
2020年1月27日
日産の人気車種、サメブルとは?愛称の由来から車種の特徴について
1970年代、日本の自動車業界は激しい競争の真っただ中にありました。各メーカーが独自の個性と先進技術を武器に「次の時代のスタンダード」を模索していた時代です。そんな中で登場したのが、日産の4代目ブルーバードU(610型)。
その中でも特に注目を集めたのが、直列6気筒エンジンを搭載したモデルでした。シャープなロングノーズと特徴的なフロントフェンダーのスリットは、まるでサメのエラを思わせる迫力あるデザイン。ファンの間ではいつしか「サメブル」という愛称で呼ばれるようになり、現在も旧車ファンの間で語り継がれる存在となっています。
今回は「サメブル」という愛称の由来から車の特徴、時代背景などについてお伝えします。
目次
1 ブルーバードとは?日本を代表したファミリーカーの系譜
ブルーバードは1959年に初代モデルが登場して以来、日産を代表する基幹モデルとして長く愛されたシリーズです。当時の日本はモータリゼーションの拡大期で、一般家庭にも「マイカー」が普及し始めた時代。ブルーバードはまさに庶民のためのファミリーカーとして、多くの家庭に受け入れられました。
また、ブルーバードはトヨタ・コロナとのライバル関係が特に有名で、この両車の販売競争は「BC戦争」と呼ばれるほど激しかったのです。価格・装備・燃費・快適性のすべてで競い合い、日本の小型セダン市場を大きく成長させました。
その結果、ブルーバードは単なる1モデルを超え、日本の自動車史に欠かせない存在となります。特に北米市場への輸出でも成功を収め、日産を世界的なメーカーへと押し上げる足がかりとなりました。
2 「サメブル」の愛称の由来
4代目ブルーバードU(610型)の中で、特に異彩を放っていたのが直列6気筒エンジンを搭載した「2000GT」シリーズです。ブルーバードとしては初めて6気筒を採用したことで、ボンネットが長くなり、スタイルも大きく変貌しました。
さらにフロントフェンダーに刻まれた2本の斜めスリットは、まるでサメのエラを思わせる大胆なデザイン。この斬新な意匠がファンの心を強く惹きつけ、「シャークブルーバード」=「サメブル」という愛称で呼ばれるようになりました。
愛称が定着した背景には、当時の車好きたちの「個性的な呼び名をつけて愛車を語り合う文化」もあります。スカイラインの「ハコスカ」や「ケンメリ」と同じように、ブルーバードもデザインの特徴から自然発生的にニックネームが広がっていったのです。
3 「サメブル」の特徴とスペック
「サメブル」と呼ばれた610型ブルーバードU・2000GTシリーズには、当時としては贅沢な装備とパワフルなメカニズムが備わっていました。
搭載エンジンは直列6気筒L20型エンジン(排気量2.0L)を採用。滑らかな回転フィールと余裕ある走行性能は4気筒モデルとは一線を画していました。
ボディデザインはロングノーズ&ショートデッキのプロポーションに、象徴的な「サメエラフェンダー」を装備。精悍でスポーティなスタイルが大きな魅力でした。
グレードは「2000GT」「2000GX」など上級仕様が中心で、内装には木目調パネルや高級シート地が採用されるなど、豪華装備が与えられました。
FR(後輪駆動)ならではの安定感と6気筒エンジンの余裕を活かし、スポーティセダンとしての性格を強調。ブルーバードのファミリーカーというイメージを超える存在感を持っていました。
このように、サメブルは「単なるブルーバードの派生車種」ではなく、当時の日産が挑んだスポーティかつ上級志向の試みを体現した特別なモデルだったのです。
4 時代背景と「サメブル」の評価
1970年代前半、日本は高度経済成長を経てモータリゼーションが一気に拡大した時代でした。ユーザーのニーズは単なる移動手段から、「より快適に、より格好良く乗れる車」へと変化。セダン市場でも高級志向やスポーティさが求められるようになりました。
この流れを受けて登場したのが、510型ブルーバードの後継となる610型ブルーバードUです。従来よりもボディを拡大し、直列6気筒エンジンを搭載するなど、上級化を狙った戦略的モデルでした。
しかし、販売面では成功とはいえませんでした。理由の一つは「中途半端なポジション」にありました。ファミリー層には「大きすぎて高価」、高級車志向のユーザーには「スカイラインやセドリックに比べると格下」という印象を持たれたのです。その結果、販売台数は伸び悩み、市場では孤高の存在となりました。
とはいえ、その独自性こそが後年「サメブル」を伝説的存在に押し上げる要因となりました。当時は売れなかったがゆえに希少性が高まり、現在ではコアなファンに熱狂的に支持される旧車として評価されているのです。
挑戦と個性が生んだ、唯一無二のブルーバード
「サメブル」は、ただのブルーバードの派生モデルではありません。1970年代という激動の自動車市場において、日産が果敢に挑戦した上級セダンへの挑戦と、個性的なデザインを象徴する存在です。
斬新すぎるがゆえに当時は販売が伸び悩んだものの、だからこそ現在では希少な価値を持ち、旧車愛好家の間で伝説的なステータスを確立しました。そのユニークな造形や直6エンジンを備えた仕様は、他のブルーバードとは一線を画す特別な存在といえるでしょう。
サメブルを振り返ることは、単に一台の旧車を知ることではなく、当時の時代背景や日産の挑戦の歴史を学ぶことでもあります。そして現代においては、クラシックカーの世界で「唯一無二の個性」を放ち続けるシンボルとなっています。
この記事が「なぜサメブルが語り継がれ、愛され続けるのか」を理解するきっかけとなれば幸いです。
WEBでカンタン無料査定!
旧車の買取なら、ヴァ・ベーネにお任せ!
業歴35年は信頼の証!お急ぎの方はお電話でも承っております。