2022年6月2日
車に欠かせないクーラント液とは?補充や交換の手順や漏れた時の注意点
車にはエンジンを冷却する役割を担う「クーラント液」が循環しており、私たちの見えないところで大活躍してくれています。
愛車と末長く過ごすためには、このクーラント液の定期的な点検や、補充が欠かせません。クーラント液が不足しているとエンジンが加熱してオーバーヒートしてしまうかもしれないためです。
そして万が一クーラント液が漏れ出てしまっている状態で走行してしまうと、人命に関わる大事故に繋がるかもしれないのです。
普段あまり意識することがないクーラント液ですが、その役割を知ればきっと大切さが理解できるはず。
そこで今回はクーラント液についての基本的な知識はもちろん、その種類や取り扱う際の注意点、補充の仕方、漏れてしまっていた場合の対処法など、ドライバーなら必ず頭の片隅に留めておきたい内容を記載していきます。
目次
1 エンジンを冷却してくれるクーラント液(冷却水)とは?
クーラント液は、エンジンを冷却するための液体のことを指します。
エンジンの稼働中は実は車の内側では絶え間なく爆発が起きており、非常に高温。そのまま加熱し続けるとオーバーヒートしてしまい、エンジンが破損してしまいます。
運転中にエンジンが破損してしまうと大事故に繋がってしまう恐れも…
そのような事態を防ぐために、車には不凍液のクーラント(ロング・ライフ・クーラント)という液体が循環しています。
クーラント液はエンジン内部から熱を奪いながらくるくると内部を循環し、車の前部に設置されたラジエーターで再度冷却され、再びエンジンに戻ってエンジンを冷却します。
このクーラントがラジエーターとエンジン内部を循環することで、エンジンが高温になり過ぎるのを防止してくれているんです。
クーラント液は「不凍液」という特性上、冬場でも凍結しません。
さらに長期間使用してもエンジン内部に錆や腐食を発生させないこともクーラント液に求められる性能です。そのため水は使用されず、凍結しにくい特性があるグリコール系溶媒に防錆剤などの添加剤を加えた液体がエンジンの冷却水として活用されています。
2 リザーバータンク内のクーラント液は定期的に確認を
見えないところで非常に大切な働きをしてくれているクーラント液。もし無くなってしまうと人命にも関わりかねません。漏れや故障などが発生していなかったとしても、クーラント液は蒸発や劣化などで自然に減少していきます。
そのため、クーラント液は定期的に確認してあげましょう。
クーラント液の量を把握していれば不具合を判断する基準となります。「もしかして漏れているかな?」などの事態になった場合は素早くアラートの感知が可能です。
クーラント液の量はエンジンルーム内にある「リザーバータンク」で簡単に確認することができます。
この半透明の樹脂製タンクには「FULL / LOW」や「MAX / MIN」などの目盛りが記載されているはず。液面がこの間にあるようならば大丈夫です。
もしも下限を下回っていたり、下限に近かったりした場合はできるだけ早いうちに同じ色、同じ種類のクーラントを適量補充しましょう。
ただし、リザーバータンクの液面はクーラント液の温度によって上下するため、必ずエンジンが冷えた状態で確認するようにしてください。
3 クーラント液の代表的な種類や色
クーラントには赤や緑、また最近の新車には青やピンクのクーラント液が充填されています。
この2色は赤や緑と異なり、耐用年数が長いクーラント液です。簡単に分けると下記のようになります。
- 赤と緑…エチレングリコールが主成分。「ロングライフクーラント(LLC) 」と呼ばれる冷却液で、耐用年数は2~3年。
- 青とピンク…プロピレングリコールが主成分。「スーパーLLC」と呼ばれる冷却液で、耐用年数は7~10年。
それぞれ赤と緑、青とピンクと色は異なりますが、基本的に性能は一緒。
冷却液に色が付けられている理由は液漏れなどのチェック時などに点検をしやすくするために着色されています。
余談ですが上記4色のクーラント液以外にも、ディーゼル用LLCや輸入車用LLC、競技用LLCも存在しています。これらは色や成分内容が異なる場合があるため、必要な車にだけ使用しましょう。
