2025年1月3日
スピード(速度)違反の違反点数や罰金について|免許停止・取消しは何点から?
2023年度の交通違反の中でも全体の約16%と、多くの割合を占めるスピード(速度)違反。正式には速度超過違反と言います。
普段から車に乗っている方は、気付かないうちについつい速度を出し過ぎていてスピード違反で捕まってしまったなんて経験のある方も少なくないはず。
そしてスピード違反と聞くと違反点数や反則金・罰金、どうやって速度を計測しているのか、なんkm/h超過から取り締まられるのかなど、数々の疑問が思い浮かびます。
ドライバーなら理解しておきたい情報ではあるものの、知るべき点が多いのはもちろんのこと、仕組みに関しても複雑な箇所が多々あり、それらを正確に把握するのは容易ではありません。
そこで、今回はスピード違反についておさえるべきポイントを5つの章にまとめ、表を交えながらわかりやすくお伝えします。
目次
1 道路交通法における最高速度・最低速度と法定速度について
1-1 最高速度と法定速度について
そもそも最高速度は、道路交通法第22条において以下のように定められています。
道路交通法第22条 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。 |
わかりやすく言うと最高速度とは、道路標識・標示にて指定されている最も速く走れる速度のことを指します。つまり、一般的に制限速度や指定速度を意味します。
一方、道路標識・標示にて指定されていない区間の場合は、政令で定められた最高法定速度(法定速度)が適用されます。
そして、法定速度は一般道路と高速道路で異なるのがポイント。
具体的な法定速度は以下の表の通り。
車種 | 法定速度 | |
一般道路 | 高速自動車国道(高速道路) | |
大型乗用自動車 普通乗用自動車 軽自動車 大型自動二輪車 普通自動二輪車 |
60km/h | 100km/h |
大型貨物自動車 大型特殊自動車 トレーラー |
60km/h | 80km/h |
125cc以下の普通自動二輪車 | 60km/h | – |
原付 | 30km/h | – |
緊急自動車 | 80km/h | 100km/h |
新東名高速道路や東関東道をはじめとした高速道路の一部区間では、最高速度規制が120km/hまたは110km/hとなっている場合もあります。
ただし、登坂車線は本線に含まれないため、一般道と同じく60km/hとなるため注意しましょう。
そして、2026年9月1日からは一般道路の中でも速度規制がなく中央線や中央分離帯などがない区間、いわゆる生活道路において、法定速度を30km/hと定める道路交通法施行令の改正が実施されることが2024年7月23日に閣議決定されました。
現在の道路交通法では、生活道路であっても道路標識・標示にて最高速度が指定されていない場合、60km/hで走行可能です。
この改正は、学校が近くにあったり、徒歩、自転車の利用が主な生活道路の安全確保が目的とされています。
1-2 最低速度について
ドライバーは最高速度や法定速度だけではなく、最低速度にも気をつけなければなりません。
高速道路では、一般道よりも速い速度での走行を基準としているため、一定以下のスピードでの運転はかえって危険です。
そのため、道路交通法第75条の4及び道路交通法施行令第27条の3において、50km/hと定められています。
道路交通法第75条の4 自動車は、法令の規定によりその速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合を除き、高速自動車国道の本線車道(政令で定めるものを除く。)においては、道路標識等により自動車の最低速度が指定されている区間にあつてはその最低速度に、その他の区間にあつては政令で定める最低速度に達しない速度で進行してはならない。 |
道路交通法施行令第27条の3 法第七十五条の四の政令で定める最低速度は、五十キロメートル毎時とする。 |
そして最低速度は道路交通法第23条により、一般道においても一部区間で設けられているのがポイント。
道路交通法第23条 自動車は、道路標識等によりその最低速度が指定されている道路(第七十五条の四に規定する高速自動車国道の本線車道を除く。)においては、法令の規定により速度を減ずる場合及び危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その最低速度に達しない速度で進行してはならない。 |
一般道の最低速度とは、道路標識・標示などにより指定された最低速度のことを指します。
最低速度の標識は、一般的な最高速度の標識の数字の下部に青線が引かれたデザインです。最高速度の標識と間違えやすいため注意しましょう。
2 スピード違反は何km/hから?
