2020年11月27日
昭和の主流キャブ車。その仕組みや魅力、メリット、メンテナンス方法に迫る
残念ながら現在では生産されることが無くなってしまったキャブ車。
あまり聴き馴染みのない言葉かもしれませんが、昔の自動車には必ずキャブレターと呼ばれる燃料供給装置を搭載していました。現在では生産されておらず、これに代わるインジェクションと呼ばれるものが主流となっています。
今回はキャブレターを搭載したキャブ車にスポットを当て、その仕組みやインジェクションとの違い、これからキャブ車に乗りたい方に向けて解説していきます。
目次
1 昭和の名車が搭載していたキャブレターとは
キャブ車はキャブレターと呼ばれる燃料を気化する装置を搭載している車を指します。これは機械的な装置であり、電気を一切使用せずに動くことが特徴です。
1980年代までの車両には搭載されていることが多く、自動車やオートバイに積まれているエンジンの燃料供給はキャブレターが主流でした。
エンジンは各気筒で起こった爆発によって作動しますが、液体のままガソリンを燃やすと炎上するだけでスパークすることはできません。キャブレターがガソリンを霧状にし空気と混合させ、圧縮させることで爆発が起こるわけです。
現在では排ガス規制が厳しくなったことで廃止となり、電子制御式のインジェクションが開発されたことで現行車の主流になっています。
2 流体力学のベンチェリー効果を利用したキャブレターの仕組み
キャブレターは流体力学のベンチェリー効果を利用しており、エンジンから発生する負圧で燃料を吸い上げ供給する仕組みになっています。
ベンチェリー効果は流体の流れの断面積を狭めることで流速を加速させること。イメージしやすいのが、ホースの先端をつまむと水が勢いよく噴出するのと同じ原理です。
ガソリンが入り、霧状にするシステムと空気を供給するシステムが搭載されています。ガソリンはガソリンタンクから、空気はエアクリーナーを通ってキャブレター内に入り込む仕組みです。
ここではキャブレター内に入り込んだガソリンと空気がどのように混合し、エンジンへ送り込まれるのかを2つの段階に分けて解説していきます。
2-1 ガソリンを霧状にする
キャブレター内に送り込まれたガソリンは、霧状になり空気と混合します。ジェットニードルと呼ばれる、針に小さな穴が空いている部品を通り霧状に噴出。ちなみにこの小さな穴を調整することで、よりパワーを得られることから改造したい方にとってはここが重要なパーツの一つ。
キャブレター内がガソリンで満たされることでフローターが浮き、ニードルバルブが押し上げられます。
ここからガソリンが流れ込み、ジェットニードルの穴から霧状にガソリンが噴出されるわけです。
2-2 必要な空気を供給する
空気がなければ当然ながら爆発を起こすことはできません。
スロットルバルブとアクセルワイヤーが直接繋がっており、アクセルを開けるとスロットルバルブが開く仕組みになっています。これにより必要な空気が供給されます。
アクセルを開けるほど燃料が濃くなりますが、必然的に必要な空気量も増えていきます。供給される空気量が少なければ燃えなかったガソリンが火花を散らす役割のプラグに付着し、すぐに被ってしまうことに。逆に空気が多いとガソリンが足らずに爆発しないケースもあるので、絶妙な空気量の調整が必要です。
キャブレターから送られたガソリンと空気は、そのままエンジンへと供給されます。そこでプラグが発する火花により、爆発を発生させピストンが動く仕組みに。
この一連の運動が連続することでエンジンは回転し続けるわけです。
3 キャブ車のメリット・デメリット
3-1 チューニングのしやすさ、発生音が特徴のキャブレター
キャブレターの構成部品に電気部品は使われていません。シンプルな構造のため、個人でもメンテナンスが行えるだけでなくセッティング変更も決して難しくありません。そのため、故障の際にも安価に対応できるというメリットもあります。
またチューニングができることも魅力の一つ。気候や環境に合わせて微調整が可能で、自分好みにカスタマイズすることができる訳です。
例えば燃料を噴き出す量を調節し混合気の濃さを変更することで、エンジンの吹き上がりが重くなったり軽くなったりします。燃料を噴き出すジェットと呼ばれるパーツを調整すれば加速度も自由自在です。
もちろんやり過ぎるとプラグが焼きついたり、思うように加速してくれなかったりするため、試行錯誤を繰り返し最適なポイントを探る必要があります。
メーカーによってキャブレターの構造が違うため、発生する音が違うことが特徴。ファンによって好みのメーカーは異なり、音や運転感覚を楽しむ方がいるほど。
3-2 環境に影響を受けやすく、多くのエンジントラブルになることも
エンジンのコンディションや気圧や気温などの影響を受けやすいのはキャブレターのデメリットでしょう。
エンジンを最適な状態で維持するのが困難な場合も少なくありません。特に冬場はエンジンの始動性が悪く、雨や高所でエンジンの調子が悪くなってしまったり安定性に課題が残ります。
キャブレターは外気温が低下するとエンジンがかかりにくくなる欠点があります。また湿度にも影響されやすく、これが原因でエンジントラブルになることもしばしば。
その他にもランオンやオーバーフローといったトラブルにも見舞われます。
ランオンはエンジンを切っているにも関わらず燃料が消費されてしまう現象。シリンダー内に溜まった煤が点火した状態のままになり、キャブレターが誤作動して燃料を送り続けてしまうことで発生してしまいます。
