2022年7月15日
走行性能とも関係する「駆動方式」とは?その仕組みや特徴について
「前輪駆動」「後輪駆動」に「四輪駆動(4WD)」。気になる車の公式WEBサイトやカタログのスペック詳細に記載されていることも多いこのキーワード。
これらは「駆動方式」と呼ばれ、車の原動力であるエンジンをどこに配置し、そしてそのパワー(駆動力)をどの車輪に伝えるかを表しています。
駆動方式は「走行性能」とも深く関わっているため、車選びの際にも着目したいポイントの1つです。
当記事では、そんな駆動方式の基本的な仕組みを中心に、FF、FR、MR、RR、4WDといった駆動方式の種類とその特徴に至るまで深掘りしていきます。
目次
1 そもそも駆動方式とは?
駆動方式とは、車の原動力であるエンジンをどこに配置し、さらにそのエンジンのパワー(駆動力)をどの車輪に伝えるかを表したものです。
エンジンの配置と駆動力の伝わる車輪(駆動輪)の組み合わせに応じて以下の5つに分類されます。
駆動方式 | エンジンの位置 | 駆動輪 |
FF(フロントエンジン フロントドライブ) | 車体の前方 | 前方の車輪 |
FR(フロントエンジン リヤドライブ) | 車体の前方 | 後方の車輪 |
MR(ミッドエンジン リヤドライブ) | 車体の中央 | 後方の車輪 |
RR(リヤエンジン、リヤドライブ) | 車体の後方 | 後方の車輪 |
4WD(四輪駆動) | 位置は不問 | 4輪全て |
例えば、最もポピュラーなFF(フロントエンジン フロントドライブ)方式の場合は以下のような構造になっています。
- エンジンの位置 : フロント側
- エンジンの駆動力の伝わる車輪(駆動輪) : フロント側
- エンジンの駆動力が伝わらない車輪(非駆動輪) : リヤ側
このようにエンジンの駆動力が伝わる側の車輪を駆動輪、伝わらない側の車輪を非駆動輪と呼び、非駆動輪は駆動輪に引っ張ってもらうような仕組みになっているのです。
ただし「四輪駆動(4WD)」は例外。エンジンの駆動力を全ての車輪に伝えているため、非駆動輪自体が存在しません。この点は後ほど詳しく説明します。
2 駆動方式の種類と構造
駆動方式は、エンジンの配置と駆動力を伝える車輪の組み合わせに応じて、前輪駆動(FF)、後輪駆動、四輪駆動(4WD)の3つに大別されます。
さらに後輪駆動はエンジンの位置に応じて、FR(フロントエンジン リヤドライブ)、MR(ミッドエンジン リヤドライブ)、RR(リヤエンジン、リヤドライブ)に分類可能です。
それぞれの駆動方式の構造や特徴について詳しくみていきましょう。
2-1 FF(フロントエンジン フロントドライブ)方式
FF方式は前輪駆動とも呼ばれ、フロント側に位置するエンジンのパワーをそのまま前輪に伝える駆動方式のこと。非駆動輪である後輪は、前輪の駆動力に引っ張られる仕組みです。
動力機構をフロント側にまとめて配置しているため、室内スペースを広めに確保することできるというメリットも。
他の駆動方式と比べてパーツも少なく済む上に効率的なレイアウトが可能であるため、軽自動車、ミニバン、セダンに至るまで様々な車に採用されています。市販車の大半は、このFF方式であると考えて差し支えありません。
2-2 FR(フロントエンジン リヤドライブ)方式
FR方式は後輪駆動の1つで、フロント側に位置するエンジンのパワーを後輪に伝える駆動方式のこと。
前述したFFとは反対に前輪側が非駆動輪に。フロントエンジンの駆動力は「ドライブシャフト(プロペラシャフト)」と呼ばれる回転軸を通じて、後輪へと伝わります。
この駆動方式の持つ最大のメリットは役割分担の明確さにあると言えるでしょう。ハンドリング操作を担う前輪、駆動を担う後輪といった具合にフロントとリヤで役割がしっかりと分けられているわけです。
ただし、駆動力を伝えるためのドライブシャフトのスペースを確保しなくてはならないことから、コンパクトカーよりも大型車や高級車で採用される傾向にあります。
2-3 MR(ミッドエンジン リヤドライブ)方式
MR方式は後輪駆動の1つで、車の中心に位置するエンジンのパワーを後輪に伝える駆動方式のこと。FR方式同様、前輪側が非駆動輪です。
エンジンが車体の中央に位置するため、全ての駆動方式の中でも前後の重量配分の点で優れています。
ただし、エンジン位置の都合上、室内スペースを十分に確保しづらいというデメリットも。
そのためMR方式が採用されるのは、室内スペースを最小限に抑えた2シーターのスポーツカーやレーシングカー等が多く、活躍するシーンはかなり限定的と言えるでしょう。
2-4 RR(リヤエンジン、リヤドライブ)方式
RR方式は後輪駆動の1つで、リヤ側に位置するエンジンのパワーをそのまま後輪に伝える駆動方式のこと。FF方式とは真逆の構造になっています。
リヤ側の重量配分が大きくなる分、フロント側に余裕を持たせることができるため、デザインの自由度の高さが大きなメリットと言えるでしょう。
世界的に有名なポルシェ・911シリーズもRR方式を採用しています。
またFF方式と同じくドライブシャフトが必要ないため、車体に使用する部品の数を抑えることができるという点も魅力の1つです。
2-5 4WD(四輪駆動)方式
ここまで解説してきた駆動方式とは大きく異なるのが、通称「四駆」で知られる4WD方式。
4WDは、エンジンのパワーを全ての車輪に伝える駆動方式のこと。非駆動輪というもの自体が存在せず、4輪全てが駆動輪として働く点が大きな特徴です。そのため、総輪駆動や全輪駆動と呼ばれることもあります。