最高速度や最低速度、法定速度について理解すると「何キロ超過からスピード違反になるのか」と、その定義に疑問を持つ方も多いはず。
結論から言うと、取り締まりの対象となるのは1km/hの速度超過から。
後述のスピード違反に対する反則金や違反点数を見ると、1km/h超過に対し1点の違反点数と9,000円の反則金が設けられています。
ところが実際の取り締まりでは、15km/h未満の速度超過の場合はほとんど取り締まりが実施されていません。
警察省が公表している2023年(令和5年)度の道路交通法違反取締り状況を見てみましょう。
超過速度 | 取締り件数 | 割合 |
50km/h以上 | 12,508件 | 1.41% |
30km/h以上50km/h未満 | 122,218件 | 13.76% |
25km/h以上30km/h未満 | 183,204件 | 20.62% |
20km/h以上25km/h未満 | 292,723件 | 32.95% |
15km/h以上20km/h未満 | 277,769件 | 31.26% |
15km/h未満 | 78件 | 0.01% |
合計 | 888,500件 | 100.00% |
表を見てわかる通り15km/h未満の超過に関しては78件のみにとどまり、全体のうちのおよそ0.01%と、ほとんど取り締まられていないことがわかります。
その反対に多くの割合を占めるのが、15km/h以上20km/h未満の27万7,769件と、20km/h以上25km/h未満の29万2,723件、25km/h以上30km/h未満の18万3,204件です。
これらの15〜29km/hの速度超過の取り締まり割合は、なんとスピード違反全体のおよそ85%にも及びます。つまり15km/h未満の速度超過であれば、取り締まられる可能性は極めて低いと言えるでしょう。
3 スピード違反の違反点数や反則金・罰金
スピード違反で取り締まられた場合の違反(反則)点数、反則金・罰金は、超過速度によって異なります。
詳しくは以下の表をご覧ください。
超過速度 | 点数 | 反則金(普通車) | ||
一般道路 | 高速道路 | 一般道路 | 高速道路 | |
15km/h未満 | 1点 | 9,000円 | ||
15~20km/h未満 | 1点 | 1万2,000円 | ||
20~25km/h未満 | 2点 | 1万5,000円 | ||
25〜30km/h未満 | 3点 | 1万8,000円 | ||
30~35km/h未満 | 6点 | 3点 | 6~8万円 | 2万5,000円 |
35~40km/h未満 | 3点 | 3万5,000円 | ||
40~50km/h未満 | 6点 | 裁判によって 罰金額が決定 |
||
50km/h~ | 12点 | 6~10万円 | ||
最低速度違反 | 1点 | 6,000円 |
スピード違反の再犯や危険運転など、悪質だと判断された場合には罰金刑のみならず、6ヶ月以下の懲役が科せられる可能性も。
高速道路での速度超過の罰金の場合は、違反者の態度、反省度合い、速度違反の状況などを考慮した上で金額が決められます。
それでは、反則金と罰金の違いについて見ていきましょう。
3-1 反則金について
交通違反では通常、刑事手続きにおける公訴提起(起訴)がなされます。
しかしながら、スピード違反は交通違反の中でも取り締まり件数が多いため、一般道で速度超過が30km/h未満、高速道路で40km/h未満の場合には交通反則通告制度に基づいた行政処分が行われます。
30km/h未満の速度超過で取り締まりを受けた場合には反則告知を受け、警察官から交通反則告知書(通称:青切符)および納付書が渡され、反則金の支払いが命じられます。
この反則金を指定された期間内に納めることで、違反点数は免れないものの、刑事責任については追及さないのがポイントです。
3-2 罰金について
一般道路で30km/h以上、高速道路で40km/h以上のスピード違反をした場合は、告知票・免許証保管証(通称:赤切符)が交付されます。
これは無免許運転や轢き逃げなどと同じく、刑事上の責任が免除されない重大な違反に対して交付され、その処分は行政処分ではなく刑事処分となります。
赤切符が交付されるとまずは検察庁への出頭が命じられ、裁判によって罰金額が言い渡されます。
そしてこの罰金は刑事事件上の罰則となるため、交通前科がついてしまうのも特筆すべきポイントです。
赤切符が交付される交通違反の目安は6点以上。つまり一般道で30km以上、高速道路で40km以上の重大なスピード違反に対して用いられます。
4 一発で免停・免許取消しになるケース
