2020年12月4日
車におけるアライメントとは?その重要性から構成する3つのポイントを紐解く
車を運転時にハンドルから手を離した際に、真っ直ぐにしているつもりでも斜め方向に走行してしまうなんて経験をされた方も多いのでは。これはホイールアライメントが狂っている可能性があります。もちろんそのままにしておくと車にとってもよくないこと。
また車検時などで整備士からアライメント調整を勧められた方も多いはず。しかしアライメント調整について理解しないまま実施してしまっている方も多いのではないでしょうか。
今回はアライメントについて概要から調整することでのメリット、一般的な相場についてまで詳しく解説していきます。
目次
1 アライメントとは
アライメントは自動車のホイールの整列具合のことで、正式名称はホイールアライメント。サスペンションやステアリングのシステムを構成する部品が、どのような角度関係で車に取り付けられているのかを示すものです。
角度の種類は「キャスター角」「キャンバー角」「トー角」の3つの要素から構成されています。
車の運転時の直進時やコーナーリング時などの走行を安定させ、タイヤの偏摩耗を軽減させることが目的。特定の積載量や走行速度において、良好な状態となるように設定と調整がされています。
またその設定を変更したり調整し直すことをアライメント調整と言います。
2 アライメントを構成する3つのポイント
アライメントには前述した通り、「トー角」「キャスター角」「キャンバー角」の3つの要素がポイントです。これらの要素はそれぞれの角度を調整することで、走行性能に大きく影響を与えます。
ここではアライメントに関係する3つの要素について説明していきます。
2-1 直進性とコーナリング性能に大きな影響を与える「トー角」
トー角はトーインとトーアウトに分類され、自動車を真上から見た時のタイヤの傾き角度のこと。自動車をまっすぐに走行させるために調整し、ここがずれていると直進性やコーナーリング性能に影響を与える大切な部分。
トーインは進行方向に対して内側に傾いている状態のことで、直進安定性が向上。逆にトーアウトは外側に傾いている状態を指し、これに設定することでハンドリングが向上します。前輪のトー角は車種によって異なりますが、後輪はトーゼロが一般的です。
また前輪のトー角は「フロントトー」と呼ばれ、後輪は「リアトー」と呼ばれています。トー角を表す単位は日本であればmmで表記されることが多く、海外の場合は角度で表すことがほとんど。通常のトー角は0度から、ややトーインの状態に調整されていることが正常の状態です。
ただ、レーシングカーなどの競技車両は意図的にトーアウトに設定されており、他のアライメントと調整することでコーナーリング性能を向上しながらも直進安定性も損なわないように設定されてます。
2-2 コーナリング性能に大きく関係している「キャンバー角」
キャンバー角は、車を真正面から見た時の地面に対するタイヤの傾き角度のこと。
カタカナの“ハ”の字の様に、内側にタイヤが傾いている場合は「ネガティブキャンバー」。逆に外側にタイヤが傾いているのであれば「ポジティブキャンバー」と言います。
キャンバー角はアライメントの中でも、走行時に大きく関係している箇所。ネガティブキャンバーに設定することで、コーナーリング時のグリップ力が向上することがメリット。ただ、タイヤの偏摩耗や直進安定性が低下する危険性があることを覚えておきましょう。
また一部の改造車ファンに人気を集めているのが「鬼キャン」と呼ばれるもので、極端にネガティブキャンバーにするもの。違法改造になる場合もありますが、レーシングカーのようなカッコイイ見た目などから愛好者も多い改造方法です。
ポジティブキャンバーに設定することで、キングピンオフセットが少なくなりハンドルが軽くなることがポイント。現行車では採用されることはほとんどありませんが、パワーステアリングがない旧車に多く採用される場合がほとんど。コーナーでの踏ん張りが弱くなり、コーナーリング時の性能低下を招くデメリットがあることを覚えておきましょう。
2-3 直進安定性に大きな影響を与える「キャスター角」
キャスター角は前輪を真横から見た際の、操舵の回転軸であるキングピン軸の傾き角度のこと。これを調整することで走行時にふらつきの少ない、高い直進安定性が得られることが特徴。車の発進時の抵抗も少なくなるため、より軽い力で動き出せるという効果も。
カーブを曲がる際にハンドルを切り、手を緩めるとハンドルが元の位置に戻ろうとするのもキャスター角がついているためなんです。
角度を後方に付けると「プラスキャスター」で、前方に傾けると「マイナスキャスター」と呼ばれます。角度を付けることで直進安定性が向上します。
しかしながら、傾けすぎると横からの風圧に対して直進安定性が発揮されにくくなることを覚えておきましょう。また前輪の回転半径が大きくなるため小回りが利きにくく、狭い道や曲がりくねった道路を走行するには不向き。一般道を走行するのであれば、メーカーの定める基準値を超えない範囲内で設定することをおすすめします。
タイヤが前方から強い衝撃を受けた場合、キャスター角がズレてしまうため直進安定性が悪くなることも。そのような場合は、前述したトー角とキャンバー角のアライメント調整を行いましょう。
3 アライメント調整とアライメントが狂う4つの原因
3-1 アライメント調整とは
アライメント調整は自動車の車体構造と外装パネルの歪み具合やその修正のことを指し、車に装着されているタイヤを新車時の正常な設定に復元すること。
新車購入時であればアライメントは適切な数値に調整されています。しかし時間が経過すればするほど車軸の向きにズレが生じてしまいます。また脱輪や車高を変えた場合でもアライメントの調整が必要になることを覚えておきましょう。
前述した通り車を運転する際の走行時やコーナーリング時、車を止める動作にはホイールアライメントが大きく関わっています。アライメントが狂った状態にしてしまうとタイヤの寿命が短くなったり、走行時のパフォーマンスが悪化してしまうことを覚えておきましょう。
3-2 アライメントが狂ってくる4つの原因
タイヤは地面に対して内側も外側も平均して接地していないといけません。しかしアライメントが狂ってくるとタイヤの一方だけが強く接地してしまい、これがタイヤの片減りの原因となるわけです。またタイヤは左右とも平行でなければいけませんが、わずかに左右の角度がずれてしまうことで直進性に悪影響を与えることも。
アライメントが狂ってくる原因は以下の通りです。
- 経年劣化によるサスペンションのゴムブッシュの劣化
- 縁石などの段差に強く乗り上げる
- 車高を上げたり下げたり調整した
- ホイールを太いものに変更
上記以外にも原因は考えられますが、運転時にハンドル操作に違和感を感じたりした場合はアライメントを疑いましょう。また異常を感じられなくてもタイヤの片減りを発見したら、ホイールアライメントが狂っている可能性があります。
4 どのような場合に調整が必要?
