2021年7月23日
多くの日産の名車に搭載された「L型エンジン」に迫る
これまで多くの名車が日産より誕生しました。「スカイライン」「フェアレディZ」「ブルーバード」「ローレル」など、その数は数えきれない程。
これまで誕生してきた名車の一部に搭載されていた「L型エンジン」をご存知でしょうか。初めて搭載されたのは1965年のこと。その後、約20年に渡り活躍し日産の一時代を築いてきました。
今回はそんなL型エンジンの変遷から特徴、搭載された名車について解説していきます。
目次
1 今や名機とも言われている「L型エンジン」とは
L型エンジンは、日産自動車が製造していた直列4気筒または6気筒エンジン。SOHC式動弁機構を採用しており、多くの名車にも搭載されました。
生産をスタートしたのは、国産車にSOHCが導入され始めた1965年。日産が誇る名車の一つでもある、「セドリック スペシャル6」に搭載されたL型6気筒エンジンが初めてです。
当時のメルセデス・ベンツに対抗すべく開発されたもので、上級車向けに開発されたエンジンでした。基本型式は「L」で、その後に続く数字は大まかな排気量を表しています。
自動車排出ガス規制が強化された1975年には、排ガス対策NAPSを装着。これは酸化触媒とEGR等を主体としたものでしたが、当初はドライバビリティや出力の大きな低下で不評だったんだとか。
その後4気筒シリーズはZ型エンジンに移行。6気筒シリーズは排気量拡大による性能水準維持や制御機構改良を実施します。これによりターボチャージャー搭載エンジンもラインナップされた後、1980年代の中頃までに後継のRB型エンジンに移行され製造が終了しました。
2 ターンフロー型を採用しているL型エンジン
L型エンジンの特徴はターンフロー型を採用していること。
1970年代以降はクロスフロー型が主流で、現在でも採用している車種がほとんど。これは、シリンダーヘッドの左右に吸気ポートと排気ポートが別々に設けられているタイプ。
一方ターンフロー型は、シリンダーヘッドの片側に吸気ポートと排気ポートが固まっているタイプです。片側に吸気ポートと排気ポートが固まっているため、エンジン加工もしやすい点とツインカム化しやすいことがメリット。また、鋳鉄製エンジンブロックやチェーンによるカムシャフト駆動を採用したことも特徴。重量が大きくなってしまうことがネックですが、丈夫で寿命が長いことがポイント。
さらにボアアップなどでシリンダーを加工しても耐久性を確保できるので、改造に向いていたエンジンだったんです。
3 バリエーション豊富なL型エンジン
L型エンジンはバリエーションが豊富なことが特徴の一つ。前述した通り、L型エンジンは「4気筒」「6気筒」の2種類に分類されています。
ここでは、それぞれのエンジンについて搭載された車種などを紹介していきます。
3-1 6気筒エンジンのバリエーションと、搭載された主なモデル
6気筒シリーズが登場したのは前述した通り、1965年のこと。
それまでセドリックスペシャル6に搭載されていたOHV式J20型エンジンを改良し、初めて採用されたのがL20型。この他にもスカイラインGC10型にも搭載されたエンジンとしても有名です。
プリンス自動車製G7型エンジンに似た、「かまぼこ形ヘッドカバー」と呼ばれる形状でした。カバーの固定方法がヘッドから突き出た6本のスタッドボルトに袋ナットで固定されていたことが特徴。1969年にはさらに改良を加えたL20A型をラインナップ。L20型との違いは性能はもちろんですが、外見上の違いも。カバー形状が異なり外周の耳に8本のボルトで固定されていることが特徴です。
6気筒エンジンのバリエーションと、搭載された主な車種は以下の通りです。
名称 | 搭載された主な車種 |
【L20型】 | セドリック130型 |
グロリアA30型 | |
スカイラインC10/C110/C210型 | |
ブルーバードG610/G810型 | |
ローレルC130/C230/C31型 | |
フェアレディZ S30型 | |
【L20E型】 | セドリック330型 |
グロリア430型 | |
スカイラインC110/C210型 HR30型 | |
ローレルC130/C230/C31型 | |
ブルーバードG610/G810型 | |
フェアレディZ S30/S130型 | |
レパードF30型 | |
【L20ET型】 | セドリック430型 |
スカイラインC210型 R30型 | |
ローレルC31型 | |
レパードF30型 | |
フェアレディZ S130型 | |
【L20P型】 | セドリック330/430型 Y30型 |
【L24型】 | フェアレディ240ZG S30型 |
【L24E型】 | ローレルC32型(輸出仕様) |
スカイラインR30型(輸出仕様) | |
【L26型】 | ローレルC130型 |
セドリック230型 | |
【L28型】 | セドリック330型 |
ローレルC130/C230型 | |
【L28E型】 | フェアレディZ S130型 |
セドリック330/430型 | |
レパードF30型 | |
ローレルC31型 | |
【LD28型】 | スカイラインC210型 R30型 |
ローレルC31/C32(前期型)型 |
3-2 4気筒エンジンのバリエーションと、主な搭載車
1967年にそれまで主流だった「J型」が改良され、1.3/1.6リットルクラスの高速型小型4気筒量産エンジンとして誕生。6気筒と一部のパーツを共用した、5ベアリングのL13/L16型がブルーバード510型に搭載。
