
2025年8月15日
スバル・インプレッサ|初代GC8から最新モデルまでの進化と魅力
インプレッサは、1992年の登場以来、30年以上にわたってスバルの主力車種として進化を続けてきたコンパクトカーです。
セダンやハッチバックといった実用的なパッケージに、フルタイムAWD(常時4輪駆動)や水平対向エンジンといったスバル独自のメカニズムを組み合わせることで、他のライバル車にはない個性と実力を確立してきました。
特にスポーツモデルである「WRX」「WRX STI」は、世界ラリー選手権(WRC)での活躍を背景に、走行性能・耐久性・制御技術の高さが高く評価され、スポーツセダンの代名詞的存在となっています。
一方で、一般グレードのインプレッサは、燃費や快適性、安全性能を重視した実用車として進化を続け、国内外で多くのユーザーに選ばれてきました。さらに2011年以降はWRXが独立車種化され、インプレッサは「日常性と安心感を備えた車」としての進化路線をたどるようになります。
今回は初代GC8型から最新の6代目モデルまで、インプレッサの歴代モデルについて、各世代の特徴や技術革新、デザインの変化、そしてWRXとの関係についても丁寧にひもといていきます。
目次
1 GC8の衝撃とWRC伝説の幕開けとなった「初代インプレッサ」
1992年、スバルは新しい小型車として初代インプレッサ(GC/GF型)を市場に投入しました。
当時、上級車種であるレガシィRSが世界ラリー選手権(WRC)で頭角を現していた中、より軽量かつコンパクトなモデルでWRC制覇を目指すべく、実用車としての役割と同時に“ラリーベース車”としての素養を併せ持つ車として開発されました。
ボディタイプはセダン(GC型)とワゴン(GF型)の2種類が用意され、一般ユーザーに向けたNA(自然吸気)モデルから、スポーツ志向のターボモデル、そしてのちの名車「WRX」「WRX STI」へと続く多彩なバリエーションが展開されました。
1-1 インプレッサの代名詞「EJ20ターボ」と「フルタイム4WD」の衝撃
インプレッサの代名詞ともいえるのが、スバル伝統の水平対向エンジン「EJ20型」と、シンメトリカルAWDシステムの組み合わせです。特にターボ付きのWRX系グレードは、2.0Lターボで240psを超える出力を発揮し、0-100km/h加速は5秒台という驚異的なパフォーマンスを誇りました。
この時代、同クラスの国産コンパクトカーが100〜150ps前後の出力だった中で、インプレッサWRXは完全に別格の存在でした。
ラリー競技のためのホモロゲーションモデルとして開発されていた背景もあり、強化サスペンション、大型インタークーラー、ビスカスLSD、4輪ディスクブレーキなど、当時としては先進的な装備が惜しみなく投入されていました。
1-2 WRX STIの誕生とWRC伝説の幕開け
1994年には、スバルテクニカインターナショナル(STI)が手がける公式チューニングモデル「インプレッサ WRX STI」が登場します。
当モデルは軽量ボディに加え、エンジン内部のバランス取り、クロスレシオ6速MT、強化クラッチなどを装備した“公道を走れる競技車”ともいえる存在でした。
そしてこのWRX STIは、1995年にWRCマニュファクチャラーズタイトルを初獲得。名ドライバーであるコリン・マクレーの活躍とともに、GC8は“スバル=ラリー”という世界的イメージを確立する象徴的な存在となりました。特にブルーのボディにゴールドホイールの“555カラー”は、多くのラリーファンにとって今なお語り継がれています。
1-3 特別仕様車と後期モデルの完成度
初代GC8は、前期・中期・後期と細かな改良が加えられ、1998年の「バージョン6」が最終型となります。このバージョン6では、エアロや足回りの熟成に加え、内装も上質化され、まさに「GC8完成形」として高い評価を受けています。
その間にも「RAバージョン」「リミテッド」「22B-STiバージョン(限定400台)」などの希少モデルが多数登場し、中でも22Bは今や海外オークションで数千万円で取引されるプレミアモデルに成長しました。
2 賛否が分かれたデザイン、一方で走行性能は大幅に進化を遂げた「2代目インプレッサ」
2000年にフルモデルチェンジされた2代目インプレッサは、GD/GG型として登場しました。