4-1 アライメント調整が必要なポイント
アライメント調整が必要なポイントは、車の運転時にハンドルをしっかり握っていないと自動車がまっすぐに走行しない場合です。またカーブを曲がる際に車体がフラフラするなどの状況があればアライメント調整を行いましょう。
万が一事故に遭った場合も、その衝撃でホイールアライメントが崩れる可能性が考えられます。車体や部品の修理はもちろんですが、アライメントの調整も考えましょう。また大きな事故だけではなく、縁石にタイヤを激しくぶつけた際や溝にタイヤを落とした場合などもアライメントが乱れることがあるので注意が必要です。事故の大小関係なく、このような状況が起きた場合はアライメントが狂っていないかを疑いましょう。
車の使用年数もアライメントに影響してきます。長年乗車してきた自動車は、タイヤの取り付け角度に少しづつズレが生じてきます。
車の車高を高くしたり低くする場合も、アライメントの調整が必要になることを覚えておきましょう。またサスペンションなどの足回りの部品を脱着したり、交換した場合でもアライメント調整が必要です。
4-2 「キャンバー角」「キャスター角」「トー角」がズレていると起きる問題点と判断方法
車から降りて取り付けられているタイヤを見ます。片側のタイヤだけが反対側と比べ極端に摩耗しているのであれば、アライメントのバランスが崩れている可能性があります。
キャンバー角がズレていると車が真っ直ぐ走行できなくなります。また、ブレーキをした際に自動車が左右に流れたりすることも。これはキャスター角やトー角がズレていても同様なことが発生します。
キャンバー角がズレていると、タイヤの端が極端に摩耗することも。これは地面に対して角度がつくため、タイヤが地面に均一に接地しなくなるためです。タイヤの端が極端に摩耗している場合は、キャンバー角がズレていないか点検しましょう。
キャスター角がズレている場合、特にブレーキング時に顕著に現れます。そのような場合はキャスター角のズレを疑いましょう。
トー角がズレていると、角度の大きいほうに押し出されて車が曲がってしまいます。トー角はタイヤの左右の向きを表しているので、右後輪のトー角が左後輪よりも大きい場合、右から押し出されて車は右に曲がってしまう訳です。
また、直線に対して強い角度がついた状態になるので、タイヤも偏摩耗を起こしやすくなります。どこかのタイヤが極端に減る場合は、トー角のズレを疑いましょう。
5 アライメントの調整を行う理由
アライメント調整を行うことで、運転時や車の性能に生まれるメリットは様々。タイヤが地面にしっかり接地するようになり、走行性能が向上し燃費もよくなることがメリットです。
しかしアライメントのバランスが崩れたままだとタイヤの一部を引きずったような状態で走行することになるため、走行性能が悪くなり同時に燃費も悪くなることを覚えておきましょう。
タイヤが片側だけ極端に摩耗した状態だと、サスペンションなどの足回りの部品にも影響を及ばします。またタイヤが地面に均一に接地することで、タイヤの摩耗が均等になることもポイントの一つ。
アライメントのバランスが崩れていると、走行時に不安定となりまっすぐ走行できなかったりカーブが曲がりにくくなったりなどのデメリットも考えられます。
このようにアライメント調整することでハンドル操作が楽になり、快適な運転を楽しむことができるわけです。
6 アライメント調整の料金の相場
アライメント調整を自分で行いたいと考えられる方も多いのでは。自動車整備に関係する工具や知識、技術がなければ行うことは難しいでしょう。
また工具や知識、技術があったとしても整備士の資格がなければ分解整備を行うことができないので、アライメント調整に分解整備が伴う場合はできません。
つまりアライメント調整を実施するのであれば業者に依頼することをおすすめします。アライメント調整を行う際はアライメントテスターと呼ばれるタイヤの位置や角度を測定する設備を用いて実施します。タイヤ量販店やディーラー、整備工場でもアライメント調整を実施してくれるところがあるので事前に問い合わせてみましょう。
しかし、場所によっては測定器や経験のある整備士がいないなどの理由から下請けに出させることもあり、時間が通常よりかかってしまうことも。
一般的なアライメント調整の料金相場は「測定料金」「調整料金」の2つに分類されている場合と測定と調整込みで行ってくれるところもあります。測定と調整込みで15,000〜20,000円ほどが相場です。
依頼する場合は測定と調整を合わせた金額なのか、別々でのコストなのかを確認しておきましょう。
まとめ
今回はホイールアライメントについて解説してきました。
アライメント調整を行わずに運転を続けることでのデメリットは様々。しかし調整を実施することで得られるメリットも多いことが魅力です。
まだ一度もアライメント調整を行ったことがないなんて方も、これを機会に自分の愛車と向き合ってみてはいかがでしょう。