その後L13型は排気量を1.4リットルに拡大され、L14型に移行されます。ブルーバード510型やサニーエクセレントB110型、バイオレット710型に搭載されたエンジンです。ただ、L14型は昭和50年に施行された排出ガス規制まで対応しましたが生産を終了します。
その後、ブルーバード810型やスカイラインC110型などに搭載されたL16型エンジンを追加。またローレルC130型やシルビアS10型に採用されたL18型エンジンが登場します。
L16/L18型は昭和51年の排出ガス規制まで対応したものの、L16型を搭載するサニーエクセレントシリーズがベースモデルとなったサニーB310型へのモデルチェンジを機に廃止。
また昭和53年に実施された排出ガス規制の際は、ツインスパークプラグ急速燃焼方式を採用した直列4気筒SOHCのZ16/Z18型エンジンに変更。これによりディーゼルエンジンのLD20型を除き、4気筒シリーズは製造終了を迎えました。
4気筒エンジンのバリエーションと、搭載された主なモデルは以下の通りです。
名称 | 搭載された主な車種 |
【L13型】 | ブルーバード510型 |
【L14型】 | サニーエクセレントB110/B210型 |
バイオレット710型 | |
ブルーバード510型 | |
【L16型】 | バイオレット710型 A10型 |
ブルーバード510/810型 | |
ブルーバードU 610型 | |
バイオレット710型 A10型 | |
サニーエクセレントB210型 | |
スカイラインC110/C210型 | |
【L16E型】 | バイオレット710型 A10型 |
【L16P型】 | ブルーバード510型 |
バイオレット710型 | |
【L18型】 | ブルーバード510/810型 |
ブルーバードU 610型 | |
ローレルC130/C230型 | |
スカイラインC110/C210型 | |
シルビアS10型 | |
【L18E型】 | ブルーバード810型 |
ブルーバードU 610型 | |
シルビアS10型 | |
スカイラインC210型 | |
【L18P型】 | ブルーバード810型 |
バイオレット710型 | |
【L20B型】 | ダットサン510型(ブルーバード510型の輸出仕様) |
ダットサン200SX型(シルビアS10型の輸出仕様) | |
ダットサン710型(バイオレット710型の輸出仕様) | |
【LD20型】 | ブルーバード910型 |
スカイラインR30型 | |
ローレルC31型 | |
ラルゴC120型 | |
【LD20T型】 | ブルーバード910型 |
ラルゴC120型 |
4 L型エンジンを搭載した代表的な搭載車3選
前述した通り、日産が開発したL型エンジンは多くの名車に搭載されました。ここではL型エンジンを搭載した代表的な名車を3車種紹介していきます。
4-1 L20型エンジンを搭載した「スカイライン2000GT C10型」
スカイライン2000GT C10型は、スカイラインの3代目のモデル。「ハコスカ」の愛称で親しまれており、多くのファンを虜にした一台です。
1968年にフルモデルチェンジされ、6気筒OHC1998ccのL20型エンジンを搭載し誕生。当時セドリックに搭載されていたL20型シングルキャブレター付きエンジンをベースに、細部を改善し高速型として生まれ変わりました。
6気筒エンジンは等間隔燃焼のバランスの良さと高い静粛性がメリット。それに加え7ベアリングクランクシャフトを採用したことで、当時としては優れた高速耐久性を兼ね備えた一台。
4-2 多くのファンを虜にした「フェアレディ240ZG S30型」
フェアレディ240ZGは1971年にリリース。
L24型2.4L直列6気筒SOHCエンジンを搭載し、国内向けに販売されていたS30型ではトップクラスの排気量でした。最高速は210km/hをマークし、誰もが憧れるスポーツカーだったことは言うまでもありません。
排気量も特筆すべき点ですが、スタイリングも特徴の一つ。Gノーズと呼ばれるエアロ・ダイナノーズや、60mmもワイドになるリベット留めのオーバーフェンダー。また、高い空力性能を誇るヘッドライトカバーが240ZGだけに採用されたことがポイント。
そのインパクトは、当時のライバルだったポルシェ911も凌駕すると言われていた程です。
4-3 新開発のエンジンを搭載した「ブルーバード510型」
ブルバード510型はブルーバードシリーズの3代目にあたるモデル。1967年にリリースされ、当時トヨタが販売していたコロナの対抗馬として誕生。
新開発のエンジンやスタイリッシュなボディデザインは、その後の国産車にも大きな影響を与えたと言われている程。特筆すべきは水冷直列4気筒SOHCエンジンを搭載していること。発売当初は1.3リッターと1.6リッターをラインナップ。これはトヨタのコロナに打ち勝つために新しく開発されたもので、その後グレードアップした6気筒エンジンが、スカイラインやフェアレディZに採用されています。
ボディデザインは直線的で彫りの深いシャープなデザインが特徴。ブルーバードの中でも大きな成功を収めた一台でもあり、販売台数は約155万台を記録している程です。
まとめ
今回は日産から開発されたL型エンジンについて解説してきました。
直列4気筒または6気筒のターンフロー型を採用し、チューニングしやすいことがメリット。また丈夫で寿命が長いことも特筆すべきポイントです。
現在では排出ガス規制の影響により、生産を終了していますがまさに旧車を感じられるアイテムと言えます。