特に走破性に優れていることから、オフロード(未舗装地)を駆け抜けるクロスカントリー競技で大活躍する駆動方式です。
ちなみにFFやFR方式のようにエンジンの位置によって呼び方が変わることはありません。例えエンジンの搭載位置がフロント側でもリヤ側でも、4輪全てが駆動輪であれば4WDと呼ばれます。
3 駆動方式によって走行性能やフィーリングも変わる
駆動方式は、走行性能や運転時のフィーリングとも大きく関係しています。走行時におけるFF、FR、MR、RR、4WDのそれぞれの特徴、メリット・デメリットについて詳しくみていきましょう。
3-1 直進安定性が魅力のFF方式
FF方式は重量配分がフロント寄りであるため、直進時の安定性に優れています。また駆動輪のすぐ上にエンジンを積むことで動力をスムーズに伝達できるため、燃費効率の向上といったメリットも。
ドライバーの運転技量に影響されない安定性こそFF方式の魅力です。
ただし「駆動」と「操縦」という2つの役割をフロント側のみで引き受けるため、操作性やハンドリングレスポンスの点では他の駆動方式よりも若干ながら劣ると言われています。
また、コーナリング時には前輪がグリップ力を失い車体が外側に膨らむ「アンダーステア」傾向になりやすいため注意が必要です。
3-2 優れた操作性が自慢のFR方式
前輪で「操舵」、後輪で「駆動」を担うFR方式は前述したFF方式よりも操作性の高さが魅力。
フロントとリヤでしっかりと役割分担をすることで、駆動力と操作性の両方における優れたバランスを実現。国産車であれば日産のフェアレディZやスカイライン、海外メーカーではメルセデスベンツのCクラス以上でFR方式が採用されています。
一方で、FF式とは反対に直進安定性の低さが玉に瑕。特に凍結路面やオフロードでは発進時にスピン(空転)しやすいため注意が必要です。
また、フロントエンジンのパワーを後輪に伝えるドライブシャフトが必要になるため、FF方式と比べて室内スペースも若干狭くなってしまう点もデメリットと言えるでしょう。
3-3 コーナリング性能の高さならMR方式
重量のあるエンジンが車体の中央寄りに位置するMR方式は、コーナリング時の安定性が大きな魅力。ニュートラルステアを実現しやすい駆動方式です。
ハンドリングのレスポンスにも優れているため、意のままにマイカーを操縦する感覚を楽しむことができます。
唯一の欠点はエンジン位置の都合上、室内スペースが確保しづらい点。室内スペースの狭さに目を瞑ってでも、各運動性能の高さを追求したいマニア向けの駆動方式と言えるでしょう。
3-4 高い運動性能を誇るRR方式
RR方式のメリットは、運動性能の高さ。
車における運動性能の基本である「走る」「止まる」「曲がる」といった各動作において、高いレベルのバランスを実現しています。これは車体の重量配分が後方に集中していることによるもの。
ただし、その分リヤタイヤが減りやすいというデメリットも。
また運動性能の高さは、操作難易度の高さの裏返しでもあります。特にハンドリングレスポンスの良さに関しては、デメリットと紙一重。少しの操作で車体が大きく動いてしまうため、人によってはむしろ運転しづらいと感じる場合もあるようです。
こうした「諸刃の剣」的な一面もまた、RR方式の愛嬌の1つと言えるかもしれません。
3-5 悪路の走破性とパワーが魅力の4WD方式
悪路における圧倒的な走破性の高さを誇るのが、4WD方式です。
前輪駆動や後輪駆動方式とは異なり非駆動輪がないため、4つのタイヤで駆動力を無駄なく地面に伝えることができます。そのため、凍結した路面や雪道をものともしない走破性の高さが魅力です。
その優れた走破性の高さは、クロスカントリー競技でも活躍するほど。
ただし走破性の反面、小回りが効きづらく操作性の点はデメリットも。また4WDの欠点として燃費の悪さが指摘されることもありますが、最近の4WDは車体も軽量化され、燃費効率もかなり改善されつつあります。
4 大型トラックや軍用車には六輪駆動が採用されることも
一般的に馴染みがないため本記事のメイントピックとして取り上げませんでしたが、実は「六輪駆動(6WD)」と呼ばれる駆動方式も存在します。
主に大型のトラックのほか装輪装甲車(軍用車)等にされることが多いこの駆動方式。
接地面積が大きくなることで車輪1つあたりの接地圧を抑えられるという点が、6WD最大のメリット。不整地における走行安定性と走破性が格段に増します。
車体の重量が増すため燃費こそ悪いものの、特定のシーンで活躍するメリットの方が大きく勝ると言えるでしょう。
余談にはなりますが、6WDのさらに上には8WDと呼ばれる駆動方式も存在します。
駆動方式による差異は縮まりつつある?
かつては「直進安定性ならFF」「操作性ならFR」「走破性なら4WD」といった具合に、駆動方式にこだわるユーザーも多かったのも事実。
しかし近年開発される車は技術の進歩もめざましく、各駆動方式が抱える欠点も克服されつつあります。そのため、一般的な街乗りの範囲であれば駆動方式による走行性能の差異は気にならないレベルになってきていると言えるでしょう。
ただしこれは新車に限ったお話。旧車をはじめとしたヴィンテージカーの場合は、駆動方式によって走行性が大きく変化します。
自分が車を保有する目的、そしてライフスタイルにマッチした駆動方式の車を選択することが大切です。
WEBでカンタン無料査定!
旧車の買取なら、ヴァ・ベーネにお任せ!
業歴35年は信頼の証!お急ぎの方はお電話でも承っております。