4 クーラント液は基本的に今使用しているものを使用する
基本的に今使用しているクーラント液と同じ色のクーラント液を使用することを心がけてください。
せっかく使うのであればより性能のよいスーパーLLCを使いたくなる気持ちも分かりますが、各車で純正採用されている色と種類のクーラント液、もしくは現在入っているものと同じクーラント液を使いましょう。
それにはもちろん理由があります。
LLCが純正採用されている車にもしスーパーLLCを入れると、高い洗浄能力によって落ちた汚れがラジエター配管に詰まり、故障を引き起こす可能性があるためです。
反対に、スーパーLLCを純正採用している車に旧来のLLCを入れてしまうと、高い洗浄能力が発揮できず汚れなどが残ってしまうこともあります。
また、同じ耐用年数を持つ「赤と緑」と「青とピンク」の組み合わせであればそれぞれ混ぜて使用しても問題ありません。
クーラント液の色は漏れた際に目立つように付けられています。
そのため異なる色同士を混ぜ合せてしまうと濁って色が分かりにくくなってしまい、漏れの位置が不明確になってしまったりクーラント液の劣化や漏れを見落としてしまう恐れも考えられます。
5 基本的に水道水はクーラント液の代わりとして使用しないこと
クーラント液ではなく水道水を入れることも不可能ではありませんが、おすすめはできません。
不凍液が含まれていて氷点下でも凍りにくいクーラント液と比較すると水は凍りやすいためです。 気温が低いときに凍った水が膨張し、ホースやタンク、ウォーターポンプなどの重要部品を破壊してしまう可能性も否定できません。
水を使用するのは、
- 希釈が必要なクーラント液を薄める時
- 補充が少量である時
- 出先など緊急時でクーラントが入手できない時
のみにしてください。
6 クーラント液はどれくらいのペースで交換、補充すべきか
前述のようにクーラント液は使用することで蒸発したり、時間が経過するごとに劣化していきます。
蒸発して不足したクーラント液は補充する必要があり、劣化したクーラント液は交換する必要があります。
LLCは耐用年数が2〜3年なため、車検ごとに交換するといいでしょう。
スーパーLLCの場合は耐用年数が7〜10年なので、車を乗り換えるまで交換しなくて済む場合もあります。
7 耐用年数前にクーラント液が濁ってしまった場合
同じ色、種類を使用しているにも関わらず、時々耐用年数に達する前にクーラント液の色が濁ってしまうケースがあります。これは劣化のサインであるケースもあれば、エンジンオイルの混入トラブルの可能性もあります。
どちらにせよそのまま放置しておくのは歓迎できません。
できるだけ速やかな点検と交換をおすすめします。
8 クーラント液を補充する際の手順
クーラント液を補充する場合は、エンジンが冷えた状態でリザーバータンクの上部キャップを開け、クーラント液を「FULL」もしくは「MAX」の位置まで注ぎ、キャップを閉めれば完了です。
補充はリザーバータンクへ直接行ってください。この際はやけどに十分気をつけましょう。
ただし、市販のクーラント液を用意する際は、あらかじめ希釈された補充用クーラント液(ストレートタイプ)と、希釈されていないクーラント液(原液タイプ)の2種類が存在している点に注意。
- ストレートタイプのクーラント液…凍結温度が−30℃程度に調整されており、多くの地域でそのまま使えるように配慮された希釈済みのクーラント液。
- 原液タイプ…希釈して使用することを前提に濃縮されており、希釈割合によって凍結温度を調整できる交換向けおよび寒冷地向けのクーラント液。
このように特徴が異なります。
原液タイプのクーラント液を使用することも可能ですが、その際は車を使用する地域に適した凍結温度になるように水道水で希釈する必要があります。
希釈の割合は車を使用する地域の冬季最低温度を上回らない凍結温度になるように調整します。ただし、希釈割合と凍結温度の関係は製品によって異なるので、必ず取扱説明を熟読したうえで作業に取り掛かってください。
8-1 【補充の手順1】 水で希釈する
クーラントは通常、希釈して(水で薄めて)使用します。
