2022年7月8日
タイミングベルトは前兆なく切れる!劣化の原因や寿命、交換費用について
エンジンの動作プロセスに欠かせない部品、タイミングベルト。基本的に目視で確認することが難しい部品であるため、劣化の状態や交換のタイミングが分かりづらいという難点もあります。
車検時に指摘され、慌てて交換する方もきっと多いのではないでしょうか。
本記事では、車を構成する重要なパーツの1つであるタイミングベルトの基本をおさらいしつつ、劣化の原因や目安となる交換時期、交換費用に至るまで詳しく解説します。
目次
1 タイミングベルトは前兆なく突然切れる
早めに結論からお伝えしましょう。タイミングベルトは何の前触れもなく突然切れます。
タイミングベルトが切れ、エンジンの調子がおかしくなった時にはじめて劣化していたことに気づくというケースも多いようです。
例えば、車体を支え衝撃を吸収する役割を担うサスペンションの場合、走行時の揺れや異音などで劣化の状態をおおよそ判断できます。タイヤであればスリップサインの有無、バッテリーであればエンジンがかかりにくくなる等、程度の差こそあれど交換目安とされるサインはあるものです。
一方タイミングベルトの場合、残念ながら予兆といえるものはほとんど存在しません。
よく「キュルキュル」という異音がタイミングベルトの劣化サインとして紹介されることもありますが、これはエンジンの動力を補機に伝える「ファンベルト」という部品の劣化が原因であるケースがほとんど。
ちなみにタイミングベルトが切れるとエンジン内部の規則的なサイクルが乱れ、走行不能に陥ってしまいます。
2 タイミングベルトが切れるとエンジンが止まるのは何故?
そもそもタイミングベルトとは、クランクシャフトとカムシャフトを繋ぐゴム製*のベルトのこと。
*近年は金属製の「タイミングチェーン」と呼ばれる部品が主流になりつつあります。
エンジンの動力をクランクシャフトからカムシャフトへと伝達し、さらにシャフト同士のタイミングを調整するという非常に重要な役割を担っています。いきなり難解な部品の名称が登場してしまったため、まずは専門用語の意味を確認しておきましょう。
クランクシャフト | エンジン内部のピストンの往復運動を回転運動へと変換する部品 |
カムシャフト | クランクシャフトによって変換された回転エネルギーを使って、エンジン内部の吸気バルブや排気バルブを開閉させる役割を担う部品 |
タイミングベルトが劣化破損するとクランクシャフトとカムシャフトのタイミングが噛み合わず、エンジン内部の規則的なサイクルが乱れることで、エンジンがダメージを受けて停止してしまうことも。
しかしながら、シャフトのタイミングが噛み合わなくなる→エンジン内部のサイクルが乱れる→エンジンが停止する、という影響関係は一般的には少しイメージしづらいものです。
ここで一度、エンジンの基本となる動作サイクルについて確認しておきましょう。エンジン内部の仕組みに関する理解なしに、タイミングベルトの重要性を語ることはできません。
2-1 エンジンの基本となる「オットーサイクル」
“ブレーキペダルを踏みながらエンジンスイッチを押すとエンジンが始動する”、AT車の場合当たり前のように行うこの動作。特に深く考えることもなくエンジンを始動させているものです。
実はその一瞬の間に、一般的な4ストロークエンジンのシリンダー内部ではオットーサイクルと呼ばれるサイクルが繰り返されています。基本となるプロセスは「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」の4つ。
- 吸気 : まずクランクシャフトが回転し、そのエネルギーによってカムシャフトが回転すると「吸気バルブ」が開く。するとエンジン内部の「ピストン」と呼ばれる部品が降下し、空気とガソリンが混ざり合った「混合気」がシリンダーに送り込まれる。
- 圧縮 : さらにクランクシャフトが回転することでピストンを押し上げ、混合気を圧縮する。
- 燃焼 : 圧縮した混合気を点火プラグで着火し、爆発燃焼(スパーク)を起こす。このスパークにより、ピストンが再び降下する。
- 排気 : さらにクランクシャフトが回転し、そのエネルギーによってカムシャフトが回転することで今度は「排気バルブ」が開き、汚れた「排気ガス」を外へ排出する。この時再びピストンが上がる。
オットーサイクルによって発生したピストン運動によるエネルギーこそ、車を動かす原動力。
オットーサイクルにおいて、クランクシャフトはピストンの往復運動を回転運動へと変換し、この回転運動を受けて、カムシャフトがサイクルの要となる吸気・排気バルブの開閉を行なっているわけです。
2-2 クランクシャフト2回転につきカムシャフトは1回転
一般的な4ストロールエンジンにおけるサイクルでは、クランクシャフト2回転につきカムシャフトは1回転します。
タイミングベルトとは、言わば「クランクシャフト2回転につきカムシャフト1回転」という規則的なタイミングの調整を担う部品なのです。万が一クランクシャフトとカムシャフトのタイミングにズレが生じれば、吸気バルブと排気バルブの開閉するタイミングも乱れます。
「吸気」と「排気」を行うバルブの開閉タイミングが乱れれば、オットーサイクル全体も乱れ、もはやエンジンは正常な動作が行えなくなってしまうわけです。
タイミングベルトは、エンジンの動作において決して欠かすことのできない部品と言えるでしょう。
3 タイミングベルトの主な劣化原因
