2022年12月5日
冬タイヤの装備にあたってのポイントや注意点
日本自動車タイヤ協会によれば、乾燥した路面と圧雪路面、凍結路面で車の滑りやすさを比較した場合、乾燥した路面に比べ圧雪路面では約3.2倍、凍結路面では約5.4倍、つるつるの凍結路面ではなんと約8.0倍も滑りやすいと言われています。
冬の路面ではブレーキの効きが非常に悪くなることを念頭に置き、安全な速度で慎重に走行する必要があります。
そんな冬の走行をサポートしてくれるのが冬用のタイヤ。今回は冬の車に装備すべきタイヤについて記載していきます。
目次
1 各都道府県の公安委員会が取り決める冬タイヤの「滑り止めルール」
泥はね運転の禁止や携帯電話の使用を控えるなどのルールと並び、各都道府県の公安委員会が定める滑り止めルールというものが存在します(道路交通法第71条第6号など)。
沖縄県以外の公安委員会では、道路が積雪、または凍結したときにタイヤチェーンを取りつけたり、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤに履き替える必要があります。
もし違反してしまった場合、大型7千円、普通6千円、二輪6千円、原付5千円の反則金が課せられてしまいます。さらに、反則金を納めない場合は5万円以下の罰金も。
公安委員会遵守事項違反の扱いなため、交通違反点数の減点はありません。
また、これとは別に警察や高速道路会社などの道路の管理者や国が行う「冬用タイヤ規制」「チェーン規制」というものも存在しています(道路交通法第4~6条、道路法第46条など)。このチェーン規制に違反した時も罰金が発生してしまうので注意が必要です。
雪の降り始めなど、路面が積雪していたり凍結している場合でなければ、滑り止めルール違反とはなりません。
ただし、冬用タイヤ規制等がかかった場合は例外です。
2 冬の道路を走るための滑り止めの種類
冬の道路を走るための必須装備である「タイヤの滑り止め」は、「冬用タイヤ」と「タイヤチェーン」の2つに大別されます。
「冬用タイヤ」とはスタッドレスタイヤとスノータイヤの総称のこと。冬の高速道路を走る時は、冬用タイヤを装着しましょう。
その上で、突然の大雪などの天候の変化に備えて、タイヤチェーンも常に用意しておく必要があります。
では冬用タイヤとタイヤチェーンはどういったものなのか、それぞれ確認していきましょう。
冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ)の側面には、STUDLESS又はSNOWの文字があるので、お探しの際は確認してみてください。
また、オールシーズンタイヤ(側面にM+S、M.S、M&S又はM/Sの文字がある)は、ある程度までは積雪路面にも対応可能ですが、冬用タイヤに比べ制動性能が劣ります。そのため、降雪状況によっては走行できない場合があることを理解しておきましょう。
2-1 スタッドレスタイヤ
スタッドレスタイヤは積雪や凍結などの厳しい条件下でも高い能力を発揮できる冬用タイヤの一種で、0℃以下であっても硬化しにくい特殊配合のゴムで作られています。
溝の形や、切込み(サイピング)を改良し、従来のスノータイヤよりも制動性能が大幅に向上しているのが特徴です。
2-2 スノータイヤ
スノータイヤはその名の通り、雪や凍結路面での制動を良くするためのタイヤです。
一般的なタイヤより表面に大きな凹凸がついており、広くて深い溝で確実に雪をグリップできるように設計されたタイヤです。
2-3 タイヤチェーン
スタッドレスタイヤを装着すれば状態の悪い路面走行が可能になりますが、雪道での走行力はタイヤチェーンに軍配が上がります。
ただし、タイヤチェーンは積雪路以外で走行すると切れて事故につながることがあり大変危険です。
長大トンネルなどの前後では、こまめに着脱する必要があることを覚えておきましょう。
また、高速道路では、「冬用タイヤ規制」や「チェーン規制」が実施されている場合があります。
「チェーン規制」は、大雪特別警報や「大雪に対する緊急発表」が出されるような異例の大雪の時に実施される規制なため、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤでもタイヤチェーンを装着していない車は通行できません。
お出かけの際はタイヤチェーンを必ず携帯しましょう。
3 スタッドレスタイヤを装着するときの注意点
3-1 いつも以上に安全運転を心がける
スタッドレスタイヤを履いたまま普段の乾燥した道や湿った道を走る時には、ハンドルやブレーキ、アクセルなどの急な操作を避け、いつも以上に安全運転を意識してください。
