の特徴です。
外観は、シンプルさと上質さを両立させたクリーンなデザインへ進化しました。先代のスポーティなDNAを受け継ぎながらも、直線を基調とした伸びやかなスタイルにより「洗練された大人のセダン」という印象を強調しています。
薄型LEDヘッドライトとワイドグリルが組み合わさったフロントフェイスは精悍でありつつ、都会的で上品。サイドビューの伸びやかなキャラクターラインは、流れるようなシルエットを形成し、走りの安定感を予感させます。
インテリアは水平基調のダッシュボードを採用し、視界の広さと安心感を演出。中央には大型タッチスクリーンを配置し、物理スイッチとバランスを取った直感的な操作系を実現しています。これにより、従来以上に「モダンかつ機能的」な室内空間となりました。
11代目の心臓部となるのは、最新世代のe:HEV(2モーターハイブリッドシステム)です。走行状況に応じてEV走行・ハイブリッド走行・エンジン走行をシームレスに切り替えることで、静粛性と力強さを高次元で両立。都市部では静かで滑らかに、長距離走行では余裕ある加速を提供し、シーンを選ばず快適なドライビングを実現します。
また、安全技術「Honda SENSING」も進化。アダプティブクルーズコントロールはより自然な制御を行い、車線維持支援や緊急時操舵支援の精度も向上。これにより、ドライバーは「守られている安心感」を常に実感できます。
さらに、コネクテッド機能も大幅に強化されました。OTA(Over The Air)によるソフトウェア更新に対応し、車両を常に最新の状態に保つことが可能。スマートフォン連携機能も拡充され、カーライフ全体をデジタルでサポートする「次世代のセダン」として完成度を高めています。
北米市場では、従来からの「信頼できるファミリーセダン」としての評価に加え、「洗練されたハイブリッドセダン」として新しい顧客層を獲得しました。特に高い燃費性能と先進装備が評価され、ビジネスパーソンからファミリー層まで幅広く支持を集めています。
アコードが示した進化と普遍の価値
ホンダ・アコードは、約半世紀にわたり「時代を映すセダン」として進化を続けてきました。環境性能、安全性能、デザイン、サイズといった要素が変化しても、「人々の生活に寄り添い、走る楽しさを届ける」という姿勢は揺るぎません。
アコードは社会背景やユーザーニーズに合わせて柔軟に姿を変えながらも、根底には「人と車の調和」という理念が脈々と流れています。
これからもアコードは、新しい技術と共に次の時代を切り拓き、世界中の人々に「安心と喜び」を提供し続けるでしょう。
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