2023年6月23日
フェード現象とは?対策やブレーキのチェックポイントなど
長い下り坂を走行時に減速のためフットブレーキを多用することによってブレーキに負荷がかかり過ぎ、ブレーキの効きが低下することをフェード現象と言います。このフェード現象が発生してしまうと速度を落とすことが難しくなるため、重大な事故を引き起こしてしまう可能性も考えられます。
段々とブレーキが効かなくなり、最終的には全く効かなくなってしまうというフェード現象は、人命にも関わる危険な状態。
なぜこの現象が発生するのか、発生してしまったらどうすればいいのかを確認しておきましょう。
目次
1 ブレーキの効きが悪くなる現象である「フェード現象」
フェード現象とは、車やバイク等の走行中、特に下り坂などで摩擦ブレーキを連続的に使用しすぎた結果、徐々にブレーキの効きが悪くなる現象のことを指します。
下り坂でブレーキを連続で使用すると、摩擦材に含まれているゴムが過熱されます。耐熱温度を超えてブレーキパッドが過熱されていくと、摩擦材が分解されてガス化してきます。ブレーキローターとブレーキパッドの間に、加熱されてガス化した摩擦材が入り込むことで、ガスの塊が潤滑材となり摩擦力が発生しなくなってしまうのです。
流れを整理すると下記のようになります。
- フットブレーキの使いすぎで摩擦材が加熱される
- 摩擦材の素材であるゴムや樹脂等が耐熱温度を超えて分解・ガス化する
- ガス化した摩擦材がブレーキローターの間に入り込む
- 入り込んだガス膜が摩擦係数を低下させ、フットブレーキの効きが悪くなる
最悪の場合だとブレーキをいくら踏んでもブレーキローターに力が伝わらず、車も止めることができない状態になってしまうことも。
車を停止させるにはブレーキをかけるしかありませんが、フェード現象が起こったらフットブレーキ以外の方法で車を減速させる対応が必要になります。
特に勾配が激しい場所や、積載量が多いなどの状況では、フットブレーキ以外の方法を使って速やかに減速を始めることが大切です。
2 フェード現象対策のために下り坂ではブレーキを多用しないこと
走行中にブレーキが効かなくなってしまうと、命に関わる事故に発展しかねません。非常に危険な状態であるため、可能な限りフェード現象を予防する方法を知っておきましょう。
最も簡単な対策は下り坂でブレーキを多用しないことでしょう。
フェード現象はブレーキペダルを多用することによって起こる現象です。特に下り坂を運転する際はブレーキペダルを多用しない運転を心がけてください。スピードを出し過ぎないように注意したり、エンジンブレーキも併用しながら運転することをおすすめします。
また、ブレーキペダルを踏むのであれば、強く短く踏むこともフェード現象の予防に有効です。
3 長い下り坂などではエンジンブレーキの使用も効果的
フェード現象を起こさないためには、既述しているようにフットブレーキの多用、特に坂道でのブレーキの多用は避けるべきでしょう。その為には、エンジンブレーキを活用することが求められます。
順路を予め確認し、経路に長い下り坂があることが分かっているのであれば、ギアチェンジをしてエンジンブレーキをかける選択肢を考慮しておきたいところです。
エンジンブレーキをかける時は、マニュアル車の場合は3速や2速にギアチェンジを行い、オートマ車の場合はシフトレンジを3や2、場合によってはLレンジに入れましょう。
この状態ではアクセルを踏まなければエンジンに燃料が送られないため、エンジンが元の回転数に戻ろうとして自然に制動力がかかる現象が起こります。
4 フェード現象予防のためには定期的にブレーキの点検、メンテナンスを行うことが大切
ブレーキに異常が起きていないかどうか、日ごろから点検しておくことは車のトラブル防止に非常に有効ですが、もちろんフェード現象の予防にも効果的です。ブレーキを踏んだ際の違和感の有無や、ブレーキオイルやブレーキパッド、ライニングに異常がないかを確認しましょう。
特にブレーキパッドは摩擦を発生させてブレーキをかける部品という特性を持つ消耗品のため、適切なタイミングで交換が必要です。ブレーキパッドの減り具合は、同時に交換しているブレーキフルードであれば、ブレーキフルードの残量がロウになっているか確認して判断することが可能です。
さらに、ブレーキを踏んだ時に高音の異音が鳴ったら交換が必要なくらいすり減っているということ。このような状態が確認できたら交換しましょう。
また、ブレーキオイルは、劣化してくると茶色に変化していきます。直接フェード現象とは関係がないブレーキオイルですが、劣化したブレーキオイルはベーパーロック現象の原因にもなり、大変危険です。ブレーキオイルの交換目安は2年~3年に1回といわれているため交換を忘れがちですが、定期的に確認してください。
もしも運転していてブレーキに違和感を感じたらそのまま乗り続けず、すぐにプロへの修理依頼を検討しましょう。
5 万が一フェード現象が起こった場合の対処方法
フェード現象が起きてしまうと焦りからフットブレーキをさらに踏み込んでしまうという反応が一般的でしょう。しかし一度フェード現象が起きてしまうと、いくらフットブレーキを踏んでもブレーキをかけることができません。
ではフェード現象によってブレーキが利きにくくなってしまった場合、どのように対処するべきなのでしょうか。万が一フェード現象が起こってしまっても慌てずに対処するためにも、対処法を理解しておくことが大切です。
5-1 エンジンブレーキを併用する