タイミングベルトは、他の部品の劣化の影響を受けやすいパーツと言えます。代表的な劣化原因として、エンジンオイルの劣化やクーラント液の残量低下、エンジン内部への浸水などが挙げられます。
3-1 エンジンオイルの劣化
エンジン内部を循環し潤滑油としての役割を担っているエンジンオイル。
しかしながら劣化したエンジンオイルのまま走行を続けると、摩擦抵抗が増え、タイミングベルトへのストレスが大きくなってしまうこともあります。タイミングベルトを劣化させないためにも、エンジンオイルの交換は3〜6ヶ月を目安に行うと良いでしょう。
3-2 クーラント液の残量低下
エンジンの動作によって発生する熱を冷却する役割を担っているのがクーラント液(冷却液)です。このクーラント液は、年に300ml程度は自然蒸発してしまいます。
クーラント液の残量が減ると、エンジンによる熱を十分に冷却できず、タイミングベルトがダメージを受けてしまうことも。そのまま放置すればタイミングベルトの劣化だけでなく、最悪の場合「オーバーヒート」を起こしてしまう可能性もあります。
走行の安全性を確保するためにも、定期的な点検・交換を必ず行いましょう。
3-3 エンジン内部への浸水
タイミングベルトの劣化要因の中でも特に気をつけたいのが、エンジン内部への浸水です。タイミングベルトはゴム製であるため、水分により急速に劣化してしまう可能性があります。
特に真夏はゲリラ豪雨によって冠水した道路をやむをえず走行した結果、エンジン内部に雨水が侵入することも。
エンジン内部への浸水は、タイミングベルトをはじめとした部品の劣化や腐食を加速させるだけにとどまらず、電気系統のショートによる出火の原因にもなるため、注意が必要です。
4 タイミングベルトの交換時期
タイミングベルトは、1年に1万km走行することを想定した場合に10年前後(走行距離換算で約10万km)で寿命を迎えると言われています。
気をつけたいのは「1年に1万km走行することを想定した場合」の話であるということ。連休に車で遠方まで出かける方や、ドライブが趣味の方は1年で走行距離が1万5千km以上に達することもよくあります。
乗車する頻度や1年あたりの走行距離次第では、10年待たずして早々に寿命を迎えることも。また前述した通り、車のメンテナンス状況次第ではタイミングベルトの劣化スピードも大きく変動します。
あくまで10年は目安として考え、自分のライフスタイルを考慮した上で定期的なメンテナンスを欠かさず受けるようにしましょう。
5 タイミングベルトの交換費用の相場
5-1 作業工賃込みで3〜5万円前後が相場
業者によって異なりますが、タイミングベルトの交換費用は1台当たり3〜5万円前後が相場と言われています。ゴム製のベルトの交換費用にそんなにかかるの?と驚かれる方も多いかもしれません。
実はゴム製のタイミングベルト本体の部品代自体は8千円程度。タイミングベルトの交換費用内訳の大半を占めるのが、作業工賃です。
タイミングベルトはエンジンの正常なサイクルに欠かせない部品です。しかも交換時にわずかでもズレがあれば、エンジンが動かなくなってしまう可能性もあります。また交換時には、エンジンを車から下ろして作業することもあるため、意外と手間がかかるのも事実。
専門のメカニックによる時間と手間のかかる作業が不可欠であるため、作業工賃も相応に設定される傾向にあるわけです。
5-2 「切れた後」では費用が跳ね上がる
タイミングベルトの交換費用は作業工賃の兼ね合いもあり、決して安いとは言えません。
しかしながらタイミングベルトが「切れる前」と「切れた後」では、修理・交換にかかる費用の桁が1つ変わってしまうこともあります。
そもそもタイミングベルトが切れてエンジンが動かなくなったということは、エンジンを構成するその他の部品も既に大きなダメージを受けている可能性があるということです。
そうなればタイミングベルトの交換だけでは済まず、別途部品代や作業工賃が発生します。万が一、エンジン自体を交換する必要がある場合には、50万以上の費用が発生してしまう場合も。
費用面と安全面の両方の観点から見ても、タイミングベルトは「寿命が訪れる前に交換する」ことが最も大切であると言えるでしょう。
6 近年は、強度を上げた「タイミングチェーン」が主流に
以前までのタイミングベルトはゴム製でしたが、最近は金属製の「タイミングチェーン」と呼ばれる部品が主流です。
基本的な役割は前述したタイミングベルトと同じですが、耐久性の面では金属製のタイミングチェーンに軍配が上がります。交換の負担も大幅にカットできるため、ユーザーにとってはメリットばかり。
ゴム製のタイミングベルトのように突然切れる、なんてことはほとんど起こり得ません。
ただし、これはあくまでタイミングチェーンに限った話。エンジンを構成する部品は、他にもたくさん存在します。耐久性が向上したからといって、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。
“その時”は突然に訪れる!定期的なメンテナンスが重要に。
タイミングベルトは、エンジンのサイクルにとって必要不可欠な部品です。
しかしながら一般の方では目視で確認できない上に劣化の予兆もないため、突然エンジンが動かなくなってからはじめてタイミングベルト切れたことに気づくケースもよくあります。
タイミングベルトが突然切れる「その時」が訪れる前に、定期的なメンテナンスを心がけることが大切です。
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