2024年7月5日
日産「180SX」における10年の軌跡。「初期型」「中期型」「後期型」の変遷や魅力について
昭和から平成に年号が切り替わった1989年。
当時は、日本車が海外ラリーやサーキットレースで活躍していたことから、スポーツカーが若い世代を中心に人気を集めていました。
トヨタのセリカ、ホンダのプレリュードなどが高い人気を誇る中、日産が一台のモデルを発表。それが180SXです。
同社が手掛けたシルビアの派生モデルで、1999年まで販売された一台です。そんな180SXは、「初期型」「中期型」「後期型」の3つに分類されます。
どのような変遷を180SXは辿ってきたのでしょうか。今回は日産が開発した180SXにフォーカスし、その魅力について深掘りします。
目次
1 日産が手掛けた「180SX」の概要
1989年にデビューを果たし、1999年まで販売された180SX。
日産が開発したモデルで、1989年に登場した「初期型」、1991年にマイナーチェンジされた「中期型」、1996年にビッグマイナーチェンジされた「後期型」に分類されます。
車名の「180」は、初期型が発売される際に搭載されたCA18DET型エンジンの排気量1,800ccを表しており、「SX」は日産の輸出用ミドルサイズ・スポーティークーペを意味しています。
「ワンエイティ」や「ワンパチ」、「イッパチ」、「ワンチ」などの愛称でも親しまれている一台です。
発売当時、量産車の駆動方式はフロントエンジン、フロントドライブ(FFレイアウト)が主流でした。
これは、走行性能よりも居住性や快適性を重視する傾向が強い傾向にあったためですが、スポーティモデルも例外ではありません。
現在でもそのトレンド傾向は強く、市販車の多くに採用されているのがFFレイアウトです。ただ、180SXに採用されたのはフロントエンジン、リアドライブ方式(FRレイアウト)でした。
走りを追求したことがFRレイアウトを採用した理由の一つですが、「シルビア」も深く関係しています。
前述した通り、180SXはシルビアの派生モデル。エンジンやトランスミッション、サスペンションなどの基本構造は1988年に登場した5代目にあたる「S13型シルビア」を踏襲しているのです。
180SXは時代のトレンドとは逆行していたとも捉えられますが、居住性や快適性よりも走りの質感を求めたことで人気を博したモデルです。
FRレイアウトを採用しているのは、日産が開発した人気モデル「スカイライン」や「ローレル」、ドイツ自動車メーカーBMWが手掛けた「3シリーズ」といったモデルに採用されています。
2 FRスポーティモデル「180SX」が辿った変遷
人気モデル「シルビア」の派生モデルとして登場した180SXですが、どのような変遷を辿ってきたのでしょうか。
ここでは「初期型」「中期型」「後期型」別に、180SXの変遷を見ていきましょう。
2-1 S13型シルビアから派生し、1989年に登場した初期型
1989年に、当時デートカーとして人気を博したS13型シルビアの派生モデルとしてデビューを果たしたのが初期型。
エンジンやトランスミッション、サスペンションなどはS13型シルビアと共通パーツですが、違いはファストバック形状のボディデザインです。また、角型2灯式のリトラクタブルヘッドライトを採用していることも大きな特徴の一つ。
FR方式を採用し、「TYPE I」と「TYPE II」のグレードをラインナップ。「TYPE I」は競技用のベース車としての位置付けで、スピーカーやパワーウィンドウが搭載されていません。エンジンはCA18DETを搭載し、全グレードで統一されていました。
発売の翌年には、限定仕様車「Type II レザーセレクション」を発表。
これは500台限定モデルで、シートが全て革張りで本革ステアリング、シフトノブ、エアロパーツ、フッ素コーティング塗装のスーパーレッドを採用。アルミホイールには「スカイライン」や「ローレル」、「セフィーロ」との共通パーツを装備しています。
フロントグリルが特徴的なモデルでもあり、海外では「pignose(豚鼻)」と呼ばれることも。
1991年まで販売された初期型はマイナーチェンジされ、中期型へ移行していきます。