3-2 必ず4輪セットで装着すること
前輪2本だけに装着しておけば…という考えは危険! 前輪だけにスタッドレスタイヤを装着した場合は前・後輪のグリップ力の差により、ブレーキをかけた時に後輪だけが滑ってしまいます。必ず4輪セットでスタッドレスタイヤを装着してください。
3-3 表面溝の深さが新品の50%以下にまですり減っていないかどうか
スタッドレスタイヤの使用限界は、表面溝の深さが新品の50%以下にまですり減った時です。装着前にすり減り具合を確認しましょう。あわせて空気圧の確認もお忘れなく。
4 タイヤチェーンは素材や形状で選択する
タイヤチェーンは形や素材によって色々な形状、素材のものが存在しています。
それぞれの特性や長所と短所を理解し、使用状況に適したものを選択する必要があります。また、装着するタイヤによってサイズも異なるため、確認したうえで購入することが大切です。
4-1 素材
普通のタイヤに取り付けるなら、取り付けが簡単で走行中の振動や騒音も金属製に比べて少ない、ウレタン&ゴム製がおすすめ。その反面金属製と比較すると、やや高価な傾向にあります。
その一方、スタッドレスタイヤに取り付けて深い雪の中を長時間走行する場合や、年に数回しか冬道を走らないという方は、比較的安価でグリップ力も高く、収納時にかさばらない金属製を選択するといいかもしれません。
4-2 形状
代表的なものは「はしご型」のタイヤチェーン。
前後方向のグリップは安定しますが、横方向の滑りには弱いという特徴も。対して「亀甲型」は前後方向にも横方向の滑りにもしっかり対応できる形状です。
他にも、はしご型と亀甲型の間のような形状など色々なタイプがありますが、一般的に、形状が亀甲型に近くなるほど雪道の走行性能は高いと言われています。
5 万が一に備えてスプレー式タイヤチェーンの用意もおすすめ
冬の時期には急に大雪となる可能性もあります。そんな突然の降雪の際、スタッドレスやチェーンが装備されていない場合、身動きがとれなくなってしまう恐れも。
そんな時のためにあると安心なのが「スプレー式タイヤチェーン」。
これは主に樹脂を原料としたスプレーで、タイヤに吹きかけるだけで雪道を走れるという非常に優秀なアイテム。樹脂原料の液体によりタイヤの表面にざらつきが出ることで、雪とタイヤの摩擦が増加、結果としてグリップ力が向上します。
チェーン規制時の代替として使用することはできませんが、突然雪が降ったときの応急処置として役立ってくれるはず。
また、凍結路でも力を発揮するところも魅力です。朝晩は、降雪地帯でなくても路面が凍結することがあるため、万が一のために用意しておくとよいでしょう。
ここからはスプレー式タイヤチェーンの選び方を記載していきます。
5-1 スプレー式タイヤチェーンの選び方① 制動効果の高さ
可能な限り制動効果が高いスプレーを選ぶことが大切です。スプレー式タイヤチェーンはあくまでも緊急用なため、メインの雪道対策用アイテムではない点に注意しておきましょう。
制動効果が低いと緊急時にしっかりとグリップせずに危険です。
成分は商品によって異なりますが、松脂のような樹脂や摩擦力を向上させるガムベースなどが使われていますが、成分だけで製品の優劣を判断するのは至難。選ぶ際は、メーカーが雪道での制動力を実験している製品を選ぶとより安心です。
5-2 スプレー式タイヤチェーンの選び方② どこの国のメーカーなのか
どこの国のメーカーであるかは実は重要なポイントです。
日本、北欧、北米などの大雪地帯のメーカーであった場合、制動力の信頼性が向上します。雪があまり降らない地域のメーカーのアイテムだと制動力や実験結果の信頼性がやや低下してしまいます。
5-3 スプレー式タイヤチェーンの選び方③ 持続力
効果が長く続く製品は、より安心して雪道走行が可能です。滑り止め剤はタイヤの表面に付着しているだけなので、距離を走ると徐々に剥がれ落ちてしまい、当然ながら制動効果が低下します。
製品には「制動効果が高い状態で、〇〇km走行できます」などの説明書きがあります。選ぶ際には、その説明書きをしっかりとチェックしておきましょう。
事前準備の上、冬の走行は安全に
場所によっては急な降雪や地面の凍結が考えられる冬。
タイヤの準備を行なっているかどうかは命に関わる問題になりかねないと言っても決して大袈裟ではありません。
これから冷え込みが増してくる時期、しっかりとタイヤの準備もしておきましょう。
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