4-1 前歴回数ごとの免許停止・取消になる違反点数について
前述の通りスピード違反の違反点数は、超過速度に応じて変動します。
そもそも運転免許の点数制度は、減点方式ではなく累積方式。過去3年以内の違反点数の合計及び前歴(過去3年以内運転免許停止などの回数)によって免許停止・取消し処分が下されます。
免許取消し処分には、運転免許の取得ができない欠格期間が発生するのもポイントです。
前歴回数ごとの免許停止・取消になる違反点数については、以下の表を参考にしましょう。
処分 | 期間 | 前歴(過去3年以内運転免許停止などの回数) | ||||
0回 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回以上 | ||
免停 | 30日 | 6〜8点 | – | – | – | – |
60日 | 9〜11点 | 4〜5点 | – | – | – | |
90日 | 2〜14点 | 6〜7点 | 2点 | – | – | |
120日 | – | 8〜9点 | 3点 | 2点 | – | |
150日 | – | – | 4点 | 3点 | 2点 | |
180日 | – | – | – | – | 3点 | |
免許取消し (欠格期間) |
1年 | 15〜24点 | 10〜19点 | 5〜14点 | 4〜9点 | |
2年 | 25〜34点 | 20〜29点 | 5〜24点 | 10〜19点 | ||
3年 | 35〜39点 | 30〜34点 | 25〜29点 | 20〜24点 | ||
4年 | 40〜44点 | 35〜39点 | 30〜34点 | 25〜29点 | ||
5年 | 45点以上 | 40点以上 | 35点以上 | 30点以上 |
過去3年以内に免許停止や取消しなどの前歴がないドライバーの場合は、免停となるのは6点以上、免許取消しとなるのは15点以上と覚えておきましょう。
一方、前歴のあるドライバーの場合はスピード違反の常習性が認められることから、前歴のないドライバーとは異なります。
表の通り前歴が増えるにつれ、免停や免許取消し処分が下される基準となる違反点数は少なくなっていきます。
直近の違反から1年間、無事故・違反の場合、違反点数に関してはリセットされるものの、重大な違反の場合は一発免停や免許取消しになるケースがあるため注意が必要です。
4-2 一発で免停になる場合
先の表の通り、免停になる基準は前歴のないドライバーで6点です。
つまり、1度で6点以上の違反をしてしまった場合は、前歴(過去3年以内運転免許停止などの回数)に関係なく一発で30日間の免停処分が下されます。
スピード違反において6点以上の違反にあたるのは、一般道路で30km/h以上、高速道路で40km/h以上の速度超過です。
さらに免停は、ドライバーの前歴に応じて徐々に厳しい処分が下されるのがポイント。
前歴が1回のドライバーは4点で60日間、2回のドライバーは2点で90日間、3回のドライバーは2点で120日間、4回のドライバーは2点で150日間と、前歴に応じて徐々に下がり、免停期間は伸びていきます。
たとえ前歴がないドライバーでも、6点以上の刑事処分となる重大な違反をすると免停処分となってしまうと覚えておくと良いでしょう。
4-2 一発で免許取消しになるケース
一発で免停になるのは前歴のないドライバーで6点が基準です。
一方、一発で免許取消し処分が下される基準となる違反点数やその欠格期間は、前歴のないドライバーの場合15点で1年間。
つまり、スピード違反の最高点数は50km/h超過した際の12点とされているため、前歴のないドライバーは一発で免許取消し処分が下されることはありません。
しかしながら、前歴が1回のドライバーは10点で1年間、2回のドライバーは5点で1年間、3回以上のドライバーは4点で1年間の免許取消し処分が下されます。
このように前歴のあるドライバーの場合は、一発で免許取り消し処分が下されることがあるため注意が必要です。
5 スピード違反の取り締まり方式
スピード違反の取り締まりには、主に以下の3つの方式が用いられています。
- 定置式(ネズミ取り)
- 追尾による取り締まり
- オービス
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
5-1 定置式(ネズミ取り)
一般的にネズミ取りと言われている測量器を使用したスピード違反取り締まり方式の正式名称は、「定置式速度取締」です。
この取り締まり方式では、レーダ式と光電式、レーダパトカーを用いた3つの方法が用いられています。