2-2 搭載エンジンを変更し排気量が1,800ccから2,000ccへと向上した中期型
1991年にマイナーチェンジされ登場したのが中期型。
大きく変更されたのは搭載エンジンです。
先代のCA18DET型からSR20DET型2,000 ccDOHCターボエンジンを導入。車名の由来でもあるエンジンの排気量をアップさせていますが、180SXのまま継続されています。
エンジンを変更したことで、前期型に比べ最高出力が205psにパワーアップ。180SXの人気はさらに加速していきます。
またフロントバンパーのデザインが大きく変わり、ダミーのグリルが廃止されエンジンフードとバンパーの段差がなくなったことでスタイリッシュな印象に。
グレードは先代から変更はありませんでしたが、1992年に「TYPE III」を追加。新型のデジタル表示式オートエアコンは、「TYPE III」のみ標準装備されました。
そして、1994年にはグレード名が一新されます。「TYPE I」は廃止され、「TYPE II」は「TYPE R」に、「TYPE III」は「TYPE X」へと変更されています。
その翌年には、運転席SRSエアバッグが標準装備されるなど安全性も向上。
中期型は1996年まで提供され、最後のモデルとなる後期型へとバトンを繋ぎます。
2-3 大幅なエクステリアを変更し、最後のモデルとなった後期型
1996年、中期型からビッグマイナーチェンジを実施した後期型が登場。
エクステリアが大幅変更され、フロントバンパーのデザインやリアバンパーの形状が更新。ホイールは、スカイラインと共通のデザインを採用するなど、それまでとは大きく変更されています。
またリアコンビネーションランプが丸型4灯風になり、大きなリアウィングが搭載されたことも特徴です。
グレードは「TYPE S」が追加され、SR20DE型2,000 cc自然吸気(NA)エンジンを搭載。1997年には「TYPE S」をベースに装備が充実された「TYPE G」を追加しています。
FRスポーツカーとして名を馳せた180SXですが、約10年間の歴史に幕を下ろし1999年に販売を終了しています。
3 「240SX」や「200SX」との違いは日本仕様か海外仕様か
180SXが人気を集めていたのは日本だけではありません。
北米市場にも輸出されており、車名は「240SX」。このモデルの車名の由来は180SX同様に、搭載エンジンの総排気量2,400ccから名付けられました。24oSXは、1989年から1999年まで2世代に渡り販売されたモデルです。
また東南アジアやオーストラリア向けに輸出されたモデルには、総排気量2,000ccのエンジンを搭載していたことから「200SX」と名付けられています。
240SXほどの力強さはなかったものの、扱いやすい特性と燃費の良さから人気を集めた一台です。
海外では排気量の大きなエンジンの需要が高かかったことから、日本仕様の1,800ccではなく、排気量の大きなエンジンが採用されたというわけです。
それぞれの市場のニーズに合わせた仕様で販売された180SXは、日本のみならず車名を変え海外でも人気を集めました。
マイナーチェンジを繰り返し紡いできた180SXの系譜
1989年に日産が発表した180SX。FRスポーティモデルで、特に当時の若い世代を中心に支持された一台です。
現在ではあまり見かけることがなくなった、リトラクタブルヘッドライトを採用した初期型を皮切りに、搭載エンジンを変更し排気量を向上させた中期型、そして大幅なエクステリアを変更した後期型へと時代を紡いできました。
180SXの魅力は、日本国内だけに留まらず、北米市場では「240SX」。東南アジア・オーストラリア市場では「200SX」の名で親しまれ、世界中のファンを魅了し、海外ユーザーも認めたモデルでもあります。
180SXの系譜は残念ながら途絶えてはいますが、代表的なスポーツカーの一つとして、その名を歴史に刻み込みました。販売期間は約10年と流通数は少ないものの、現在はドリ車やチューニング車としても人気が高く、中古市場でも多く取り引きされています。
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