オーバーフローはキャブレターに燃料を貯めるチャンバー室のバルブが劣化したり、ゴミが詰まったりすると燃料の供給が止まらず、キャブレターから溢れ出す現象のこと。
溢れ出した燃料はエンジン内部に広がり、エンジンオイルを劣化させエンジンが焼き付く原因になってしまいます。
4 現在の主流のインジェクションとの違い
4-1 インジェクションとは
インジェクションはコンピューターが気温や気圧、酸素量などを測定し必要な燃料を正確に噴射することができます。緻密な燃料制御により燃費の改善や排気ガスに含まれる有害物質の削減を実現しており、排ガス規制に対応する欠かせない装置。
キャブレターとインジェクションは同じ燃料噴射装置ですが、機械式と電子式という大きな違いがあります。インジェクションは気温や気圧などの環境変化に応じて燃料の噴射量を自動で調節してくれることがポイント。
これによりキャブレターにはない場所や季節に影響されずに安定したエンジンの稼働を可能にしています。
4-2 インジェクションに移行した理由
インジェクションに変更した大きな理由としては排出ガス規制が大きく関係しています。
ガソリンの燃焼は、空気と燃料の比率が14.7:1の時に、有害物質の発生量を抑えることが可能です。しかしながらキャブレターは細かなセッティングを実施しても14.7:1の空燃比を維持し続けることはできません。キャブ車から排出されるガスには多量の有害物質が含まれてしまうわけです。
一方でインジェクションであれば、排出ガス内の酸素濃度を測定しながら適切な燃料噴射量を決定できる仕様になっています。
環境問題の点から排出ガス規制が年々厳しくなり、キャブ車は新車で販売されることは残念ながら無くなりました。
5 キャブレターのメンテナンス方法
キャブレターは前述した通りシンプルな構造なため、知識があればメンテナンスも自分で行えることが魅力の一つ。
メンテナンス方法は、まずパイロットスクリューを取り外して内部通路にスプレーを吹き付けて洗浄します。スクリューが汚れていることで、アイドリングも悪くなるので注意が必要です。次にフロートチャンバーを取り外します。これはフロートピンやフロートバルブなどから設計されているので、全て取り外して洗浄します。その際にフロートバルブは摩耗が発生していないか、段差が大きくなっていないかを確認することがポイント。
メインジェットも取り外し、クリーナーで洗浄します。スロージェットも取り外しますが、たまに固化したガソリンで閉じていることがあります。その場合はハリガネなどで固化したガソリンを除去しジェット類と共に洗浄液に浸けておきましょう。
これがキャブレターの基本的なメンテナンス方法ですが、パーツを全てバラして洗浄液に漬け置きする方法もあります。メリットとしては分解と結合の手間がかかってしまいますが、その分だけキャブレターの汚れを徹底的に落とすことができること。
細かい作業も必要になるため、慣れていないと比較的時間がかかってしまいます。また、メンテナンス後の調整も難しい場合があるかもしれません。またメンテナンスに慣れていないと、部品の戻し方がわからなくなる可能性も。不安な場合は業者などに依頼するのがおすすめです。
6 今からキャブ車に乗りたい!なんて方は2つの方法が
前述した通り、現在の車はインジェクションが主流になっており、キャブ車が新しく販売されることはありません。今からキャブ車を所有したい方は2つの方法があります。
一つ目の方法は、まずは中古のキャブ車を購入することです。もちろん流通している台数は少なくなりますが、出回っていることもあるため探してみるのもおすすめ。
しかし初度登録から20年程度経過しているため、自動車税や自動車重量税が重課されることがほとんど。
またインジェクション車に比べ燃費が悪くなることがネックです。キャブレター以外のパーツも寿命が近いことが多いので交換するコストがかかってしまうケースも。
二つ目の方法は、現在の車のインジェクションからキャブレターに載せ替える方法です。
載せ替える際はボンネットを開けるだけではなく、ドライバー側のフロントパネルも外す必要があるため大掛かりな作業になることを覚えておきましょう。
知識があれば自分でも交換は可能ですが、基本的には専門業者に依頼することをおすすめします。
当然ながら車検を受ける必要がありますが、その際に排出ガス検査をクリアしなければいけません。審査を受けた上で構造変更申請の手続きを行いましょう。
構造変更について詳しく知りたい方はコチラも併せてご覧ください。
キャブレターに載せ替えた車は「改造車」の扱いになるので、手放す際に依頼する業者によっては断られるケースや査定額が大幅に低くなってしまうなんてことも覚えておきましょう。
ヴァベーネはキャブ車でも買取や修理が可能です。また自社工場を完備しているので、インジェクションからキャブレターへの載せ替えの対応も承っています。
手放したい方も乗り続けたい方も、検討の際は是非一度ご相談ください。
インジェクションと異なる独自の魅力あるキャブレターもカーライフの選択肢に
今回はキャブ車について仕組みやインジェクションとの違いについて解説してきました。
現在では生産中止となりましたが、キャブレターの魅力である音や乗り心地に魅了されたファンが多く存在しています。シンプルな構造なため自分好みにチューニングできるあたりがくすぐられるポイントです。
現在ではインジェクション車が主流ですが、一度はキャブ車を体験してみるのも面白いかもしれませんね。
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