フェード現象が起こってしまうといくらブレーキペダルを踏みこんでもブレーキをかけることができません。前述のようにエンジンブレーキを併用してブレーキをかけましょう。特に勾配が激しい場所を運転しているのであれば、エンジンブレーキが効果的。
車はエンジンからの動力を車軸に伝えることでタイヤを回転させて走行しますが、走行中にアクセルペダルを離すとタイヤの回転力によってタイヤを動かしている状態となるため、徐々に減速していきます。
また、中型や大型トラックやバスには強い制動力をもつ「エアブレーキ」という機能が搭載されています。エアブレーキはフットブレーキのブレーキオイルを使った油圧式ブレーキよりも制動力が強くかかるため、踏み込みすぎると急ブレーキがかかってしまい非常に危険です。エアブレーキを使用する際は、足の裏を使ってゆっくりと踏むようにしましょう。
5-2 ブレーキを冷やす
フェード現象が起きてしまったら、ゆっくり走りながら風を当ててブレーキを冷やすことも大切。ゆっくりと走行するのが難しい高速道路や山道などの場合は路肩などの安全な場所に車を停めて、ブレーキの熱を下げてください。30分程度休ませると、元の温度にまで下げることができます。
高速道路では基本的に停車が困難ですが、フェード現象になってしまったのであればハンドブレーキなども活用するなどして、慌てずに徐々に車を減速させていきましょう。
また、ブレーキを冷やすためにブレーキに直接水をかけることは必要ありません。
車を完全停止させるためには非常に大きな熱エネルギーが働きます。発生する熱エネルギーは急激に水で冷やすとブレーキローターが割れる原因にもなってしまうのです。
6 フェード現象が発生する温度
フェード現象が生じ始める温度は「フェードポイント」と呼ばれています。このフェードポイントは摩擦材の素材によって異なる点が特徴。
一般的な車体に多く採用されているノーマルパットでは、300度〜350度ほどに設定されており、対して高速運転に適したスポーツパッドでは400度〜700度ほどに設定されています。
スポーツパッドの特徴にはフェード率の高さがあげられます。フェード率とは、フェードする前とフェード時の摩擦係数の変化値を表す指標で、フェード率が高いとフェード時でも摩擦係数が落ちづらいことを示しています。
ノーマルパッドが40〜50%であるのに対してスポーツパッドのフェード率は60〜80%ほどであることを考えるとその高さが顕著にわかります。また、フェード率はパッドに使用する樹脂類の成分やその含有量、または繊維質の材料などによって変化します。
7 フェード現象はドラムブレーキの場合に発生しやすい傾向に
車の三原則は「走る」「曲がる」「止まる」です。三原則の一つ「止まる」とは、車の制動のことを意味します。
車はブレーキをかけることで、スピードを減速したり必要な場所で停止することが出来ます。そのブレーキには、ディスクブレーキとドラムブレーキの二種類があります。車のブレーキシステムは大きく「ディスクブレーキ」と「ドラムブレーキ」の2つに分けられます。
7-1 ディスクブレーキ
ディスクブレーキは、走行中に車輪と一体になり回転するディスクローターをブレーキパッドで挟み、その挟んだ際の摩擦力によって制動力を生み出す仕組みのブレーキシステムのこと。「制動力」とはブレーキ操作を行なうことで生じる自動車を減速させる力のことを指します。下記の流れでブレーキが作用します。
- 運転者がブレーキペダルを踏む
- 踏んだ力がブレーキブースターにより増幅しシリンダーへ伝わる
- シリンダー内のブレーキオイルが流れてブレーキキャリパー内のピストンへ
- ピストンが動くとブレーキパッドがローターを両側から挟む
- パットとロータ―に発生した摩擦の力で車輪の回転が止まり車が減速または停止する
このディスクブレーキのメリットとしては制動力が安定していること、放熱性に優れており水分や汚れを弾きやすいために高速道路の走行時に強いブレーキング力を発揮する点が挙げられます。
7-2 ドラムブレーキ
ドラムブレーキは、車輪の内側につけられたドラム内部にブレーキシューが装着されることで、ドラム内部から外側への圧着で制動力を生み出す仕組みのブレーキシステム。比較的シンプルな構造です。下記の流れでブレーキが作用します。
- 運転者がブレーキペダルを踏む
- 踏んだ力がブレーキブースターにより増幅しシリンダーへ伝わる
- マスターシリンダーからブレーキオイルが流れてホイールシリンダーへ
- ピストンが動きブレーキシューをドラムの内側へと押し付ける
- ブレーキシューとドラムの内側に摩擦熱が発生して車が減速または停止する
ドラムブレーキのメリットは、低コストで実装が可能な点でしょう。その一方で放熱性が悪いという特徴があります。そのため、ドラムブレーキはフェード現象を発生させやすいと考えられます。
このような傾向から車体の前輪はディスクブレーキ、後輪はドラムブレーキという設計にしている車も少なくありません。
しかし下り坂などでフットブレーキを多用すると、ディスクブレーキとドラムブレーキどちらの仕組みであっても前述した摩擦材が熱を持ってしまいガス化するためフェード現象が起こってしまいます。
もしフェード現象が起きてしまった場合は慌てず対処を
フェード現象は非常に危険な状態です。可能な限りフェード現象を発生させないためにもフットブレーキを多用しない運転を普段から心がけることが大切です。
ブレーキ関係の消耗はなかなか目に見えにくいため、つい放置してしまいがちです、何かがあってからでは危険です。定期的にブレーキ周りのメンテナンス、チェックを行ってくださいね。
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