コンバートEVによるクラシックカーの変化

近年、脱炭素社会の実現に向け、世界中で電気自動車（EV）の普及促進が進んでいます。この流れを受け、多くの自動車メーカーはガソリン車・ディーゼル車からの脱却を意識し、EV開発に注力するようになりました。

EVといえば新型モデルが注目されがちですが、近年、クラシックカーをEVに改造する「コンバートEV（コンバージョンEV）」も注目を集めています。

今回はコンバートEVについての魅力や課題、実施する際の費用感について触れていきます。

1 コンバートEVとは？

コンバートEVは、従来のガソリン・ディーゼル車から不必要な部品を撤去し、代わりに電動モーター制御装置やバッテリー、および特定の専用コンポーネントを搭載することでEVに変換する技術です。

この技術は、騒音や環境への影響、部品供給の問題で維持が困難になったクラシックカーを復活させ、再利用する手段として注目を集めています。

コンバートEV化された車は、性能面での向上が期待できます。例えばモーターの出力が10kW、車体重量が640kgのあるモデルの場合、0-100km/h加速が7.0秒と、標準的な車よりも迅速かつ顕著な加速性能を実現します。

2 コンバートEVの魅力

2-1 幅広いカスタマイズ性を楽しめる

コンバートEVの大きな魅力は、バッテリーやモーターといった部品を自由に組み合わせ、車両のパフォーマンスを向上させられる点にあります。例えば、より高速なEVを目指すのであれば、モーターとインバータの組み合わせを調整することで実現可能です。

また、長距離を走行したい場合は、単純にバッテリーの容量を増やすことで対応可能。技術の発展に伴い、将来的にはより高いエネルギー密度を持つバッテリーが開発されることで、コンバートEVのさらなる性能向上が期待されるでしょう。

2-2 環境へ配慮できる

コンバートEVにすることで、排気ガスの排出を抑えることも魅力の一つ。環境への配慮という観点から敬遠されがちなクラシックカーですが、コンバートEVによってこの懸念がなくなるのは、車好きにとって大きなメリットと言えるでしょう。

さらにコンバートEVは電気を利用して駆動するため、ガソリンの購入が不要になり、経済的なメリットも期待できます。

2-3 運転初心者でもクラシックカーに触れられる

クラシックカーの多くはマニュアルトランスミッションを採用しており、操作に慣れていない人にとっては運転が困難でした。またクラシックカーは、こまめかつ丁寧なメンテナンスが求められます。

しかしコンバートEVにすることで、マニュアル操作に慣れないドライバーでも、ドライビングを楽しむことができます。

2-4 クラシックカーにおけるメンテナンスの課題がない

クラシックカーを維持する上で大きな課題となるのが、メンテナンスです。特に年代物の車は、パーツの入手が困難な場合も少なくありません。仮に部品が見つかっても、専門的な知識が必要なため修復が難しいという問題も考えられます。

しかし、コンバートEVの技術を利用することで、部品の入手が容易になるだけでなく、故障の可能性も減少し、より安心して使用できるようになるでしょう。

3 コンバートEVと費用の関係性

コンバートEVは自力で交換することは難しいため、専門業者に依頼する必要があります。その際に車種・製造年・バッテリー容量・理想とする航続距離、車検の必要性などによって費用は大きく変動します。

年式が古いクラシックカーの場合、EVへの変換に加え、各部品の修理が必要になるため、費用が高くなる傾向に。

例えば、イギリスでの改造費用は一般的に500万円から600万円程度。日本では、アップデートエナジーが提供する「ecova」というサービスが300万円から1,500万円の範囲で提供されています。

費用を抑える方法としては、補助金の活用が検討されます。日本の一部地域では、コンバートEVがエコカー補助金の適用対象となっていることも。経済的な負担を軽減したい方には有効な選択肢となるでしょう。

コンバートEVでクラシックカーの魅力を現代に

EVの普及が見込まれる今後において、ガソリンやディーゼルを動力源とする車が減少していく可能性があります。そんな中、クラシックカーが持つ魅力を現代に引き継ぎ続けるための手段として注目されるのが、コンバートEV。

クラシックカーは、古い車ゆえにさまざまな課題や懸念があります。しかし、コンバートEV技術によって、これらの課題をEVへの切り替えによって解決することができます。

旧車好きにとってコンバートEVは、愛車を現代の環境に適応させ、今後も安心して楽しむための選択肢となるでしょう。