話題となったのが、いわゆる丸目ヘッドライトのデザインです。流麗で個性的なフロントフェイスは、一部からは先進的と評価される一方で、初代GC8のシャープなイメージを好むファンからは賛否が分かれる結果となりました。
しかし、デザインに対する評価とは裏腹に、走行性能は大幅に進化。ボディ剛性の強化、サスペンションジオメトリの見直し、そして電子制御技術の導入により、乗り味と安全性が格段に高まりました。
2-1 WRX STIの進化とGDB型の系譜
2代目でも最注目はやはり「WRX STI」の存在です。型式は“GDB”となり、歴代の中でも特にスポーツ性能に磨きがかかった世代として知られています。
主な進化ポイントとしては以下の通りです。
-
6速マニュアルトランスミッション(STI専用):クロスレシオでシフトフィールも向上。耐久性と操作性の両立を実現
-
DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ):センターデフのロック率をドライバーが任意に調整でき、路面状況に応じたトラクションコントロールが可能
-
インタークーラーウォータースプレー:手動スイッチ操作式の吸気温度を抑えるための水冷スプレー
また、エンジンは改良されたEJ20ターボを搭載し、標準で280psを発揮。応答性の高いターボと堅牢な駆動系が組み合わさり、サーキットから雪道まで高い信頼性を見せました。
2-2 フェイスリフトと「涙目」「鷹目」への進化
2代目インプレッサは、途中で2回の大きなマイナーチェンジを経ています。これにより、外観は大きく印象を変えました。
2002年に丸目の反動を受けて涙目へとデザインを変更し、よりシャープで精悍な印象に。その後2004年からは鷹目へと変更。ヘッドライトが切れ長になり、“精悍な猛禽類”を彷彿とさせるフロントマスクに進化しました。
この“3フェイス展開”は2代目インプレッサ最大の特徴ともいえ、それぞれにファンが存在します。特に鷹目の最終モデル(GDB-F型)は、走行性能・信頼性・デザインのバランスが取れており、「完成形のSTI」と評価されることもあります。
2-3 モータースポーツと北米市場での存在感
2代目インプレッサは、WRCでも引き続き活躍。ペター・ソルベルグのドライブにより2003年にはドライバーズタイトルを獲得し、再び注目を集めました。
また、北米では「インプレッサWRX」がマニュアルスポーツカーの定番として浸透し、“Affordable AWD Turbo”として高評価を得ました。アメリカ市場においてスバルブランドの地位を押し上げた立役者と言っても過言ではありません。
3 新プラットフォーム採用と、ハッチバック専用WRX STIが衝撃を与えた「3代目インプレッサ」
2007年にフルモデルチェンジを果たした3代目インプレッサは、GH(一般モデル)およびGR(WRX STI)の型式で展開されました。最大の話題となったのが、「WRX STIのボディ形状がハッチバック専用になった」という点です。
これまでセダンを基本としてきたインプレッサSTIにおいて、より重心を低く、空力を意識した5ドアハッチバックスタイルへの転換は、モータースポーツを見据えた戦略的な判断でした。しかし、従来のファンからは「らしさが失われた」との意見も多く、賛否両論を巻き起こすこととなります。
一方、一般グレードのGH型インプレッサは、質感の高い内装やアイサイト以前の安全装備の導入など、日常性を重視した実用モデルとして完成度を高めていました。
3-1 STIのコンセプト変化とGRBの個性
GRB型WRX STIは、よりグローバル市場を見据えて開発されたモデルです。ボディサイズは従来型よりもひと回り大きくなり、リアサスペンションもダブルウィッシュボーン式へと刷新されるなど、車両全体が「より高い走行安定性」を志向した設計となっています。
エンジンは、国内仕様がEJ20ターボ、海外仕様では排気量の大きいEJ25ターボを搭載。トランスミッションは6速MTに加え、センターデフを電子制御するDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)を採用し、駆動力の最適配分を実現しています。