レーダー式の場合は1ヶ所にスピードを測定するための機器を設置し、車が通過した時の速度を計測することによりスピード違反を取り締まります。
光電式の場合は2地点に器具を設置し、車がその区間内を通過した時の速度を計測することによりスピード違反を取り締まる方法です。
レーダー式と光電式では区間内に現認のための警察官、出口側の先に停止のための警察官を配置して、スピード違反した車両を停車させるのが特徴です。
そのため、スピード違反車両を現場で停止させるスペースや、警察官の配置、違反車両を案内するスペースが必要となります。
3つ目のレーダーパトカーによる速度計測は、パトカーのルーフに搭載された車載式レーダーを用いた方法です。
スピード違反の疑いがある車両に対して、停車したパトカーで待機する警察官がレーダーから電波・レーザーを対象の車両へと発射してスピードを計測。スピード違反が認められた場合、追跡して取り締まる方法です。
5-2 追尾による取り締まり
追尾による取り締まりは正式には追尾式と呼ばれ、その名の通りパトカーや白バイ、覆面パトカーなどでスピード違反が疑われる車両を追跡し、スピード計測・取り締まりを行う方法です。
現在のスピード違反の取り締まり方法のうちおおよそ半分程度がパトカーによる追尾式とされ、高い割合を占めます。
この追尾式の取り締まりでは、スピードの測定方法などに明確なルールが定められているのがポイント。また、一般道路と高速道路でそれぞれ基準が異なっているのも特徴です。
追尾式取り締まりのルールは以下の通り。
追尾式取り締まりのルール | |
一般道路 | 約30mの車間を保持し、約100mの追尾 |
高速道路 | 約50mの車間を保持し、測定開始から測定終了まで約300mの間を追尾 |
追尾式の取り締まりでは、一般道路と高速道路それぞれの基準に則り、速度測定器のストップメーターを用いて違反が疑われる車の速度を測定。
超過速度を確認してスピード違反が認められたらサイレンを鳴らし追跡し、取り締まりが実施されます。
5-3 オービス
オービスとは、正式名称「速度違反自動取締装置」。路上に設置された速度計測機とカメラで、速度超過した車両を撮影・記録する装置のことを指します。
24時間365日稼動しているのに加え、警察官の配備は必要なくスピード違反の取り締まりが可能です。
スピード違反が認められ、撮影された車両のドライバーには後日郵送で違反通知が届きます。
オービスが設置されている場所の手前には、ドライバーにあらかじめ注意喚起するための予告看板が設置されています。一般道路で30km/h以上、高速道路で40km/h以上の速度超過に反応して光り、撮影されるとされていますが、その限りではありません。
近年では小型化され、簡単に移動させることができる移動式オービスも登場しています。この移動式オービスは生活道路に設置されることもあり、15km/h超過でも測定されるとも言われています。
交通違反の取り締まりの効果
今回は基本的な最高速度・最低速度と法定速度や、スピード違反の違反点数、罰金、取り締まりなどについてお伝えしました。
スピード違反の取り締まり対象となるのは1km/hの速度超過からですが、実際には15km/h未満の速度超過はほとんど取り締まりが実施されておらず、15〜29km/hの速度超過の取り締まりがスピード違反全体のおよそ85%を占めます。
このようにスピード違反の取り締まり状況や、それに用いられている方法について知ると出てくるのが「実際のところ交通違反の取り締まりに効果はあるのか?」と言う疑問です。
結論を言うと、速度超過に関しては効果が高いと言えるでしょう。
警視庁の2020年(令和2年)からから2022年(令和4年)までの車両の走行速度と交通事故の関係をまとめた資料によると、スピード違反は交通事故の死亡事故率を高めるとのデータが出ています。
この資料では、速度超過による交通事故は全事故の3.4%にとどまるものの、死亡事故に限って見ると24.7%と、そのおよそ7倍にまで跳ね上がります。
さらに交通事故統計によると、速度超過した車両による交通事故では、速度超過していない交通事故と比べて死亡事故率が9.2倍となるとされているのもポイント。
このように、スピード違反の取り締まりは、死亡につながる事故の抑止に大きく貢献しています。
反則金・罰金などのペナルティを受けるリスクの軽減はもちろんですが、命に関わる重大な事故を未然に防ぐためにも、最高速度・最低速度や法定速度を守るのは非常に重要なのです。
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