どのくらいの割合で希釈すべきなのか、表示に従って薄めてください。じょうごなどを利用し、使う分だけ別容器で希釈してから車へ補充するのが安全です。
リバーザータンクの目盛りを見て、液面が適正な位置になっていることを確認したら、タンクのキャップを締めましょう。
8-2 【補充の手順2】 ラジエーターキャップを外してエンジンをかける
次にラジエーターキャップを外し、そのままの状態でエンジンをかけてみてください。
ラジエーターの液面から、ぶくぶくと泡が立ってくるはず。
これは冷却水経路に混じっている空気が気泡となって抜けているために発生します。もしも経路内に空気が混入していると、冷却水が本来の性能を発揮できず、エンジンなどへダメージを与えることがあります。「エア抜き」と呼ばれるこの作業は、そうした危険性を回避するために行われます。
なお、エア抜きはクーラント液の交換時に特に必要になるもので、補充作業ではそれほどの泡が確認できないかもしれません。空気が入っていないようならラジエーターキャップを締めて完了です。
9 クーラント液を「交換」する際は無理せずプロへの依頼も
補充するだけであれば専門技術はそれほど求められないのですが、クーラント液を交換するとなると話は別です。
車の下に潜りラジエターからクーラント液を抜く作業が必要になるため、慣れていない場合は危険が伴います。
また、車によってはラジエターからの排出だけでは古いクーラント液が十分に抜けない場合も。作業を行うのが困難と感じた場合は、無理をせずディーラーや整備工場に作業を依頼してください。
もし自分で交換する場合は、まず「お住まいの地域に適した凍結温度のクーラント液」「クーラント全量を入れられる容器(1.5Lエンジンで5L前後・2.0Lエンジンで7L前後)」と、その車に適した工具を用意することから始まります。
その際の手順例を記載します。
9-1 エンジンが冷えているかを確認し、クーラント液を排出する
火傷などをしないようにエンジンがしっかりと冷えているかどうか確認してください。
確認ができた段階で車の前下部に潜り、ラジエター下部に備わった排液口を塞いでいるドレンボルト(ドレンコック)を緩めます。
そうするとクーラント液が排出されるので、用意した容器に入れましょう。上部のラジエーターキャップを空けるとより早く排出されます。
9-2 用意したクーラント液をラジエーターキャップから注入する
ラジエーターキャップ内のクーラント液がすべて抜けたら、ドレンボルトおよびドレンコックを取付けて排液口を塞ぎます。その後、用意したクーラント液をラジエターキャップから注入しましょう。
冷却通路内は狭くクーラント液が流れ込むまでに時間がかかります。そのため、少量ずつ注いでください。
9-3 ラジエーターキャップを解放したままエンジンをかける
ラジエターの注ぎ口付近までクーラント液が入ったことを確認したら、冷却通路内の空気を抜くためにラジエターキャップを開放したままエンジンをかけ、しばらく放置。
開けっぱなしのラジエターキャップから冷却通路内に溜まった空気が気泡となって出てくるはずです。ラジエターキャップ内の液面が下がっていくので、少なくなってきたらさらにクーラント液を補充しましょう。
エンジンが稼働し、クーラント液が温まるとラジエター背面に備わった冷却ファンが突然作動する場合があるため、ケガには十分注意してください。
エンジンが温まり気泡が出なくなったら、ラジエターキャップを締めて交換作業完了。
抜きとった古いLLCは産業廃棄物になるため、整備工場や廃棄業者に廃棄を依頼しましょう。
9-4 クーラント液を全量交換するために
上記の交換方法では古いクーラント液がエンジン内部に残ってしまいます。全量交換をするためには途中でもうひと手間必要です。
新品のクーラント液を入れる前に水道水でラジエター内を満たし、エンジンを始動してラジエターとエンジン内部を循環させます。
その後に再び水道水を排出すれば古いクーラント液はほとんど残らなくなります。
万全を期すなら、これを2度ほど繰り返すことをおすすめします。クーラント液を全量交換すれば、異なる色や種類のクーラント液を入れられるようになります。