このGRB型では、パワー性能に加えて快適性や静粛性、そしてハンドリング性能とのバランスにも重きが置かれており、「ハイパフォーマンスツアラー」としての個性がより強調されています。かつてのGC型やGD型が「ラリーマシンの公道仕様」という性格を色濃く残していたのに対し、GRB型はその延長線上にありながらも、一線を画す洗練されたキャラクターを備えたモデルといえるでしょう。
3-2 特別仕様車とGVB型セダンの復活
後期型では、一部でセダンボディ(GVB)が復活。ユーザーの強い要望に応える形で2010年から販売が開始され、より鋭いハンドリングと直進安定性を両立するモデルとして再注目されました。
さらに、S203やR205、A-Line(5速AT搭載モデル)といったバリエーションも多数展開され、スポーツカーとしての多様なニーズに応えた世代でもあります。
4 インプレッサとWRXがついに分離独立された「4代目インプレッサ」
2011年に登場した4代目インプレッサ(型式:GP=ハッチバック、GJ=セダン)は、それまで同一車種内に存在していた「スポーツモデル(WRX STI)」との明確な線引きがなされた世代です。
従来、STIやWRXといった高性能モデルは、あくまでインプレッサのスポーツグレードという位置付けでしたが、4代目からは「インプレッサは実用車」「WRXはスポーツセダン」としてそれぞれ独立した道を歩むことになります。
その結果、インプレッサはより広いユーザー層をターゲットにしたコンパクトカーとして進化し、安全性や快適性、燃費性能などが重視されるようになりました。
4代目インプレッサでは、新開発の1.6Lおよび2.0L自然吸気水平対向エンジン(FB16/FB20型)を採用。これにリニアトロニックCVTを組み合わせることで、従来モデルに比べて燃費性能が大幅に向上し、1.6LモデルではJC08モード燃費で約20km/Lを記録しました。
また同世代からは、スバル独自の運転支援システム「アイサイト(ver.2)」が本格的に導入され、衝突被害軽減ブレーキや全車速追従機能付きクルーズコントロールなど、先進的な安全技術がいち早く普及型コンパクトカーに搭載されました。さらに、VDC(車両挙動安定制御装置)や7つのエアバッグも標準装備されるなど、安全性能の高さが国内外で高く評価されました。
インテリア面では、質感の高いソフトパッドの採用や視認性に優れたインパネレイアウトによって、クラスを超えた上質さが演出されています。
こうした商品力の進化により、インプレッサは単なる“ラリーベース車の系譜”というイメージを超え、「高品質で安全な日常の足」として幅広い層に支持されるモデルへと成長しました。
2013年には、インプレッサスポーツをベースとしたスバル初のハイブリッドモデル「インプレッサスポーツ ハイブリッド」が登場。2.0Lエンジンにモーターアシストを組み合わせたシステムで、燃費と走行性能のバランスを追求しています。
このモデルは、後に登場するXVハイブリッドの礎にもなっており、スバルが電動化時代に向けた技術蓄積を始めた証でもあります。
なお4代目インプレッサの時代には、WRX STIは「VAB型」として独立展開されることになります。
ボディも専用設計とされ、インプレッサとは異なる進化の道をたどるようになりますが、ユーザーの中では依然として「インプレッサSTI」と呼ばれることも多く、ブランドイメージの強さが際立っていました。
5 新プラットフォーム「SGP」で世界戦略車へ進化を遂げた「5代目インプレッサ」
2016年に登場した5代目インプレッサ(GT=スポーツ/GK=G4セダン)は、スバルが長年にわたり開発を進めてきた新世代プラットフォーム「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」を初採用したモデルです。
SGPは「すべてのスバル車に共通する設計思想」を目指した骨格構造であり、このプラットフォームの導入によりインプレッサは以下のような進化を遂げました。
-
ボディ剛性の向上:従来比で約70〜100%増
-
重心の低下と前後重量バランスの最適化
-
振動吸収性の向上と静粛性の強化
-
ステアリング応答性の改善と直進安定性の向上
結果として、コンパクトカーでありながら「欧州車のような乗り味」「クラスを超えた剛性感」といった評価を得ることになります。
5-1 アイサイトの進化と最高水準の安全性
5代目では、「アイサイトver.3」を全車標準装備とし、安全性においてもクラス最高水準を確保しました。さらに2018年には、歩行者エアバッグを国産車で初めて全車標準装備化し、万が一の事故にも配慮する体制が整えられています。
スバル独自の先進運転支援技術が、もはやプレミアムカーだけのものではないという事実を、インプレッサは広く世に示しました。
5-2 パワートレインの熟成と“走り”の継承
搭載されるエンジンはFB16/FB20の改良型で、組み合わせられるリニアトロニックCVTも制御が洗練され、発進や加速時のフィーリングが向上。MTの設定は廃止されたものの、AWDとシンメトリカルレイアウトは全車に継続採用され、スバルらしい走行安定性は健在です。
一部グレードでは18インチタイヤ+スポーツサスペンションが装備され、従来のスポーティな印象も残されています。
5-3 「質実剛健」という価値観の再確認
5代目インプレッサは、「刺激的な走り」よりも「長く付き合える安心感」を重視した車づくりが特徴です。外観は控えめながらも力強さを感じさせるデザインが採用され、内装においても質感にこだわった仕上がりで、欧州のコンパクトカーと比べても遜色のない完成度を実現しています。
居住性にも配慮されており、大人5人が無理なく乗車できるゆとりある室内空間と、実用的な荷室容量を兼ね備えている点も魅力のひとつ。
こうしたバランスの取れた設計により、都市部での通勤から長距離ドライブ、さらには雪道走行まで、あらゆるシーンに対応できるオールラウンドなパッケージングが評価されました。
派手さこそないものの、「信頼できる一台」として、多くのユーザーから安定した支持を獲得したモデルです。
6 次世代コネクテッドカーとしての革新した「6代目インプレッサ」
2023年に登場した6代目インプレッサは、スバルのデザインフィロソフィー「BOLDER(大胆)」を反映したエクステリアが特徴。従来よりも一層シャープで力強い造形となり、ひと目で「走りのスバル」と分かる存在感を放っています。
ボディタイプは5ドアハッチバック「スポーツ」のみに絞られ、セダン(G4)は廃止。これは市場ニーズの変化を反映した戦略的判断であり、グローバル市場での汎用性や実用性を重視した結果といえます。
6-1 e-BOXER搭載とハンドリング性能の進化
6-2 スマート化・コネクテッド化の推進
インフォテインメント面では、11.6インチの縦型センターインフォメーションディスプレイを採用。
Apple CarPlay/Android Autoのワイヤレス対応に加え、車両設定やナビ操作、エアコン制御までもタッチ操作で一元管理できるようになりました。
また、「SUBARU STARLINK」によるコネクテッドサービスが搭載され、緊急通報や遠隔操作、盗難追跡といった次世代機能も利用可能です。自動車との新たな関係性を提案するモデルといえるでしょう。
インプレッサが築いてきた価値と未来展望
1992年に初代が誕生して以来、インプレッサは常に「スバルらしさ」の象徴として進化を遂げてきました。その核となるのは、水平対向エンジン×シンメトリカルAWDという独自のメカニズムに裏打ちされた操縦安定性、そしてドライバーとの対話を重視する“実直な走り”です。
加えて、ラリーという極限環境で培った耐久性・信頼性も、多くのユーザーにとっての信頼の源となりました。
とくにWRX/STIといった高性能モデルは、モータースポーツにおいても実績を重ね、「走りのスバル」をグローバルに知らしめた存在といえます。
インプレッサは単なるスポーツモデルではなく、日常使いを意識したパッケージングにも優れてきました。コンパクトな車体サイズに広い室内空間、積載性、扱いやすさ、そして高い安全性能。
これらを兼ね備えることで、20代の初めての愛車から、ファミリー層のセカンドカー、雪国での頼れる一台として、あらゆるライフステージに寄り添ってきたのです。
特に5代目以降では、先進安全装備「アイサイト」を全車標準装備とし、国産コンパクトカーの安全基準を一段引き上げる存在となりました。
今も昔も変わらず、「走る楽しさ」と「安心して使える実用性」を両立したいと願うドライバーにとって、インプレッサは確かな選択肢といえます。
WEBでカンタン無料査定!
旧車の買取なら、ヴァ・ベーネにお任せ!
業歴35年は信頼の証!お急ぎの方はお電話でも承っております。