10 クーラント液が漏れた場合のサイン
クーラント液はラジエーターとエンジンの間を往復しています。クーラント液を循環させるホースは経年劣化などで亀裂が入ることも。
また、金属部品であるラジエーターにも破損や故障が起こり、クーラント液が漏れてしまう可能性があります。
定期的に次のような症状がないか確認しましょう。
- アイドリング時、低速走行時にエンジンルームから甘い匂いがする(綿菓子のような独特の甘い匂い)
- メーター内の水温警告灯(鍵が水面に浮いているようなマーク)が点いている
- メーター内の水温計が異常な水温を示している(車種にもよるが正常値は70℃~95℃程度)
- 車庫など駐車場所の床にシミができている
このような場合はホースやラジエーターに不具合が生じている可能性があります。速やかにプロに相談してください。もしもクーラントの漏れではなかったとしても、匂いや水温などから異常が感じられる場合、そのまま走行を続けるのは非常に危険です。
違和感を感じたらすぐに相談してください。
11 クーラント液が漏れてしまった時の対処方法と、してはいけないこと
クーラント液が漏れてしまっていた場合は絶対に一人で対応しようとせず、焦らずに車を安全な場所に停めてプロやロードサービスに連絡してください。
無理に車を動かそうとすると大怪我に繋がってしまう恐れもあります。
ここからはクーラント液が漏れ出てしまった時の対処法や、してはいけないことを記載していきます。
11-1 すぐにエンジンを停止する、もしくは安全な場所へ速やかに停車し、プロに連絡する
クーラント液が漏れ出している症状を察知した場合、すぐにエンジンを停止してください。
さらに、走行中に水温警告灯が点灯したり水温計が上がったりするような場合もクーラント液が漏れ出ている可能性が疑われます。速やかに安全な場所へ車を停めましょう。
車が停止したら必ずプロに連絡しましょう。ロードサービスや整備会社などに連絡すればアドバイスをくれるはずです。
11-2 クーラント液の代わりとしての水の補充は避ける
緊急措置として、クーラント液の代わりに水を補充すれば冷却性能を一時的に回復させることは確かに可能です。
しかしそのまま走行を続けてクーラント液が不足した場合どうなるでしょう?
エンジンは焼付き、車は急停止してしまいます。
これは非常に危険です。さらに莫大な修理費用がかかってしまいます。もし車道で急停止してしまった場合、良からぬ結果を誘発してしまうかもしれません。
クーラント液が漏れ出した場合は無理をして走行しようとすることは避けましょう。
11-3 エンジン停止直後のクーラント液の量の確認は絶対にNG
絶対に行ってはいけないのは、急いでクーラント液の量を確認すること。
クーラント液の量自体は、前述した「リザーバータンク」を見れば簡単に確認することができます。また、ラジエーターキャップを外すことで液面の位置を確認できる場合もあります。
しかし、クーラント液はエンジン始動時には100℃近くにまで温度が上がる液体でもあります。車を停車させた時点でクーラント液の温度が低いとは断言できません。
焦ってタンクやラジエーターのキャップを外してしまうと、液体が噴水のように飛び出します。万が一高温だった場合は極めて危険です。
エンジンを切り、クーラントの温度が下がるまでの数十分は、ラジエーターやホース、タンク周辺に触れることは避けましょう。
液温が下がったらクーラントの量や、漏れている箇所の有無を確認しても大丈夫です。
定期的にクーラント液を点検し、事故なく安全なカーライフを
今回はクーラント液の基本的な知識についてご紹介してきました。
縁の下の力持ちとして活躍してくれているクーラント液ですが、トラブルがあると大事故を起こしかねない特性も備えています。
そのため、定期的にクーラント液のことも気にしてあげてくださいね。液の量はもちろん、その他の違和感にも気付きやすくなるはずです。
もし不具合や違和感を感じたら整備工場に預け、診断してもらうことをおすすめします。
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